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タンポポ

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聖ノルン教会

 バロン伯爵家の姉弟は急いで王都にある聖ノルン教会へとやってきた。
 
 ここはノルンという女神を奉るところで、貧しいものや病気のあるものなど、訳ありの人々が集う場であり、教会の隣には孤児院が存在する。

 教会につくと、礼拝が終わったのか、身分、老若男女問わず、みんながそれぞれに祝福の言葉を分かち合いながら教会の正門から出ようとしている。

「あら!アイリスちゃん!いらっしゃい!今日は遅かったね!」
「隣にいるのは弟?」

 人々が二人に問いかけるが、アイリスは弟の手を強く握って、頭を軽く下げて挨拶しながら中に入った。

教会の中

「きっとノルン様が祝福して下さったに違いありません」
「ええ。レオさんにはこれからずっと幸せになって欲しいものです」
「ふふ、そのレオさんという方は知らないんでしょうね。サーラがこんなに熱心にお祈りを捧げてきたことを」
「……」
「きっといつかレオさんだけでなくメディチ家にも祝福が降り注がれます」
「……そうなるといいんですけど」
「信じましょう」
 
 カリナの専属メイドであるサーラと聖女の服装をした少女が談話を交わしている。

 そこへ、バロン家の姉弟が現れる。

 聖女とサーラは目を丸くして二人を見つめる。

 うち、サーラが口を開いた。

「アイリス……」
「サーラお姉ちゃん……」

 良心の呵責を覚えるようにアイリスは顔を歪ませ、頭を俯かせる。

 サーラはそんなアイリスのところへ行き、そっと彼女の頭を両腕で抱きしめる。

「一体何がアイリスを恐れさせているんですか?」
「……」

 返事をしないアイリスを見て、サーラは若干語気を強める。

「恐れは罪です。その罪の原因を一緒に無くしましょう。教えてください。誰もあなたを責めたりはしません」
「……はい」
 
 サーラに抱きしめられているアイリスは頭をあげた。

 そして、赤い瞳でサーラの紫色の瞳を捉え、口を開いた。


一日後

レオside

 僕とぷるんくんは生姜焼きで適当に朝ごはんを済ませ、学院へと向かうべく家を出た。

 僕の隣でカタツムリのように這うぷるんくんは、辺りを見回している。

「ぷりゅ……ぷるんぷるん……ん?」

 ぷるんくんは何かを発見したようで、僕から離れた。

「ぷるんくん?どうした?」

 僕がぷるんくんの後ろをついていくと、

 そこには一本の小さなタンポポがあった。

 ここは石たたみの道だ。

 石の間にはコンクリートが詰まっており、雑草一本も生えそうにないのに、ぷるんくんが見ているのは、そのコンクリートから生えた一本のタンポポだった。

 ぷるんくんは目を『^^』にして、そのタンポポに自分の頭を擦り付ける。

「んんんんんん」

 気持ちよさそうだ。

 柔らかい黄色のぷるんくんと道端のタンポポ。

 僕はこの光景を見て、微笑みを浮かべた。

 ぷるんくんが心ゆくまでタンポポと交感するのを待ってから、僕とぷるんくんは学院へと向かった。

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