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謎の違和感
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「あなたの話は、昔からお嬢様とサーラくんからたくさん聞きましたよ」
「え、ええ!?……ん……」
昔ってことは、おそらく入学してからって意味だろう。
僕の学院での生活って決して自慢できるものではない。
いじめられたり、属性なしと嘲笑われたり、本当に碌なもんじゃない。
なのに、学院での恥ずかしい姿をこの執事長にいうなんて……
僕が頬を赤めていたら、セバスチャンさんはにっこり笑いながら口を開く。
「これからもよろしくお願いします」
「は、はい!こちらこそ……」
僕は彼から目を逸らした。
すると、僕の表情を見てぷるんくんがまたドヤ顔を浮かべ、セバスチャンさんに向けてパンチを連発する。
もちろん、手がちっこいので届かない。
「ぷるん!!ぷるるるん!!ぷりゅん!!!」
「ぷるんくん……もうやめてもいいよ……」
と、消え入りそうな声で言うと、僕の両手で抑えられているぷるんくんはパンチをやめ、ぐるっと回って僕を見つめた。
そして、
グウウウウウウ!!!!!!!!
ぷるんくんのお腹が鳴る。
ぷるんくんは急に落ち込んだ。
「な、なんて音だ……」
セバスチャンさんが驚愕した。
「何?今の何の音なの!?」
「一体何が!?」
馬車にいたカリナ様とサーラさんもぷるんくんの空腹の音が気になったようで、空いた窓から顔をだけぴょこんと出して慄きの表情を浮かべた。
「す、すみません……ぷるんくんが結構お腹が空いたみたいです……」
「「……」」
かなりショックを受けたらしく、カリナ様とサーラさんは冷や汗をかきつつ、互いを見て頷き合った。
X X X
王都にある高級レストラン
レストランに着いた僕たち。
セバスチャンさんは、自分は後で食べると言って、僕たち三人で食事をするようにと言ってくれた。
と言うわけで、僕とカリナ様、サーラさんは四人用のテーブルに案内され、腰掛けた。
位置は僕とぷるんくんが隣、向かいにカリナ様とサーラさん。
カリナ様は僕にメニューを差し出し、大きな胸をムンと反らして自信満々に言う。
「さあ、何でも好きなものを選びなさい。今日は特別で、とてもめでたい日なの」
「い、いや、でも……ぷるんくんは結構食べますので……」
「遠慮はいらないわ。ふふ。お金のことなら心配いらない」
「心配になりますよ!こんな高いところで……」
「いいの!これは、レオくんのための場だけど、私のための場でもあるのよ」
「どういう話ですか?」
「それはね……」
言ってカリナ様は物憂げな表情を浮かべる。
そんな彼女の心を読んだのか、サーラさんが急に真面目な面持ちをし低い声で言葉を発した。
「お邪魔虫を追っ払ってくれましたから」
「お邪魔虫……」
「アランさんのことです」
「あ……」
「それに対するお礼でもあります」
なるほど。
そういうことか。
アランのやつは、しつこくカリナ様に絡んできた。
だけど、それ自体が罪に問われることかというと、決してそうではない。
学院という閉鎖された空間でそんな面倒な相手とずっと一緒にいること自体、彼女にとってさぞストレスだったのだろう。
にしても、お邪魔虫か……
最初からアランは眼中にもなかったんだ。
僕がドン引きしていると、カリナ様がにっこり笑いながら言う。
「サーラの言う通りよ。ありがとう。だから今日は食べたい放題よ」
「……いいですか?」
「もちろん」
「では……お言葉に甘えて」
20分後
「ぷりゅ!!ぷりゅりゅん!!!んんんんん!!!!んんんんんん!!!」
僕が許可するや否や、ぷるんくんはとんでもない量の料理をものの数秒で平らげては満足げに体を震えさせる。
店員が追加の料理を持ってくると、ぷるんくんはジャンプをし、それらも食べてゆく。
「見て見て!あのスライム、すごい食べるぞ……」
「あんなにちっこいのに、嘘だろ……」
「それはそうと、あのお方ってメディチ家の一人娘、カリナ様じゃないの?」
「すごい光景だ……」
店員、お客はぷるんくんの食べっぷりをみて、ドン引きしている。
カリナ様とサーラさんは口をぽかんと開けて、出された料理をとんでもないスピードで食べてゆくぷるんくんをただただ見つめていた。
「うちのぷるんくんがすみません!やっぱり食べすぎますよね……すみません……すみません……」
僕は頭を下げて謝る。
そしたら、カリナ様の当惑する顔は、笑顔に変わった。
「いいの。ぷるんくんも努力したからね。努力したものが報われる。いい話じゃない!今日は金匠手形で払うわよ!!」
「……」
やっぱりカリナ様には頭が上がらない。
けれど、
彼女の言葉を聞いて、僕は謎の違和感を感じざるを得なかった。
「え、ええ!?……ん……」
昔ってことは、おそらく入学してからって意味だろう。
僕の学院での生活って決して自慢できるものではない。
いじめられたり、属性なしと嘲笑われたり、本当に碌なもんじゃない。
なのに、学院での恥ずかしい姿をこの執事長にいうなんて……
僕が頬を赤めていたら、セバスチャンさんはにっこり笑いながら口を開く。
「これからもよろしくお願いします」
「は、はい!こちらこそ……」
僕は彼から目を逸らした。
すると、僕の表情を見てぷるんくんがまたドヤ顔を浮かべ、セバスチャンさんに向けてパンチを連発する。
もちろん、手がちっこいので届かない。
「ぷるん!!ぷるるるん!!ぷりゅん!!!」
「ぷるんくん……もうやめてもいいよ……」
と、消え入りそうな声で言うと、僕の両手で抑えられているぷるんくんはパンチをやめ、ぐるっと回って僕を見つめた。
そして、
グウウウウウウ!!!!!!!!
ぷるんくんのお腹が鳴る。
ぷるんくんは急に落ち込んだ。
「な、なんて音だ……」
セバスチャンさんが驚愕した。
「何?今の何の音なの!?」
「一体何が!?」
馬車にいたカリナ様とサーラさんもぷるんくんの空腹の音が気になったようで、空いた窓から顔をだけぴょこんと出して慄きの表情を浮かべた。
「す、すみません……ぷるんくんが結構お腹が空いたみたいです……」
「「……」」
かなりショックを受けたらしく、カリナ様とサーラさんは冷や汗をかきつつ、互いを見て頷き合った。
X X X
王都にある高級レストラン
レストランに着いた僕たち。
セバスチャンさんは、自分は後で食べると言って、僕たち三人で食事をするようにと言ってくれた。
と言うわけで、僕とカリナ様、サーラさんは四人用のテーブルに案内され、腰掛けた。
位置は僕とぷるんくんが隣、向かいにカリナ様とサーラさん。
カリナ様は僕にメニューを差し出し、大きな胸をムンと反らして自信満々に言う。
「さあ、何でも好きなものを選びなさい。今日は特別で、とてもめでたい日なの」
「い、いや、でも……ぷるんくんは結構食べますので……」
「遠慮はいらないわ。ふふ。お金のことなら心配いらない」
「心配になりますよ!こんな高いところで……」
「いいの!これは、レオくんのための場だけど、私のための場でもあるのよ」
「どういう話ですか?」
「それはね……」
言ってカリナ様は物憂げな表情を浮かべる。
そんな彼女の心を読んだのか、サーラさんが急に真面目な面持ちをし低い声で言葉を発した。
「お邪魔虫を追っ払ってくれましたから」
「お邪魔虫……」
「アランさんのことです」
「あ……」
「それに対するお礼でもあります」
なるほど。
そういうことか。
アランのやつは、しつこくカリナ様に絡んできた。
だけど、それ自体が罪に問われることかというと、決してそうではない。
学院という閉鎖された空間でそんな面倒な相手とずっと一緒にいること自体、彼女にとってさぞストレスだったのだろう。
にしても、お邪魔虫か……
最初からアランは眼中にもなかったんだ。
僕がドン引きしていると、カリナ様がにっこり笑いながら言う。
「サーラの言う通りよ。ありがとう。だから今日は食べたい放題よ」
「……いいですか?」
「もちろん」
「では……お言葉に甘えて」
20分後
「ぷりゅ!!ぷりゅりゅん!!!んんんんん!!!!んんんんんん!!!」
僕が許可するや否や、ぷるんくんはとんでもない量の料理をものの数秒で平らげては満足げに体を震えさせる。
店員が追加の料理を持ってくると、ぷるんくんはジャンプをし、それらも食べてゆく。
「見て見て!あのスライム、すごい食べるぞ……」
「あんなにちっこいのに、嘘だろ……」
「それはそうと、あのお方ってメディチ家の一人娘、カリナ様じゃないの?」
「すごい光景だ……」
店員、お客はぷるんくんの食べっぷりをみて、ドン引きしている。
カリナ様とサーラさんは口をぽかんと開けて、出された料理をとんでもないスピードで食べてゆくぷるんくんをただただ見つめていた。
「うちのぷるんくんがすみません!やっぱり食べすぎますよね……すみません……すみません……」
僕は頭を下げて謝る。
そしたら、カリナ様の当惑する顔は、笑顔に変わった。
「いいの。ぷるんくんも努力したからね。努力したものが報われる。いい話じゃない!今日は金匠手形で払うわよ!!」
「……」
やっぱりカリナ様には頭が上がらない。
けれど、
彼女の言葉を聞いて、僕は謎の違和感を感じざるを得なかった。
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