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ペンギンたちのファーストコンタクト①
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「まただ……、またランキング外。なんだかPV数の伸びも、最近悪くなってきた感じがする。ちゃんと伏線も回収して、今が一番面白いと思うんだけどなぁ……」
小説投稿サイトにペンネーム「ソラ」でログインした肇は、今日も自分の作品がランキングに載っていないことを憂えていた。
「どの作品も前半の頃はいつも調子良いんだよ。だけど、話が進むに連れてPV数が減っていくんだよな。しかも、前半の話数より後半の話数の方がPV数が多い時があるけど、なんだよこれ。後半だけ読んで話が分かるわけねぇじゃねぇか!」
今日はバイトが休みであったため、いつもよりはゆっくりとした朝を迎えられている。しかし、最近は自分の作品がなかなかランキングに載らない日が続いているからか、朝から愚痴が止まらない。
「そもそも最近の作品はどれも……、ん? グループチャットに通知が来てる。珍しいな」
愚痴をこぼしながらサイト内をウロウロしていると、所属しているグループのグループチャットに通知が来ていることに気付いた。
肇が利用している小説投稿サイトには、グループ内の人々で会話が出来るチャット機能が実装されている。しかし、個人的な近況や報告などは各々の活動報告で知ることが出来るため、基本的にはあまり用いられていなかった。
そのため、久し振りに誰かがグループチャット内で発言したということで、肇も多少の興味を持ってそれを開いた。
「みなさん、お久し振りです。「福岡小説の会」リーダーの椎名です。執筆活動は捗っていらっしゃるでしょうか? 突然のグループチャット内での発言、失礼致します。
今回、こうして私がグループチャットで発言した理由は、グループ内の皆さん同士がもっと交流を深めることが出来たら良いなと思ったからです。最近は小説投稿サイトを利用して小説を書く人が増えてきました。それにより、サイト内の作品数も、作品の種類も大幅に増えた結果、従来よりも更に魅力的な作品作りをしていかなければ、厳しいサバイバルにおいて生き残ることが難しくなってきています。
そこで、普段は活動報告などでしか互いの近況を知り得ることが出来ないところ、一度実際にお会いしてコミュニケーションを図ることにより、互いの創作のヒントとなるような情報を交換し合おうじゃありませんか?
参加希望者が一定数集まり次第、場所と日時を追って連絡したいと思います。是非、一人でも多くの方の参加をお待ちしております」
同じグループに属する椎名から届いたチャットを読み終えた肇は、身体の奥底から怒りが湧いてくるのを感じた。
「ちぇっ。椎名さんはいいよな。出す作品のほとんどが書籍されて、しかもそこそこ売れてるし。そんな椎名さんが今更どんな情報をほしいっていうんだよ? どうせ自慢話が始まるに決まってるじゃんか。そもそも俺は一匹狼タイプだから、他者との関わりなんて最低限で良い。一人で黙々と作品を創り出すのが好きなんだよ。こんな集まりになんか参加するわけ……」
ぶつぶつと独り言を言いながら、「参加を希望する」という発言が流れている当該グループチャットを閲覧していると、参加希望者の一人に目が止まった。
「あ……。夏川カケルさんも参加するのか……」
夏川カケルという人物は、肇が今一番気になっている投稿者である。今のところ、感想と誤字脱字報告を送るくらいしか接点はないが、以前プロフィールを確認した際に、住まいも年齢も近いということを知ってからは、肇はカケルを勝手にライバル視するようになっていた。
「ま、まぁ、たまには他の人の考えを実際に会って聞いてみるのも悪くないかな……? ……いやいや。俺は馴れ合いなんか絶対にしないぞ。仲間同士で作品を読み合ったり褒め合ったりするなんて、売れない小説家同士で傷を舐めあっているのと同じじゃないか? そんな情けないこと、俺は御免だな」
しかし、そんな気持ちとは裏腹に、肇は夏川カケルが参加しようとしている事実に心が揺らいでいた。
※
「「福岡会」での集まりかぁ! 確かに今まではウェブ上で作品を読み合うだけの仲だったけど、実際に会うことで貴重な話が聞けそうだな! 良いコミュニケーションになりそう! よし、参加を希望しよう!」
肇とは対照的に、比較的社交的な性格である柚希は「福岡小説の会」での集まりに積極的であった。
「仕事や和希のこともあるから、場所や日時次第では行けないと思うけど、是非とも参加できたらいいなぁ!」
柚希はグループチャット内で、「夏川カケルです。「福岡小説の会」での集まりの参加を希望します。よろしくお願い致します」と発言する。こうして、既にちらほら参加希望者がグループチャット内で発言する中に、柚希の発言も混じることとなった。
「あ、たまゆらさんも参加するんだ! たまゆらさんの作品好きなんだよなぁ。どうやってストーリーやキャラクターを創造しているか聞いてみよう!」
柚希は参加した場合のことを想像し、期待で胸を膨らませていた。今の時点で人数を確認すると、柚希を含めて10人程が参加を希望していた。
「日時や場所にもよるから全員は集まれないと思うけど、出来るだけたくさんの人と交流できたらいいな。……そういえば、ソラさんは参加しないのかな?」
柚希はふと気になって、今の時点で参加を希望している人の一覧を確認する。
「ソラさんは……、いないか。思えば、活動報告もあんまり更新されないから、一人で黙々と創作するのが好きなのかな? それなら仕方が無いけど……。でも一度で良いから、ソラさんに日本語の上手な使い方や文章の作り方なんかを聞いてみたかったなぁ」
柚希はソラが参加していないのを残念に思いつつ、しかし、もし自分が参加出来た時は有意義な時間にするべく、すぐに気持ちを切り替える。
柚希がグループチャットの画面を閉じようとした、その時だった。
柚希が見ているグループチャットの画面に、「ソラです。「福岡小説の会」での集まりの参加を希望します。よろしくお願い致します」との発言が表示された。
「……あ! ソラさんも参加するんだ!」
小説投稿サイトにペンネーム「ソラ」でログインした肇は、今日も自分の作品がランキングに載っていないことを憂えていた。
「どの作品も前半の頃はいつも調子良いんだよ。だけど、話が進むに連れてPV数が減っていくんだよな。しかも、前半の話数より後半の話数の方がPV数が多い時があるけど、なんだよこれ。後半だけ読んで話が分かるわけねぇじゃねぇか!」
今日はバイトが休みであったため、いつもよりはゆっくりとした朝を迎えられている。しかし、最近は自分の作品がなかなかランキングに載らない日が続いているからか、朝から愚痴が止まらない。
「そもそも最近の作品はどれも……、ん? グループチャットに通知が来てる。珍しいな」
愚痴をこぼしながらサイト内をウロウロしていると、所属しているグループのグループチャットに通知が来ていることに気付いた。
肇が利用している小説投稿サイトには、グループ内の人々で会話が出来るチャット機能が実装されている。しかし、個人的な近況や報告などは各々の活動報告で知ることが出来るため、基本的にはあまり用いられていなかった。
そのため、久し振りに誰かがグループチャット内で発言したということで、肇も多少の興味を持ってそれを開いた。
「みなさん、お久し振りです。「福岡小説の会」リーダーの椎名です。執筆活動は捗っていらっしゃるでしょうか? 突然のグループチャット内での発言、失礼致します。
今回、こうして私がグループチャットで発言した理由は、グループ内の皆さん同士がもっと交流を深めることが出来たら良いなと思ったからです。最近は小説投稿サイトを利用して小説を書く人が増えてきました。それにより、サイト内の作品数も、作品の種類も大幅に増えた結果、従来よりも更に魅力的な作品作りをしていかなければ、厳しいサバイバルにおいて生き残ることが難しくなってきています。
そこで、普段は活動報告などでしか互いの近況を知り得ることが出来ないところ、一度実際にお会いしてコミュニケーションを図ることにより、互いの創作のヒントとなるような情報を交換し合おうじゃありませんか?
参加希望者が一定数集まり次第、場所と日時を追って連絡したいと思います。是非、一人でも多くの方の参加をお待ちしております」
同じグループに属する椎名から届いたチャットを読み終えた肇は、身体の奥底から怒りが湧いてくるのを感じた。
「ちぇっ。椎名さんはいいよな。出す作品のほとんどが書籍されて、しかもそこそこ売れてるし。そんな椎名さんが今更どんな情報をほしいっていうんだよ? どうせ自慢話が始まるに決まってるじゃんか。そもそも俺は一匹狼タイプだから、他者との関わりなんて最低限で良い。一人で黙々と作品を創り出すのが好きなんだよ。こんな集まりになんか参加するわけ……」
ぶつぶつと独り言を言いながら、「参加を希望する」という発言が流れている当該グループチャットを閲覧していると、参加希望者の一人に目が止まった。
「あ……。夏川カケルさんも参加するのか……」
夏川カケルという人物は、肇が今一番気になっている投稿者である。今のところ、感想と誤字脱字報告を送るくらいしか接点はないが、以前プロフィールを確認した際に、住まいも年齢も近いということを知ってからは、肇はカケルを勝手にライバル視するようになっていた。
「ま、まぁ、たまには他の人の考えを実際に会って聞いてみるのも悪くないかな……? ……いやいや。俺は馴れ合いなんか絶対にしないぞ。仲間同士で作品を読み合ったり褒め合ったりするなんて、売れない小説家同士で傷を舐めあっているのと同じじゃないか? そんな情けないこと、俺は御免だな」
しかし、そんな気持ちとは裏腹に、肇は夏川カケルが参加しようとしている事実に心が揺らいでいた。
※
「「福岡会」での集まりかぁ! 確かに今まではウェブ上で作品を読み合うだけの仲だったけど、実際に会うことで貴重な話が聞けそうだな! 良いコミュニケーションになりそう! よし、参加を希望しよう!」
肇とは対照的に、比較的社交的な性格である柚希は「福岡小説の会」での集まりに積極的であった。
「仕事や和希のこともあるから、場所や日時次第では行けないと思うけど、是非とも参加できたらいいなぁ!」
柚希はグループチャット内で、「夏川カケルです。「福岡小説の会」での集まりの参加を希望します。よろしくお願い致します」と発言する。こうして、既にちらほら参加希望者がグループチャット内で発言する中に、柚希の発言も混じることとなった。
「あ、たまゆらさんも参加するんだ! たまゆらさんの作品好きなんだよなぁ。どうやってストーリーやキャラクターを創造しているか聞いてみよう!」
柚希は参加した場合のことを想像し、期待で胸を膨らませていた。今の時点で人数を確認すると、柚希を含めて10人程が参加を希望していた。
「日時や場所にもよるから全員は集まれないと思うけど、出来るだけたくさんの人と交流できたらいいな。……そういえば、ソラさんは参加しないのかな?」
柚希はふと気になって、今の時点で参加を希望している人の一覧を確認する。
「ソラさんは……、いないか。思えば、活動報告もあんまり更新されないから、一人で黙々と創作するのが好きなのかな? それなら仕方が無いけど……。でも一度で良いから、ソラさんに日本語の上手な使い方や文章の作り方なんかを聞いてみたかったなぁ」
柚希はソラが参加していないのを残念に思いつつ、しかし、もし自分が参加出来た時は有意義な時間にするべく、すぐに気持ちを切り替える。
柚希がグループチャットの画面を閉じようとした、その時だった。
柚希が見ているグループチャットの画面に、「ソラです。「福岡小説の会」での集まりの参加を希望します。よろしくお願い致します」との発言が表示された。
「……あ! ソラさんも参加するんだ!」
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