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番外編 IF 野猿な囚人 14.お見舞い
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アリーシアを捕縛後、やっと静かになった離宮で、王妃レイスリーアとルシェールは、離宮にきた本来の目的、セリウスのお見舞いをすることにした。
「遅くなってしまったけど、セリウスのお見舞いに行きしましょう」と先程までの凍えるような雰囲気はなくなり、春の気候のような暖かで優しい雰囲気になるレイスリーア。
「そうでした!一刻でも長く、今のセリウスの側にいてあげないと!!」とルシェールは、レイスリーアよりも先にセリウスの部屋に向かって走っていった。
セリウスのいる離宮での部屋は、セキュリティーが厳しいが、もちろんルシェールなどはすんなり通してもらえる。
「セーリーウース!
寂しかったかーい?
今日も兄様が来たよー!!」とルシェールは部屋に入るやいなや、セリウスの寝ているベッドまで駆けていき、満面の笑みでセリウスの額や頬などにちゅっちゅっちゅーと挨拶のキスをしようとする。
「うわっ!ちょっと、兄上、やめて!!」と懸命に動かせる腕で防御するが、なかなかルシェールのキス攻撃は全てを防げないセリウス。
「わあ!今日は顔色も良くなってきたね。
本当に良かった~。
ご飯は食べれている?
今日も兄様が食べさせてあげるよー!」とハイテンションのルシェール。
先程まで、アリーシア達と真剣に対峙していたとは思えないくらいの変貌ぶりであった。
「結構です!!
この拘束具を外していただければ、すぐにでも自分で食べれますから!
僕はもう正気ですので、今日こそは、もう外してください!」とセリウスは、必死で訴える。
セリウスはアリーシアに操られるていたため、魔力を封じる腕輪をつけさせられて、リハビリや入浴・トイレ等の時間以外は、両手の拘束がされており、また、ベッドから1人で出られないように、ベッドの周辺にセリウスだけが出られない結界が張られている。
「駄目だよ~。
体がまだ本調子じゃないからね。
あと、正気かどうかの判断もまだ確認できていないしね。
でも、これならあともう少しだよ。
それまで我慢、我慢!」と朗らかに答えるルシェールは、セリウスの様子が本当に良くなっているので、ひと安心をしていた。
「兄上!
僕はこんなところにいる場合ではないのです!!
リーリアが!!
リーリアが、僕のせいで、あの監獄といえる修道院で苦しんでいるのです。
一刻も早く、助けに行かないと!!
ああ、リーリア!」と後半は悲痛な叫びのように訴えるセリウスであった。
そんな悲痛な様子のセリウスに対しても、ルシェールには子猫が不満でニャーニャー言ってるくらいにしか思えず、「まあ、まあ、セリウス落ち着いて~」とにこにこしている。
「セリウスが行かなくても、野猿ならあそこでも元気にやっているって!
一回、野猿を見に行った時なんか、そりゃあもう、さらに野生化してピンシャンしていたよ。
だから、そんなに心配しなくても大丈夫!
あの野猿のしぶとさをよく知っているでしょう?
それに、マルセルが今、野猿を迎えに向かっているから、セリウスはそれよりも体を治すことに専念しなさい。
ああ、あと今日は母上も来るよ~」と楽し気に言ってくるルシェールに、苛立つセリウスであったが、「え?母上がいらっしゃるのですか?」とちょと驚く。
「そうだよ!
さっきまで母上と話していたんだ。
お忙しい中、わざわざ時間を作ってくれたのだよ」
「……そうですか」とセリウスは、ルシェールに言っても無駄だが、王妃ならこの拘束を外して、リーリアのところに向かうことを聞き入れてくれるかも知れないと希望を持った。
そこへ、丁度、王妃レイスリーアが入室してきた。
「ごきげんよう、セリウス。
具合はいかがかしら?」と王妃が優雅に微笑みながら、セリウスのベッドに近づいてきた。
「母上!
お忙しい中、よくお越しいただきました」
「まあ、顔色は随分、良くなったわね。
体力もかなり戻ってきていると報告を受けているわ。
なかなかお見舞いに来れなくて、ごめんなさいね」
「いえ、お見舞い、ありがとうございます」
「そうそう、忙しい父上や母上は、なかなかお見舞いに来れないからね~。
代わりに私がよく、来てるけどね!」と笑顔で会話に混ざるルシェール。
「母上、ご覧のように、私はもう大丈夫です。
だから、この拘束具はもう不要です。
外してください。
どうかお願いいたします」とここでも必死に訴えるセリウス。
「まあ、セリウス、落ち着いて。
その拘束具を外しても、あなたは大人しくここで寝ていてくれる?」と優しく尋ねる王妃。
「それはその……。
できましたら、マルセルを追いかけて、リーリアの元に行く許可もいただきたいです」
「それはまだ駄目よ、セリウス。
それに、今、あなたが動くとトラブルになる可能性があるからね。
もうしばらく、ここで大人しくしていてね」とセリウスに言い聞かせる。
「母上!お願いですから、一刻も早くリーリアの元に行かせてください!!」
「まだ駄目なのよ。
あなたが暴走するといけないから、拘束具もしばらくこのままよ」
「しかし、母上!」
「……セリウス。
あなた、操られていたとはいえ、自分がやったことがわかっている?」と先ほどまでの優し気な口調からやや厳し目なものに変わる。
「くっ、はい。
わかっております……。
僕は明らかな失態を犯しました。
もちろん学院での騒動なども心配ですし、公務の仕事にまで穴を開けて、本当に申し訳なかったです。
でも、一番の失態は、愛するリーリアのことです。
どうか、リーリアのところに行かせてください。
リーリアをすぐにでも助け出さないと!」
「今のところ、リーリアなら大丈夫よ。
あの修道院に私の手の者が、別件で内部潜入していて、リーリアの面倒もみてくれるようにお願いしておいたから、あなたが心配することはないわ」
「ですが、それでもまだ危険です!
僕の力はもう戻っているので、リーリアを守りに行かせてください!!」
「正気のあなたなら、すぐにでもリーリアの元に行きたいでしょうね……。
あなたがまさかリーリアを、よりにもよってあの修道院に送るとは思わなかったから、こちらもリーリアのフォローが遅れてしまい、確かにしばらくはリーリアにも辛い思いをさせてしまったしね。
でも、今は、リーリアの護衛と監視も密かにしているから大丈夫よ。
あと、この機会にリーリアの命を狙ったり、逆にリーリアを取り込もうとしたりする勢力にもきっちり対応しているから、今のところは、彼女の安全を保障するわよ。
まあ、リーリアの場合、食事のフォローも大事だったから、いっぱい差し入れをして、修道院長にも食事の改善をすべく既に話を通しておいたわ。
リーリアはあなたの婚約者である以上に、魔力も才能もあって、我が国にとって重要かつ危険人物でもあるのよ。
あなたも、あの子が、幼い頃から国家レベルで管理をされている1人なのは、よく知っているはずよね。
それとも、恋に目が眩んで忘れてしまったかしら?」
「国レベルでのリーリアの重要性は、よくわかっています。
でも、僕にとっては、それ以上に、誰よりも愛しているのです!だから……」
「自分を監獄に送った元婚約者に、今さら愛を訴えられても、その愛をすぐに受け入れるのは、リーリアでなくても難しいと思うわ」
「そんな!」
「だから、焦っては駄目よ、セリウス。
もうリーリアとは前のような関係には簡単に戻れないと思いなさい。
その上で、再びリーリアの伴侶または管理者になるにはどうすればいいか、ここでよく対策を練ってみることよ」と王妃にさとされるが、それでも受け入れられないセレウス。
「で、では、リーリアの無事な姿だけでも見たいです。
拘束されたままでもいいから、一目で良いから会いたい」と切なる訴えをするセリウスに王妃やルシェールはため息をついた。
「セリウス……。
気持ちはわかるけど、今はそれができる状況じゃないの。
勝手な行動は慎んで、ここで、よく考えなさい。
いいわね?」
「……はい、わかりました」と項垂れるセリウス。
王妃もルシェールも帰った後。
セリウスはベッドの上で、じっと自分の魔力を封じる腕輪や拘束具を見つめていた。
自分の魔力や体力は、ほぼ回復している。
この腕輪や拘束具を破壊して、結界を破り、ここから脱出することも、何とかできると思われる。
いや、リーリアのためなら、この離宮ごと破壊できる自信がある。
そして、いくら考えても、マルセルがリーリアを迎えに行ってからリーリアに会うのでは、遅すぎると思われた。それはセリウスの心情だけではなく、リーリアの心情や状況を含めても。
そう、セリウスは、このまま言う通りに大人しくしていたら、リーリアに二度と会えなくなるような嫌な予感がしてしょうがなかった。
セリウスは、例え王家や貴族に阻まれても、リーリアと二度と会えなくなることは、今の自分には耐えがたいことなので、どうするべきか悩み、いまだに治らない胸の痛みで呻くのであった。
「遅くなってしまったけど、セリウスのお見舞いに行きしましょう」と先程までの凍えるような雰囲気はなくなり、春の気候のような暖かで優しい雰囲気になるレイスリーア。
「そうでした!一刻でも長く、今のセリウスの側にいてあげないと!!」とルシェールは、レイスリーアよりも先にセリウスの部屋に向かって走っていった。
セリウスのいる離宮での部屋は、セキュリティーが厳しいが、もちろんルシェールなどはすんなり通してもらえる。
「セーリーウース!
寂しかったかーい?
今日も兄様が来たよー!!」とルシェールは部屋に入るやいなや、セリウスの寝ているベッドまで駆けていき、満面の笑みでセリウスの額や頬などにちゅっちゅっちゅーと挨拶のキスをしようとする。
「うわっ!ちょっと、兄上、やめて!!」と懸命に動かせる腕で防御するが、なかなかルシェールのキス攻撃は全てを防げないセリウス。
「わあ!今日は顔色も良くなってきたね。
本当に良かった~。
ご飯は食べれている?
今日も兄様が食べさせてあげるよー!」とハイテンションのルシェール。
先程まで、アリーシア達と真剣に対峙していたとは思えないくらいの変貌ぶりであった。
「結構です!!
この拘束具を外していただければ、すぐにでも自分で食べれますから!
僕はもう正気ですので、今日こそは、もう外してください!」とセリウスは、必死で訴える。
セリウスはアリーシアに操られるていたため、魔力を封じる腕輪をつけさせられて、リハビリや入浴・トイレ等の時間以外は、両手の拘束がされており、また、ベッドから1人で出られないように、ベッドの周辺にセリウスだけが出られない結界が張られている。
「駄目だよ~。
体がまだ本調子じゃないからね。
あと、正気かどうかの判断もまだ確認できていないしね。
でも、これならあともう少しだよ。
それまで我慢、我慢!」と朗らかに答えるルシェールは、セリウスの様子が本当に良くなっているので、ひと安心をしていた。
「兄上!
僕はこんなところにいる場合ではないのです!!
リーリアが!!
リーリアが、僕のせいで、あの監獄といえる修道院で苦しんでいるのです。
一刻も早く、助けに行かないと!!
ああ、リーリア!」と後半は悲痛な叫びのように訴えるセリウスであった。
そんな悲痛な様子のセリウスに対しても、ルシェールには子猫が不満でニャーニャー言ってるくらいにしか思えず、「まあ、まあ、セリウス落ち着いて~」とにこにこしている。
「セリウスが行かなくても、野猿ならあそこでも元気にやっているって!
一回、野猿を見に行った時なんか、そりゃあもう、さらに野生化してピンシャンしていたよ。
だから、そんなに心配しなくても大丈夫!
あの野猿のしぶとさをよく知っているでしょう?
それに、マルセルが今、野猿を迎えに向かっているから、セリウスはそれよりも体を治すことに専念しなさい。
ああ、あと今日は母上も来るよ~」と楽し気に言ってくるルシェールに、苛立つセリウスであったが、「え?母上がいらっしゃるのですか?」とちょと驚く。
「そうだよ!
さっきまで母上と話していたんだ。
お忙しい中、わざわざ時間を作ってくれたのだよ」
「……そうですか」とセリウスは、ルシェールに言っても無駄だが、王妃ならこの拘束を外して、リーリアのところに向かうことを聞き入れてくれるかも知れないと希望を持った。
そこへ、丁度、王妃レイスリーアが入室してきた。
「ごきげんよう、セリウス。
具合はいかがかしら?」と王妃が優雅に微笑みながら、セリウスのベッドに近づいてきた。
「母上!
お忙しい中、よくお越しいただきました」
「まあ、顔色は随分、良くなったわね。
体力もかなり戻ってきていると報告を受けているわ。
なかなかお見舞いに来れなくて、ごめんなさいね」
「いえ、お見舞い、ありがとうございます」
「そうそう、忙しい父上や母上は、なかなかお見舞いに来れないからね~。
代わりに私がよく、来てるけどね!」と笑顔で会話に混ざるルシェール。
「母上、ご覧のように、私はもう大丈夫です。
だから、この拘束具はもう不要です。
外してください。
どうかお願いいたします」とここでも必死に訴えるセリウス。
「まあ、セリウス、落ち着いて。
その拘束具を外しても、あなたは大人しくここで寝ていてくれる?」と優しく尋ねる王妃。
「それはその……。
できましたら、マルセルを追いかけて、リーリアの元に行く許可もいただきたいです」
「それはまだ駄目よ、セリウス。
それに、今、あなたが動くとトラブルになる可能性があるからね。
もうしばらく、ここで大人しくしていてね」とセリウスに言い聞かせる。
「母上!お願いですから、一刻も早くリーリアの元に行かせてください!!」
「まだ駄目なのよ。
あなたが暴走するといけないから、拘束具もしばらくこのままよ」
「しかし、母上!」
「……セリウス。
あなた、操られていたとはいえ、自分がやったことがわかっている?」と先ほどまでの優し気な口調からやや厳し目なものに変わる。
「くっ、はい。
わかっております……。
僕は明らかな失態を犯しました。
もちろん学院での騒動なども心配ですし、公務の仕事にまで穴を開けて、本当に申し訳なかったです。
でも、一番の失態は、愛するリーリアのことです。
どうか、リーリアのところに行かせてください。
リーリアをすぐにでも助け出さないと!」
「今のところ、リーリアなら大丈夫よ。
あの修道院に私の手の者が、別件で内部潜入していて、リーリアの面倒もみてくれるようにお願いしておいたから、あなたが心配することはないわ」
「ですが、それでもまだ危険です!
僕の力はもう戻っているので、リーリアを守りに行かせてください!!」
「正気のあなたなら、すぐにでもリーリアの元に行きたいでしょうね……。
あなたがまさかリーリアを、よりにもよってあの修道院に送るとは思わなかったから、こちらもリーリアのフォローが遅れてしまい、確かにしばらくはリーリアにも辛い思いをさせてしまったしね。
でも、今は、リーリアの護衛と監視も密かにしているから大丈夫よ。
あと、この機会にリーリアの命を狙ったり、逆にリーリアを取り込もうとしたりする勢力にもきっちり対応しているから、今のところは、彼女の安全を保障するわよ。
まあ、リーリアの場合、食事のフォローも大事だったから、いっぱい差し入れをして、修道院長にも食事の改善をすべく既に話を通しておいたわ。
リーリアはあなたの婚約者である以上に、魔力も才能もあって、我が国にとって重要かつ危険人物でもあるのよ。
あなたも、あの子が、幼い頃から国家レベルで管理をされている1人なのは、よく知っているはずよね。
それとも、恋に目が眩んで忘れてしまったかしら?」
「国レベルでのリーリアの重要性は、よくわかっています。
でも、僕にとっては、それ以上に、誰よりも愛しているのです!だから……」
「自分を監獄に送った元婚約者に、今さら愛を訴えられても、その愛をすぐに受け入れるのは、リーリアでなくても難しいと思うわ」
「そんな!」
「だから、焦っては駄目よ、セリウス。
もうリーリアとは前のような関係には簡単に戻れないと思いなさい。
その上で、再びリーリアの伴侶または管理者になるにはどうすればいいか、ここでよく対策を練ってみることよ」と王妃にさとされるが、それでも受け入れられないセレウス。
「で、では、リーリアの無事な姿だけでも見たいです。
拘束されたままでもいいから、一目で良いから会いたい」と切なる訴えをするセリウスに王妃やルシェールはため息をついた。
「セリウス……。
気持ちはわかるけど、今はそれができる状況じゃないの。
勝手な行動は慎んで、ここで、よく考えなさい。
いいわね?」
「……はい、わかりました」と項垂れるセリウス。
王妃もルシェールも帰った後。
セリウスはベッドの上で、じっと自分の魔力を封じる腕輪や拘束具を見つめていた。
自分の魔力や体力は、ほぼ回復している。
この腕輪や拘束具を破壊して、結界を破り、ここから脱出することも、何とかできると思われる。
いや、リーリアのためなら、この離宮ごと破壊できる自信がある。
そして、いくら考えても、マルセルがリーリアを迎えに行ってからリーリアに会うのでは、遅すぎると思われた。それはセリウスの心情だけではなく、リーリアの心情や状況を含めても。
そう、セリウスは、このまま言う通りに大人しくしていたら、リーリアに二度と会えなくなるような嫌な予感がしてしょうがなかった。
セリウスは、例え王家や貴族に阻まれても、リーリアと二度と会えなくなることは、今の自分には耐えがたいことなので、どうするべきか悩み、いまだに治らない胸の痛みで呻くのであった。
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