蒸しエビ子の親友

蒸しエビ子

文字の大きさ
上 下
1 / 12

蒸しエビ子の親友

しおりを挟む
2021年夏、彼女は頭を抱え込んでしまった。
体調不良で出勤できない日が続き、
休みをいただいてしまう申し訳無さに
潰れそうに苦しそうに縮こまっていた。



2021年真夏、彼女はSNSで初めてSOSの声を上げた。
目は開いたままなのに、涙がとめどなく頬をつたい
“還りたい”気持ちでいっぱいになっていた。



2021年晩夏、彼女は脳みそが千切れそうな思いで
退職を決意した。あたたかな職場の皆さんと別れ、
あらたな生活がスタートした。



2021年秋、有給休暇を消化し無職になり
彼女の収入は途絶えた。
国民年金は、健康保険は、月々の出費は
どうしたらよいのか。途方に暮れてばかりいた。



2021年晩秋、猛烈な不安感が彼女を襲っていた。
日々の生活が次第にままならなくなっていった。



2021年冬、彼女は虫の息のごと消えそうになっていた。
睡眠欲以外の欲という欲が霧散したようであった。
食べられない眠れない動けない、
起きていられない涙が止まらない
笑えない声が出せない自責がやまない。



2022年1月、彼女は家族に頼り神経科内科へ駆け込み
問診を経て薬を処方された。指示通りに服用を始める。



2022年2月、3度の処方変更により
彼女の体調はゆるりみぎかたあがり。
散歩や近所への買い出しにも行けるようになった。
ご飯の美味しさ、眠れる幸せ、草花や空の美しさ。
今まで心に留める余裕のなかった域まで
様々な感覚を得られるようになった。



2022年3月、彼女は睡眠薬なしでも眠れる日がぐっと増えた。
先月からの散歩も続けられている。
主に自分と家族、大切な人のために時間を使うと満たされていった。



2022年4月、彼女は久しぶりに帰省できるまで持ち直してきた。
手元に1ヶ月近くの量を残し、晴れて睡眠薬の処方がなくなった。
そして一番大切なこと、
色々なことがあるけれどこの世界は愛だと気付いた。



2022年5月現在、
彼女はワクワクすることにたくさんたくさん挑戦している。


例えば、収入になればと思って始めたSUZURIショップは
今や彼女の絶好の遊び場と化している。と同時に、
訪れて下さった方が癒やしや楽しみを感じられる
“くつろぎの場”としても一人でも多くの方に
思っていただければ幸い、それが願いなのだそうだ。
ふらりと出入り自由な、くつろぎ空間を目指しているとのこと。


システムメンテナンス時以外は24時間年中無休でOPENしている。
運営方針が気ままに楽しむという大抵無人のショップだが、
来店や感想などを教えていただけるとめちゃくちゃ喜ぶそう。


ショップの名前は『ゆるりギャラリー』である。
ここでしか公開されない写真や、イラストも
ぜひあなたに触れてほしいと待っているそうだ。




私の親友はここまで至るまでに、沢山の。
本当に沢山の方々に助けられ、救っていただいてきた。
波がありながらも少しずつ、少しずつ前を向いて歩み始めた今。
これからも、私だからできることを
目の前のおひとりおひとりへ届けていきたいそうだ。
もちろん、筆者の私も である。




あとがき

遡ると十年前くらいから現在へ繫がる発端が
あったそうだから、九年分は割愛することにした。

ここまでご覧下さった貴方に心からの感謝を申し上げます。

ありがとうございました。
これからも親友共々、宜しくお願い致しますm(_ _)m

敬具
しおりを挟む
感想 2

あなたにおすすめの小説

蒸しエビ子
エッセイ・ノンフィクション
愛について

子宮頸がんになりまして

☆よこやん☆
エッセイ・ノンフィクション
がんが見つかったのは30歳。さあこれから結婚、出産を本格的に考え始めた矢先の出来事でした。 今若い世代から増えている子宮頸がん。 当時の闘病、心情などを描いていきます。

勇気を出すところ

蒸しエビ子
エッセイ・ノンフィクション
勇気を出して言葉にすることで 乗り越えていきたい自分のこと。

怪獣ディメチに喰われていくママさん

雪乃
エッセイ・ノンフィクション
これは私の母と私達家族に現実に起こっている日常。 『まさか私達の母親が認知症になるなんて!?』 受け入れられない想いと受け入れるしかない現実。 准看護師として多くの認知症の患者さんを看てきたというのに、自身の親となれば全く以って情けなく素直に受け入れられないもの。 また実際認知症に喰われていく母自身の葛藤。 不定期ですがそんな気持ちを綴っていきます。 短い文章ですが、その中に私達の色々な気持を織り込んでいきます。 突っ込みあり、笑いそして悔しさと悲しみ、病に喰われていく母への怒りにも似た葛藤と偶のデトックス閑話。 そしてこのお話の終わりは……考えたくないですね。

Breathe 〜僕の生きてきた時間〜

いろすどりあ
エッセイ・ノンフィクション
この物語は事実に基づいたフィクションです。 『僕』はごく平凡な家庭に生まれ、ごく普通の生活を送ってきた。…あの時までは。 幸せな日々を送ることができますように…

天空からのメッセージ vol.88 ~魂の旅路~

天空の愛
エッセイ・ノンフィクション
そのために、シナリオを描き そのために、親を選び そのために、命をいただき そのために、助けられて そのために、生かされ そのために、すべてに感謝し そのためを、全うする そのためは、すべて内側にある

サンタクロースが寝ている間にやってくる、本当の理由

フルーツパフェ
大衆娯楽
 クリスマスイブの聖夜、子供達が寝静まった頃。  トナカイに牽かせたそりと共に、サンタクロースは町中の子供達の家を訪れる。  いかなる家庭の子供も平等に、そしてプレゼントを無償で渡すこの老人はしかしなぜ、子供達が寝静まった頃に現れるのだろうか。  考えてみれば、サンタクロースが何者かを説明できる大人はどれだけいるだろう。  赤い服に白髭、トナカイのそり――知っていることと言えば、せいぜいその程度の外見的特徴だろう。  言い換えればそれに当てはまる存在は全て、サンタクロースということになる。  たとえ、その心の奥底に邪心を孕んでいたとしても。

夜更けの世迷い言

波月玲音
エッセイ・ノンフィクション
日常生活で折々に思うことなどを、忘れないように言葉にしてみようと思って始めました。 思いついた時に不定期更新です。 お暇な時にでものぞいてみて下さい。

処理中です...