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第11章 コリション干潟攻略開始

第61話 討伐依頼を受理して

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 コソンキョーリの森で魔物討伐をしながら練習した結果、無事幾つかの技が使えるようになった。

 流星突メテオ彗星突コメット散弾突きショットガンは発動条件が似ていて、どちらも『高速で突きを連続で行う事』。
 この時狙う具体的な目標を
  ① 1つだけ狙うと彗星突コメット
  ② 複数を狙うと流星突メテオ
  ③ 意識せず更に槍や槍と似た形状の武器を使っていると散弾突きショットガン
となるようだ。

 あとは飛龍落としサム槍投げジャベリンも練習して使えるようになった。
 これも似た技で、『飛んでいる魔物に対して一撃必殺のつもりで最大限の力で放つ』と飛竜落としサム、それ以外で一定以上の速度で投げると槍投げジャベリンとなる。

 飛竜は流石にこの辺を飛んでいない。
 だから代わりに森林蝙蝠フォレストバット大鴉ネバモアで練習したけれど、これだと威力過多で槍がすっぽ抜けて飛んで行ってしまう。

 投槍と言っても結構高いので無くすのは惜しい。
 なので練習する度に飛んで行った槍を探すのが少々面倒くさかったりする。
 それでも練習10回で飛龍落としサム槍投げジャベリンを使えるようになったから、成果としては充分なのだけれど。

 12時ちょうどに帰宅。
 カリーナちゃんはまだ読書中のようだ。
 私はまだそれほどおなかがすいていないし、ここは少し待つとしよう。

 ご飯が待てない欠食児童犬にギロスを2個やった後。
 庭で覚えたての技を練習したり、ラッキー君とボール遊びをしたりしてカリーナちゃんの読書終了まで待つ。

 もうすぐ2時になる頃、カリーナちゃんが読書終了。
 窓から庭に顔を出した。

「ありがとうございます。読み終わりました。これからご飯を食べるますけれど、ミヤさんはもうたべましたか」

「あ、まだ。一緒に食べようか」

 一緒にやや遅めのお昼ご飯を食べる。
 なお先に食べた奴は当然無視だ。
 物欲しそうな目でこっちを見ているが、気にしてはいけない。

「格闘技を幾つか覚える事ができました。それでこの後、旧要塞のスケルトン相手に試して覚えてみたいと思いますけれど、いいでしょうか」

 もちろんだ。
 旧要塞の手前側ならラッキー君も自由行動できるから喜ぶし。

 ◇◇◇

 そんな訳で昼食後は旧要塞へお出かけ。
 最初に出てくるスケルトン相手にカリーナちゃん1人で戦いまくった結果。

「格闘技のうち今まで覚えていなかった投げ技4つ、『四方投げ』、『山嵐』、『入身投げ』が使えるようになりました」

「良かった。カリーナちゃんにもあの本が役に立って」

 これで少しだけだけど恩返しが出来たかな、なんて思う。

「あの本、思った以上に有用で奥深いアイテムでした。
 私でも知らない技が多く載っていて参考になります。それにある程度技を覚えた後にもう一度読めば、また新たな技の使い方が分かるようになる気がします。
 実は今まで、情報はネットで検索すれば十分だと思っていたんです。ですがそうではなかったようです」

 という事はだ。

「つまり私もある程度技を習得した後、もう一度あの本を読めば新しい技を覚えられる可能性があるって事?」

「ええ。INTちりょくだけでなく使用可能な技によっても得られる知識が変わる気がします」

 確かにそうかもしれない。
 分身アバターの武器使用経験で覚える事が違うのは間違いない。
 私が槍技と剣技を覚え、カリーナちゃんが格闘技を覚えたのだから。
 ならば今までの知識や技の習得状況でまた成果が違う可能性があると言うのも充分に頷ける。

「あと明日からコリション干潟に行きませんか? ひととおりの準備は出来たと思いますから」

 確かにそうだ。
 レベル40以上にする為にクエストをこなす。
 そのクエストをこなす為の準備をする。
 それがここ数日の目標と言うか活動目的だったのだから。

「そうだね。ところでクエストの他の準備、例えば野宿用の道具とかは今のままでいいのかな。一応クエストでカレンさんから貰った野宿セットを持っているけれど」

「野宿用品は寝袋とマットがあれば充分です。コリション干潟には休憩小屋が所々にありますから。それにメリティイースの森までだって7km程度ですので、半時間あれば私の家に帰る事だって出来ます。

 あとは錬金術師なので何か必要があって現地で錬金術を使う、あるいは薬を調合する事があるかもしれません。
 だから私は錬金釜を持って行きます。ミヤさんもいざという時用に錬金術ギルドの薬剤業販用大瓶を10本くらい持っていてくれると助かります。

 あとは普通の討伐装備だけ大丈夫です。食事関係はまとめて私が持って行きますから」
 
 つまり私は自分の武器と防具と野宿セット、あとは薬剤業販用大瓶を10本くらい持って行けばいいだけか。

「わかった。なら明日朝出発で行こうか」

「はい」

 カリーナちゃんだけでなく、ラッキー君もわかったかのように頷いた。
 本当にわかっているのかどうかは不明だけれど。

 ◇◇◇

 そして翌日。
 早朝に家を出て、門の外からは走って。
 2時間かからずにコリシアの集落に到着。

 街壁や門はそこそこ大きいけれど、中は畑が多くて建物は少ない。
 建物も居住用らしい小さいものがほとんどで、しかもあちこちに分散している。
 集落っぽいのは北側の門近く、建物十数軒が集まった場所くらい。

 その集落っぽい場所の中心にある冒険者ギルドで『コリション干潟で増加している魔物・魔獣討伐』依頼を受け、そして5分程走って干潟の入口へ。

 目の前に扉付の小さな門があって、左右に木製で高さ2m位の柵が長く伸びている。
 門の隣には小さな看板があった。

『この先コリション干潟。許可証なき者は出入り禁止。魔物出没注意』

「旧要塞の時も思ったけれど、これって親切だよね。場所の名前が書いてあってわかりやすいし、扉を開けるまで安全だし」

「一般の人にとっては弱い魔物でも危険ですから。この程度の柵でもそこそこの魔物なら越える事はありません。魔物除けをまいたりもしていますし」

 なるほど。
 この世界なりに実用的な措置のようだ。

「ガードレールみたいな安全策だと思えばいいのかな」

「そんな感覚だと思います。それでは行きましょう」

 門扉を開け、壁の外へ。
 草地、砂浜、そして海という風景だ。
 ただし青い海、白い砂浜といった綺麗な風景では無い。

 浜は濡れている部分は泥っぽい色。
 海も無茶苦茶浅くてかつ泥っぽい。
 つまりはまあ、一面の泥だ。
 まあ干潟だからこんな感じなのだろうけれど、

 泥の海の先に細く陸地が繋がっているのが見える。
 だからこの干潟、地形的には湾ではなく湖なのかもしれない。
 ただいずれにせよここで戦ったら泥で汚れそうだ。
 私達だけでなく全身毛だらけのラッキー君も。

 そして私の目は泥っぽい中に、幾つかの違和感を発見していた。
 目玉っぽいものが出ていたり、泥のかたまりっぽいけれど動いていたりするといった違いだ。

「結構いるね。スライムと、あとはカメ?」

「ええ。この辺はそこまで怖い魔物はいないので、見つけ次第ガンガン倒して大丈夫です。ラッキーちゃんも今のレベルなら問題ありません」

 いいの? ラッキー君が私とカリーナちゃんの顔をかわるがわる見る。
 今のカリーナちゃんの言葉のニュアンスがわかったのだろう。
 泥だらけになりそうだけれど仕方ない。
 清浄魔法があるから何とかなるだろう。

「いいよ、ラッキー」

 ラッキー君、ダッシュしたかと思えば急停止、そしてぴょんと兎の様に放物線を描いて飛びあがる。
 飛びついた先には茶色のスライム。
 派手に泥水が跳ね上がる。

 ラッキー君がやっている行動そのものは、森でやっているスライム狩りと同じだ。
 スライムの種類は少し違うようだし、いちいち泥が跳ねて汚れるけれど。

 さて、それでは私も経験値稼ぎと行こう。
 アイテムボックスから薙刀っぽい形のグレイブという武器を取り出す。
 ラッキー君と違う方向にある違和感めがけて、高速で突きを連射!

『槍技:彗星突コメット!』

 派手に泥が跳ね上がった後。

『黒色魔カメを倒した。経験値60を獲得。黒色魔カメの死体を入手可能です。収納しますか?』』

 よし、それではラッキー君に負けない様、狩りまくってレベルを上げよう。
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