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なりたい自分が自分 承転
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「幸のこと、何でも答えられるから!」
(そんな馬鹿げた話、信じられるかよ!
答えられるわけないじゃないか!!)
ちょっとムキになって俺は言った。
「じゃあ!俺の初恋は誰?!!」
「稲荷田小学校の3年2組だった
星野えり叶かちゃんでしょ?」
迷う素振りなど少しも見せず、
あっという間に答えてみせた。
「……当たり。」
(誰にも言っていない、何で分かるんだ?)
「ほら、やっぱりアタシは幸なの。
これで分かってくれた?」
「俄に信じ難いけど、俺じゃなきゃ
答えられるなんてあり得ない。」
そんな返事をしながらも、
もし本当に目の前の彼女が自分なら
彼女と話すのが途端に可笑しくなってきた。
そして彼女は、
「実はアタシ、家がなくて…。
幸の家に泊めてくれないかな?」
そう言い出した。
俺に彼女はいないし、
いつまで続くか分からない今
この状況を楽しむことにした。
「帰る家、無いんなら
決まるまでここに住むか?」
「ありがとう!!幸ならそう言って
くれると分かってた!」
言い終わらないうちに彼女は
俺に抱きついてきた。
「んえっ?!!」
彼女はそのままじっと動かずにいる。
(何だこの状況は。)
「あの、さ…
そう言いかけたものの
それ以上言うのはやめた。
相変わらず微動だにせず
黙り続けている彼女に
「飯、食うか?」
そう話しかけると、
「うん、食べる!」
今までの瞬間が嘘のように
溌剌と彼女は答えた。
幸は数分、台所に立った。
「ほい、今日の飯。」
レトルトカレーを
即席ご飯にかけたものを、
彼女に差し出した。
「嬉しいけど、
なにで食べればいいの?」
この言葉で事態を察し、
慌ててスプーンを渡した。
「ありがとう。幸は
小さい時からこうだよね。」
彼女は笑った。
「……俺のも取ってくる。」
二人正座をして、
「いただきます。」
そこから、
無言の時間が暫く続いた。
「あのさっ、なんて呼べばいい?」
(彼女が俺だとしても幸と呼ぶのは
なんだか気恥ずかしい。)
「そうだなぁ。えり叶かはどう?」
「えっ、、、」
改めて見ると彼女には、小学生の
えり叶ちゃんの面影があった。
「おおう。え、えり叶…「そんなに緊張しちゃって(笑)
今でも忘れられないんでしょう?」
(今度もまんまと当てられた。)
「ま、まぁ実はな。
えり、、えり叶には隠し事は出来ないな。」
「そうよ、私は幸えり叶だからね。」
そんな話をしている間にカレーライスは
二人の胃袋へと消えていった。
「ごちそうさまでした。」
「美味しかったね!」
「だろ?」
「うんっ!」
「よし、じゃあ風呂沸かすから。
着替えは…無いよな。わりぃけど、
今日は俺のスウェット着てくれるか?」
「タオルも今渡すよ。」
「大丈夫、ありがとう。」
「歯ブラシは洗面台の収納に
しまってあるから、新品の。」
「うん、分かった!」
テレビをつけると
『ホワイトハッカーシリーズ』がやっている。
「これ、ちょー好き!!」
「お。おもしれーよな!!」
(って、えり叶が俺なら好きで当然か。)
そのうちに風呂が沸き、
「先に入るか?」
「そうだね。先に入れてもらおうかな。」
スウェットとタオルを
受け取ったえり叶は、
脱衣所へと消えていった。
その間、いつでもえり叶が眠れるように
リビングの隅に来客用の布団を敷いた。
それからは突然の出来事に、ぼーっとしていた。
1時間程経っただろうか。
「おまたせ。幸もいってらっしゃい。」
「お、おう。」
いつもの様にシャワーを済ませ、
浴槽の蓋を開けるとそこには
見覚えのあるものが浮かんでいた。
?!!!
「ガーガーアヒルのおもちゃだ!!」
「小さい時よく遊んでたんだよなぁ。」
俺の中からどんどんワクワクが溢れてきた。
(そうか、俺はガーガーとまた遊びたかったんだ。
この年になって子供みたいなことだって抑えてた。)
俺が部屋に戻ってくるのを確認したえり叶は
まるで見ていたかのように、にっこりと笑っていた。
「えり叶!湯船にガーガーが…!!」
「遊びたい気持ち、無意識に閉じ込めてたでしょ?」
「うん。俺、いつからこうだったんだろう…。」
「これから1つ1つ、一緒に思い出していこう。」
「お布団敷いてくれてありがとう。
今日はもう、おやすみ。」
「ん、おやすみ。」
えり叶が眠りに落ちるのを見届け
豆電球にし、俺も隣の部屋のベッドに
横たわるとすぐに眠ってしまった。
(そんな馬鹿げた話、信じられるかよ!
答えられるわけないじゃないか!!)
ちょっとムキになって俺は言った。
「じゃあ!俺の初恋は誰?!!」
「稲荷田小学校の3年2組だった
星野えり叶かちゃんでしょ?」
迷う素振りなど少しも見せず、
あっという間に答えてみせた。
「……当たり。」
(誰にも言っていない、何で分かるんだ?)
「ほら、やっぱりアタシは幸なの。
これで分かってくれた?」
「俄に信じ難いけど、俺じゃなきゃ
答えられるなんてあり得ない。」
そんな返事をしながらも、
もし本当に目の前の彼女が自分なら
彼女と話すのが途端に可笑しくなってきた。
そして彼女は、
「実はアタシ、家がなくて…。
幸の家に泊めてくれないかな?」
そう言い出した。
俺に彼女はいないし、
いつまで続くか分からない今
この状況を楽しむことにした。
「帰る家、無いんなら
決まるまでここに住むか?」
「ありがとう!!幸ならそう言って
くれると分かってた!」
言い終わらないうちに彼女は
俺に抱きついてきた。
「んえっ?!!」
彼女はそのままじっと動かずにいる。
(何だこの状況は。)
「あの、さ…
そう言いかけたものの
それ以上言うのはやめた。
相変わらず微動だにせず
黙り続けている彼女に
「飯、食うか?」
そう話しかけると、
「うん、食べる!」
今までの瞬間が嘘のように
溌剌と彼女は答えた。
幸は数分、台所に立った。
「ほい、今日の飯。」
レトルトカレーを
即席ご飯にかけたものを、
彼女に差し出した。
「嬉しいけど、
なにで食べればいいの?」
この言葉で事態を察し、
慌ててスプーンを渡した。
「ありがとう。幸は
小さい時からこうだよね。」
彼女は笑った。
「……俺のも取ってくる。」
二人正座をして、
「いただきます。」
そこから、
無言の時間が暫く続いた。
「あのさっ、なんて呼べばいい?」
(彼女が俺だとしても幸と呼ぶのは
なんだか気恥ずかしい。)
「そうだなぁ。えり叶かはどう?」
「えっ、、、」
改めて見ると彼女には、小学生の
えり叶ちゃんの面影があった。
「おおう。え、えり叶…「そんなに緊張しちゃって(笑)
今でも忘れられないんでしょう?」
(今度もまんまと当てられた。)
「ま、まぁ実はな。
えり、、えり叶には隠し事は出来ないな。」
「そうよ、私は幸えり叶だからね。」
そんな話をしている間にカレーライスは
二人の胃袋へと消えていった。
「ごちそうさまでした。」
「美味しかったね!」
「だろ?」
「うんっ!」
「よし、じゃあ風呂沸かすから。
着替えは…無いよな。わりぃけど、
今日は俺のスウェット着てくれるか?」
「タオルも今渡すよ。」
「大丈夫、ありがとう。」
「歯ブラシは洗面台の収納に
しまってあるから、新品の。」
「うん、分かった!」
テレビをつけると
『ホワイトハッカーシリーズ』がやっている。
「これ、ちょー好き!!」
「お。おもしれーよな!!」
(って、えり叶が俺なら好きで当然か。)
そのうちに風呂が沸き、
「先に入るか?」
「そうだね。先に入れてもらおうかな。」
スウェットとタオルを
受け取ったえり叶は、
脱衣所へと消えていった。
その間、いつでもえり叶が眠れるように
リビングの隅に来客用の布団を敷いた。
それからは突然の出来事に、ぼーっとしていた。
1時間程経っただろうか。
「おまたせ。幸もいってらっしゃい。」
「お、おう。」
いつもの様にシャワーを済ませ、
浴槽の蓋を開けるとそこには
見覚えのあるものが浮かんでいた。
?!!!
「ガーガーアヒルのおもちゃだ!!」
「小さい時よく遊んでたんだよなぁ。」
俺の中からどんどんワクワクが溢れてきた。
(そうか、俺はガーガーとまた遊びたかったんだ。
この年になって子供みたいなことだって抑えてた。)
俺が部屋に戻ってくるのを確認したえり叶は
まるで見ていたかのように、にっこりと笑っていた。
「えり叶!湯船にガーガーが…!!」
「遊びたい気持ち、無意識に閉じ込めてたでしょ?」
「うん。俺、いつからこうだったんだろう…。」
「これから1つ1つ、一緒に思い出していこう。」
「お布団敷いてくれてありがとう。
今日はもう、おやすみ。」
「ん、おやすみ。」
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