4 / 4
なりたい自分が自分 スピンオフ
しおりを挟む
こんにちは。
私、株式会社トンネルの
吉井拓実と申します。
この度は弊社のサービスに
ご興味お持ちいただきまして、
誠にありがとうございます。
。。。。。
堅苦しい挨拶はこれまで。
ここからは、
僕の体験談を綴って
いこうと思います。
そう、誰にも話すことの
無かったあの日の出来事を。
自分が大嫌いだった。
ゴミくずだと本気で思ってた。
今年で32歳になる僕は
ほんの2年前まで別人の様な
心持ちで生きてきた。
いや、死んでたんだな。
後天的性格を形成した家庭環境は
常軌を逸していた。
今なら分かる。
忘れもしない2年前の8月。
橋の欄干に脚を掛ける僕。
(もう何もかも、終わりにしてやる)
次の瞬間、
身体を丸ごと後ろに持って
いかれるまま意識を失った。
意識が戻ると声が響いている。
ふぉぉ ふぉっふぉっふぉっ
得体が知れない。
気味が悪い。
どうやら僕はベッドに
寝かせられているようで
開きかけの目を閉じたが、
足音で声の主が近付いて
くるのだと嫌でも分かる。
ドクンドクン
激しくなる鼓動を
必死に抑えていると、
「チミだね、ワイを呼んだのは!」
妙に高い声が鼓膜を震わせる。
(ここは…一旦無視しよう)
「。。。」
「あの橋に来ることは分かってたんだ!」
「チミが呼んだんだからね!!」
「えっ、僕が?!!それって一体どういう…」
(しまった)
反射的に答えてしまう。
「チミがワイの脳に飛び込んできたんじゃ!」
「はぁ。」
独特な高音ボイスの主はお構い無しに続け、
呆気にとられる僕。
その後も色々説明してくる主だったが
突拍子も無い話で面食らってしまう。
「えと、ひとまず整理すると。
あなたは助けを求める人の声が聴こえて
その場所やなりたい姿でさえも分かって
しまう超能力をお持ちだと。そして、
なりたい姿を透視して現実化させる技術を
編み出したから僕に実験台第一号になってほしい。
そういうことですね?」
自分でも何を言っているかおかしくなりそうだったが、
確かめずには居られない気持ちに駆られた。
「ピンポ~ン、そゆこと~!」
「よし、じゃあとりあえず起きよっか!吉井拓実くん!」
主があっけらかんと答える。
(あれ今、僕の名前をフルネームで…
「ちょっとあそこ入ってみてよぉ!」
主が楽しそうに言う。
「ん、ちょっとだけなら。。」
どうせ捨てようとした命だ。
「わ~ありがと!!そうと決まったら
♪」
ファサッ
眼前が黒くなる。
主は慣れた手付きで
僕の目をあっという間に覆ったのだ。
「うん、それじゃレッツゴー!!!」
「え、ちょ!!!」
急に身体が浮いたもんだから慌てる。
主が僕を抱えて走っているようだ。
凄い振動に酔いそうになると
フワッ
身体と眼が解放され、
眩いばかりの光に包まれる。
「ジャジャーン!どうどう?」
「いやあのですね、どうと言われても
光が賑やかなただのトンネルですけど。。」
ふぉぉ ふぉっふぉっふぉっ
「そこには拘った!」
「はぁ。」
返事をする気力を失いそうになる。
「じゃ早速入ってみてちょ!」
ぐいぐいと身体を押され、
あっという間にトンネルの入口に立つ。
「いってらっしゃ~い!!」
ドンッ
「ああっ」
中に押し込まれると
先程とは真逆の暗い空間が
僕を包み込む。
「壁、壁はどこだ。」
暗順応が起こるまでは壁を
伝って進もうと思ったのだ。
(何時になったら見えるようになるんだ?)
壁に触れながら歩を進めるも
眼が慣れることはないまま
トンネルを潜り抜けたようだ。
「おっかえり~!実験は大成功♪」
主はご機嫌だ。
「何も見えなかったですけど。」
「ワイ、大発明しちゃった!!」
主によると、このトンネルを潜った人の
なりたい姿を透視して現実化する技術は
完璧に実現されたというのだ。
(まじかよ)
「それ、これからどうするんですか?」
「もっちろんサービスとして提供しちゃうよ~ん!」
主に迷いはない。
「チミには社員になってもらうからねぇ夜露死苦♪」
「へっ?!てか何でヤンキーぽくなってるんですか。」
「キブンキブン♪じゃ、決まりね夜露死苦!」
あれよあれよと言う間に僕は
株式会社トンネルの社員になってしまった。
その後、なりたい姿を現実化させた姿との
対面を果たした僕はここで働くと心を決めた。
小学校の授業で書いた、将来の夢。
家に持ち帰ってちゃんとしまわなかったのが後の僕に
大きな禍根を残すことになるとは思いも掛けなかった。
「なぁに?これ。馬鹿じゃないの呆れた!(笑)」
机の上に置いておいた『将来の夢』は
母親の手によってビリビリに破かれた。
僕の夢なんて…
その日以来、夢なんて言葉自体忘れてた。
闇に葬ったのだなぁ。
その夢が。
なりたい姿が僕の前に現れたのだ。
主はとんでもなく凄いものを発明してくれた。
そして、紛れもなく 人 を救ってくれた。
こんな僕でも誰か、
心の底では助けを求めている誰かを救いたい。
僕はその日を境に生まれ変わった。
私、株式会社トンネルの
吉井拓実と申します。
この度は弊社のサービスに
ご興味お持ちいただきまして、
誠にありがとうございます。
。。。。。
堅苦しい挨拶はこれまで。
ここからは、
僕の体験談を綴って
いこうと思います。
そう、誰にも話すことの
無かったあの日の出来事を。
自分が大嫌いだった。
ゴミくずだと本気で思ってた。
今年で32歳になる僕は
ほんの2年前まで別人の様な
心持ちで生きてきた。
いや、死んでたんだな。
後天的性格を形成した家庭環境は
常軌を逸していた。
今なら分かる。
忘れもしない2年前の8月。
橋の欄干に脚を掛ける僕。
(もう何もかも、終わりにしてやる)
次の瞬間、
身体を丸ごと後ろに持って
いかれるまま意識を失った。
意識が戻ると声が響いている。
ふぉぉ ふぉっふぉっふぉっ
得体が知れない。
気味が悪い。
どうやら僕はベッドに
寝かせられているようで
開きかけの目を閉じたが、
足音で声の主が近付いて
くるのだと嫌でも分かる。
ドクンドクン
激しくなる鼓動を
必死に抑えていると、
「チミだね、ワイを呼んだのは!」
妙に高い声が鼓膜を震わせる。
(ここは…一旦無視しよう)
「。。。」
「あの橋に来ることは分かってたんだ!」
「チミが呼んだんだからね!!」
「えっ、僕が?!!それって一体どういう…」
(しまった)
反射的に答えてしまう。
「チミがワイの脳に飛び込んできたんじゃ!」
「はぁ。」
独特な高音ボイスの主はお構い無しに続け、
呆気にとられる僕。
その後も色々説明してくる主だったが
突拍子も無い話で面食らってしまう。
「えと、ひとまず整理すると。
あなたは助けを求める人の声が聴こえて
その場所やなりたい姿でさえも分かって
しまう超能力をお持ちだと。そして、
なりたい姿を透視して現実化させる技術を
編み出したから僕に実験台第一号になってほしい。
そういうことですね?」
自分でも何を言っているかおかしくなりそうだったが、
確かめずには居られない気持ちに駆られた。
「ピンポ~ン、そゆこと~!」
「よし、じゃあとりあえず起きよっか!吉井拓実くん!」
主があっけらかんと答える。
(あれ今、僕の名前をフルネームで…
「ちょっとあそこ入ってみてよぉ!」
主が楽しそうに言う。
「ん、ちょっとだけなら。。」
どうせ捨てようとした命だ。
「わ~ありがと!!そうと決まったら
♪」
ファサッ
眼前が黒くなる。
主は慣れた手付きで
僕の目をあっという間に覆ったのだ。
「うん、それじゃレッツゴー!!!」
「え、ちょ!!!」
急に身体が浮いたもんだから慌てる。
主が僕を抱えて走っているようだ。
凄い振動に酔いそうになると
フワッ
身体と眼が解放され、
眩いばかりの光に包まれる。
「ジャジャーン!どうどう?」
「いやあのですね、どうと言われても
光が賑やかなただのトンネルですけど。。」
ふぉぉ ふぉっふぉっふぉっ
「そこには拘った!」
「はぁ。」
返事をする気力を失いそうになる。
「じゃ早速入ってみてちょ!」
ぐいぐいと身体を押され、
あっという間にトンネルの入口に立つ。
「いってらっしゃ~い!!」
ドンッ
「ああっ」
中に押し込まれると
先程とは真逆の暗い空間が
僕を包み込む。
「壁、壁はどこだ。」
暗順応が起こるまでは壁を
伝って進もうと思ったのだ。
(何時になったら見えるようになるんだ?)
壁に触れながら歩を進めるも
眼が慣れることはないまま
トンネルを潜り抜けたようだ。
「おっかえり~!実験は大成功♪」
主はご機嫌だ。
「何も見えなかったですけど。」
「ワイ、大発明しちゃった!!」
主によると、このトンネルを潜った人の
なりたい姿を透視して現実化する技術は
完璧に実現されたというのだ。
(まじかよ)
「それ、これからどうするんですか?」
「もっちろんサービスとして提供しちゃうよ~ん!」
主に迷いはない。
「チミには社員になってもらうからねぇ夜露死苦♪」
「へっ?!てか何でヤンキーぽくなってるんですか。」
「キブンキブン♪じゃ、決まりね夜露死苦!」
あれよあれよと言う間に僕は
株式会社トンネルの社員になってしまった。
その後、なりたい姿を現実化させた姿との
対面を果たした僕はここで働くと心を決めた。
小学校の授業で書いた、将来の夢。
家に持ち帰ってちゃんとしまわなかったのが後の僕に
大きな禍根を残すことになるとは思いも掛けなかった。
「なぁに?これ。馬鹿じゃないの呆れた!(笑)」
机の上に置いておいた『将来の夢』は
母親の手によってビリビリに破かれた。
僕の夢なんて…
その日以来、夢なんて言葉自体忘れてた。
闇に葬ったのだなぁ。
その夢が。
なりたい姿が僕の前に現れたのだ。
主はとんでもなく凄いものを発明してくれた。
そして、紛れもなく 人 を救ってくれた。
こんな僕でも誰か、
心の底では助けを求めている誰かを救いたい。
僕はその日を境に生まれ変わった。
0
お気に入りに追加
3
この作品の感想を投稿する
みんなの感想(2件)
あなたにおすすめの小説
サンタクロースが寝ている間にやってくる、本当の理由
フルーツパフェ
大衆娯楽
クリスマスイブの聖夜、子供達が寝静まった頃。
トナカイに牽かせたそりと共に、サンタクロースは町中の子供達の家を訪れる。
いかなる家庭の子供も平等に、そしてプレゼントを無償で渡すこの老人はしかしなぜ、子供達が寝静まった頃に現れるのだろうか。
考えてみれば、サンタクロースが何者かを説明できる大人はどれだけいるだろう。
赤い服に白髭、トナカイのそり――知っていることと言えば、せいぜいその程度の外見的特徴だろう。
言い換えればそれに当てはまる存在は全て、サンタクロースということになる。
たとえ、その心の奥底に邪心を孕んでいたとしても。
小さなことから〜露出〜えみ〜
サイコロ
恋愛
私の露出…
毎日更新していこうと思います
よろしくおねがいします
感想等お待ちしております
取り入れて欲しい内容なども
書いてくださいね
よりみなさんにお近く
考えやすく
ちょっと大人な体験談はこちらです
神崎未緒里
恋愛
本当にあった!?かもしれない
ちょっと大人な体験談です。
日常に突然訪れる刺激的な体験。
少し非日常を覗いてみませんか?
あなたにもこんな瞬間が訪れるかもしれませんよ?
※本作品ではPixai.artで作成した生成AI画像ならびに
Pixabay並びにUnsplshのロイヤリティフリーの画像を使用しています。
※不定期更新です。
※文章中の人物名・地名・年代・建物名・商品名・設定などはすべて架空のものです。
がんばれ宮廷楽師! ~ラヴェルさんの場合~
やみなべ
ファンタジー
シレジア国の宮廷楽師としての日々を過ごす元吟遊詩人のラヴェルさんよんじゅっさい。
若かりし頃は、頼りない、情けない、弱っちいと、ヒーローという言葉とは縁遠い人物であるも今はシレジア国のクレイル王から絶大な信頼を寄せる側近となっていた。
そんな頼り?となる彼に、王からある仕事を依頼された。
その時はまたいつもの戯れともいうべき悪い癖が出たのかと思って蓋を開けてみれば……
国どころか世界そのものが破滅になりかねないピンチを救えという、一介の宮廷楽師に依頼するようなものでなかった。
様々な理由で断る選択肢がなかったラヴェルさんは泣く泣くこの依頼を引き受ける事となる。
果たしてラヴェルさんは無事に依頼を遂行して世界を救う英雄となれるのか、はたまた……
※ このお話は『がんばれ吟遊詩人! ~ラヴェル君の場合~』と『いつかサクラの木の下で…… -乙女ゲームお花畑ヒロインざまぁ劇の裏側、ハッピーエンドに隠されたバッドエンドの物語-』とのクロスオーバー作品です。
時間軸としては『いつサク』の最終話から数日後で、エクレアの前世の知人が自分を題材にした本を出版した事を知り、抗議するため出向いた……っという経緯であり、『ラヴェル君』の本編から約20年経過。
向こうの本編にはないあるエピソードを経由されたパラレルの世界となってますが、世界観と登場人物は『ラヴェル君』の世界とほぼ同じなので、もし彼等の活躍をもっと知りたいならぜひとも本家も読んでやってくださいまし。
URL
http://blue.zero.jp/zbf34605/bard/bardf.html
ちなみにラヴェル君の作者曰く、このお話でのラヴェルさんとお兄ちゃんの扱いは全く問題ないとか……
(言い換えればラヴェル君は本家でもこんな扱われ方なのである……_(:3 」∠)_)
今日の授業は保健体育
にのみや朱乃
恋愛
(性的描写あり)
僕は家庭教師として、高校三年生のユキの家に行った。
その日はちょうどユキ以外には誰もいなかった。
ユキは勉強したくない、科目を変えようと言う。ユキが提案した科目とは。
俺の娘、チョロインじゃん!
ちゃんこ
ファンタジー
俺、そこそこイケてる男爵(32) 可愛い俺の娘はヒロイン……あれ?
乙女ゲーム? 悪役令嬢? ざまぁ? 何、この情報……?
男爵令嬢が王太子と婚約なんて、あり得なくね?
アホな俺の娘が高位貴族令息たちと仲良しこよしなんて、あり得なくね?
ざまぁされること必至じゃね?
でも、学園入学は来年だ。まだ間に合う。そうだ、隣国に移住しよう……問題ないな、うん!
「おのれぇぇ! 公爵令嬢たる我が娘を断罪するとは! 許さぬぞーっ!」
余裕ぶっこいてたら、おヒゲが素敵な公爵(41)が突進してきた!
え? え? 公爵もゲーム情報キャッチしたの? ぎゃぁぁぁ!
【ヒロインの父親】vs.【悪役令嬢の父親】の戦いが始まる?
淫らな蜜に狂わされ
歌龍吟伶
恋愛
普段と変わらない日々は思わぬ形で終わりを迎える…突然の出会い、そして体も心も開かれた少女の人生録。
全体的に性的表現・性行為あり。
他所で知人限定公開していましたが、こちらに移しました。
全3話完結済みです。
💚催眠ハーレムとの日常 - マインドコントロールされた女性たちとの日常生活
XD
恋愛
誰からも拒絶される内気で不細工な少年エドクは、人の心を操り、催眠術と精神支配下に置く不思議な能力を手に入れる。彼はこの力を使って、夢の中でずっと欲しかったもの、彼がずっと愛してきた美しい女性たちのHAREMを作り上げる。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる
本作については削除予定があるため、新規のレンタルはできません。
このユーザをミュートしますか?
※ミュートすると該当ユーザの「小説・投稿漫画・感想・コメント」が非表示になります。ミュートしたことは相手にはわかりません。またいつでもミュート解除できます。
※一部ミュート対象外の箇所がございます。ミュートの対象範囲についての詳細はヘルプにてご確認ください。
※ミュートしてもお気に入りやしおりは解除されません。既にお気に入りやしおりを使用している場合はすべて解除してからミュートを行うようにしてください。
すっぴんおふー🎶
⁽⁽◝( •௰• )◜⁾⁾₍₍◞( •௰• )◟₎₎
いいねいいね!
軽くのりのりで書いてる感じがすき!
すっぴんおふー🎶カワ(・∀・)イイ!!
やったぁ☆のりのりで書いてみたよ〜
ありがとう⁽⁽◝( •௰• )◜⁾⁾₍₍◞( •௰• )◟₎₎
不思議なお話、note読者には再読だね!
あらためていい作品だと思ったよ〜♪
ぽろたん♪
そうなんです!
三幕構成的?にしてみました。
あらためてありがとうございます⁽⁽◝( •௰• )◜⁾⁾₍₍◞( •௰• )◟₎₎