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女神

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 サーラさんに案内されるがまま更衣室のようなところに入らされたら、二人のメイドがいて、目を輝かせていた。

「お嬢様からレオさんの話は聞いております」
「あなたがレオさんですね!そして、このかわいいスライムはぷるんくん!」
「は、はい。よろしくお願いします」

 僕が頭を下げたら、二人は早速僕の方へ近づいて服を脱がした。

「え、え!?いきなり!?」
「私たちにお任せを~」
「ふふ」

 二人は慣れた手つきで僕に執事服を着せてゆく。

 それから、髪を櫛でといたり、香水をつけたりと、二人は実に忙しなく動いていた。

 数分が経つと

「ちゃんちゃじゃん!」

 活発な性格のメイドさんが気持ち良さそうに両手を広げた。

「……なんか、恥ずかしい……」
 
 鏡に写っている自分を見ていると、いつもとは全然違う姿が写っている。

 手入れされた髪、作り込まれたお仕着せの執事服。

 僕が鏡に写っている自分の姿を見て顔を俯かせていると、活発な性格のメイドさんが僕の背中をトントン叩く。

「すごく似合ってますよ。この際、カリナ様の専属執事になるのはいかが?」
「え?」
「ここは執事長と門番の方二人を除けば男がいないんですよね。だから、もしここで働いたら色々利用でき……彩が加わると思います」

 今この人、利用と言ってたよな……
 
 なんか怖い人だ。

 僕が戦慄の表情をしていたら、落ち着いた感じのメイドさんがいつしか床で僕を見上げているぷるんくんに視線を向ける。

「ぷるんさんにはこれをつけていただきます」
「ん?」

 名前を呼ばれたことでぷるんくんは、その落ち着いた感じのメイドさんに視線を向けた。

 すると、その落ち着いた感じのメイドさんは、リボンに似た執事のネクタイをぷるんくんの体にくっつけた。

「はい。これでお揃いです」
「……」

 ぷるんくんははてなと小首を傾げ、再び僕を見上げた。

 ネクタイをつけたぷるんくん……

「似合ってるよ。ぷるんくん」
 
 そう感想を言うと、ぷるんくんはドヤ顔をして、目をキリッとさせた。

 黒いネクタイが一つ加わっただけなのに、なんだか、とてもしっかりしていそうなスライムに見える。

 僕とぷるんくんは二人のメイドにお礼を言ってから、厩舎へと向かい、馬車を運転し邸宅の正門の前にやってきた。

 厩舎の場所は厩舎を管理するメイドさんに教えてもらった。

 御者を務めるのは僕。

 そして、カリナ様の付き人としてサーラさんも一緒にこの馬車に乗ることになっている。

 馬車の運転は、ライデン村にいた頃結構やっていたので、問題にはならないが、公爵家の長女が乗っている馬車を運転するとなると、かなり緊張してくる。

 僕は馬車の隣に立ったまま、邸宅の扉を見つめている。

 ぷるんくんはというと、いつしか馬と仲良くなったらしく、馬の頭の上でぴょんぴょん跳ねていた。

 数分ほどが流れると、

 やっとドアが空いた。

 そこから出てきたのは、

 サーラさんと一人の女神だった。

 ツヤのある長い亜麻色の髪、青色の花の形をした髪飾り、白と青を基調としたドレスは彼女の女性として恵まれた体を覆っている。

 深海を思わせる青い瞳からは名状し難い威厳が放たれているようで、整った目鼻立ちは鋭い印象を与える。

 踏み込めないオーラ。

 アランのような中途半端な貴族なんかが近づいていい相手ではない。

 なんなら、平民生まれの僕は尚更。

 僕はカリナ様に圧倒されてしまった。

 彼女は前にかかった髪をかきあげると、僕の存在に気がつく。

 彼女は頬を緩めた。

「レオくん!」
「……」
 
 固まっている僕を見つめてカリナ様は腰に手を当てて、僕を訝しげに見つめてきた。

「レオくん?」
「……」

 何も言わない僕を見かねたカリナ様は頬を膨らませて詰め寄ってきた。

「レオくん!」
「は、はい!」
「なんで何も言わないの?私のドレス姿ってそんなに変かしら?」
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