野猿な悪役令嬢

ルナルオ

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番外編 IF 野猿な囚人 29-2.(セリウス外ルート)黒幕の正体

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 ルクレナとルイスは、ゾンビのごとく襲ってくる街の住民達を何とかお互いの怪我も少なくおさえ、住民達がおかしくなった原因と思われる鐘の音をやっと止めた。

「……ようやく、住民達の動きも止まったな」
「あの感じだと、私らを襲ったことなんか、覚えてなさそうだね~。
 あいつら、きょろきょろして、状況把握できてなさそうだ」
「やっぱり、この鐘の音で、操っていたんだな。 
 こんな大勢に、一気に精神へ働きかけられるって、とんだ脅威だな……」
「どんな技術を使ったかは、後で調査だな。
 でも、この鐘の音だけじゃなさそうだぞ?
 あとで、バーナルに分析させるつもりだが、この規模なら薬も使っていそうだ。
 だから、操られた住民とそうでない住民に分けられたんだろう」
「そうか。それなら、この街の井戸や流通した食べ物を調べるように報告しておこう。
 今はまず、リア達と合流しないとな」
「そうだな。まあ、バーナルがいるし、無事だと思うんだが……」

 すぐに、緊急時にリーリア達と落ち合う約束をしていた街の外れへ、ルクレナ達は向かった。
 けれども、そこには、リーリアは見当たらず、怒りに震えるバーナルと、バーナルに殴られたのか、地面でのびている青年がいた。

「おい、バーナル?野猿は?」
「……ルクレナ、ごめん。
 あたし、あの子を守り切れなかった……」
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「待て、ルイス、慌てるな。まずは状況を確認するぞ」
「リアは、奴らに連れていかれたんだろう?無傷か?」
「ええ、そうよ、ルイス。
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 たぶん、無傷だと思う」
「……そうか。お前を眠らせられる程の敵だったのか?」
「野猿は、奴らの本拠地に連れて行かれたんだろう。
 おい、お前を出し抜くなんて、相手も相当だな。
 野猿が何かやらかしたからか?
 それとも、手練れの相手だったのか?」

 そう言いながら、ふと、バーナルにぶっ飛ばされてのびた青年、フェスに気づくルクレナとルイス。

「うおっ!!ちょっと、待て、バーナル!
 そこで、のびている奴って、まさか!?」
「……こいつ、『肉捌き狩人』じゃないか!
 何で奴がこんなところにいる!?」
「野猿ちゃんが捕まっちゃったのは、この子のせいよ~!んもう!!」とバーナルは怒って、のびているフェスをさらにゲシッと蹴る。

「ああ、そういえばこいつ、お前の元相棒か……」と苦い顔でフェスを見るルイス。
「……お前らって、『獲物を狩って肉を捌いては料理する、最強暗殺グルメコンビ』とか言われていたな。
 そんな元相棒なんで、油断したな、バーナル?」ときつい視線を向けるルクレナ。
「そうよ!一瞬の油断をつかれたわ。
 こいつってば、この私でも効く薬を用意していやがったのよ、きぃー!
 あ、でも大丈夫よ、ルクレナ。
 こいつ、野猿ちゃんの居所を知っているって。
 居所を教えるし、救出の手助けもするから、仲間にしろって言われたんだけど、どうする?」
「どうするってなあ……。
 まあ、こいつを仲間にするかはともかく、野猿の連れて行かれた先を吐かせるぞ」

 とりあえず、リーリアの居所がわかり、すぐに追えそうなので、ちょっと安心するルイスであった。
 のびたフェスを叩き起こし、ルクレナ達はリーリアの救出に向かった。

 一方、手練れの暗殺者フェスに眠らされたリーリアは、リアレース教会の馬車に乗せられて、数時間はかかるリアレース教会の本拠地でもある街に着いた。
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「お!『魔女』様がお気づきになったみたいだ。
 お前、教祖様にすぐに知らせろ!」
「はい!」

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「あら、そうなの?
 言っておくけど、とぼけても無駄よ?」と鼻で笑う。
「いえ、そもそも『魔女』なんて存在はいないですよ。
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「ふーん、あっそう。
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 それでも?」
「へ?えーと?あ、あれは、その……。
 と、とにかく、そんな『魔女』なんかじゃありませんよ!」
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 その態度に、(あ、バーナル達の言ってた通り、この人、大人しく言うことをきかないと、私に強制的に何かさせる気だ……)とわかり、リーリアが仕出かしたことのせいではあるが、悪者に利用されそうな自分が嫌になってくる。
 あと、彼女の言う「大切な人」とは誰のことを指しているのかがわからない。
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「……あなたこそ、何者なのですか?
 セリクルド王国の王族の方のようですが、なぜこのランダード王国に?」
「ふふん、何者だと思う?」

 やっぱり、答える気ないのか……。
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 とりあえず、本物の隣国王族っぽい悪者だったと、ルクレナ様に報告しよう!

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 今回は、幸いにして、魔力封じの腕輪などがされていなかったので、リーリアにとっては楽勝であった。

「……」無言で、拘束具に集中するリーリアに、苛立つトップ。
「……ちょっと!無視するとは、いい度胸ね?」
「(ええ~。面倒くさいな、この人)いえ、えっと、何者かわからなくて……」
「ふん!いいわ、教えてあげる。
 私はね、セリクルド王国の元王女よ。現セリクルド国王の妹にあたるわ。
 恋愛小説の題材にもされた、ランダード王国の騎士と駆け落ちしたセリクルド王国の王女の噂を聞いたことがない?
 そう、私こそ、その王女であるユリアリーシア・セリクルドよ!」

 なかなか答えないリーリアにしびれを切らし、自らを誇らしげに名乗る「リアレース教会」のトップ。
 その正体は、どうやら、事故で亡くなったとされたセリクルド王国の元王女で、あの義妹アリーシアの母親であった。

 へ?確かその元王女って、元騎士の方と一緒に亡くなったんじゃなかったのかな?
 だから、その微妙な血筋のアリーシアは、孤児になっても難しい立場だからとメナード公爵家に引き取られたのに……。
 でも、本当は生きていたの?
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 実はゾンビなの?

 名乗られても、むしろ困惑するばかりのリーリアであった。
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