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カリナはモジモジする

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 闘技場から出ようとしたら、ルアナ先生は明日の昼休みに職員室へ来るようにと言われた。

 アランの処分を含んで僕に話があるようだ。
 
 僕は頷いて、ぷるんくんを抱え、カリナ様の後ろ目掛けて早足で歩く。

 闘技場の観覧席に座っているみんなの視線が僕たちの方へ集まった。

 花で飾られている道を通ると、正門が出てきた。

 そこにはとても高そうな一台の馬車が鎮座しており、隣には片眼鏡をかけた執事姿の老人がいた。
 
 百戦錬磨を彷彿とさせる顔には貫禄があり、ちょっとした隙も見せていない。

 僕はこの男を知っている。
 
 メディチ家の執事長であるセバスチャンさんだ。

 彼は毎日のようにカリナ様とサーラさんをこの学院に連れてきているのだ。

 一度も話したことはないから余計に緊張してしまう。

「カリナお嬢様、今日もお疲れ様です」

 と、礼儀正しく、頭を下げるセバスチャンさん。

 そして、頭を上げた彼は僕とぷるんくんを見つめてくる。

 なんだか詮索される気分だから、心許ない。

 僕が作り笑いをしたら、カリナ様がセバスチャンさんを見て、とても明るく笑いながら
、つやのある口を動かす。

「ありがとうございます。今日はここにいるレオくん、そして使い魔のぷるんくんと食事をする予定なので、かかりつけのレストランまでお願いできますか?」
「お嬢様……」

 言われたセバスチャンさんは目を丸くした。

 戸惑いながら彼は僕とぷるんくんを見つめて

「まかさ、勝ったのですか?」
 
 勝ったとは、アランとの勝負のことだろう。

 セバスチャンさんも決闘のことを知っていたとは。

 僕は恥ずかしそうにこくりと顔を頷かせた。

 すると、カリナ様がドヤ顔をして力説する。

「はい!アランさんは完膚なきまでに叩きのめされました。完全敗北です」
「……そうですか。このスライムが……」
 
 セバスチャンは僕の腕に収まっているぷるんくんを不思議そうに見つめる。

 カリナ様はそんなセバスチャンさんの前に立って、嬉しそうに頬を緩めて言う。

「今日はそのためのお祝いです。ふふ」
「……」
「ん?セバスチャン?どうしたんですか?」

 戦慄の表情を浮かべるセバスチャンにカリナ様は小首を傾げて問いかけた。

「そ、それは……お嬢様がこんなに明るい顔をされるのは久しぶりだと思いまして」
「え?そ、そうなんですか?ん……」
 
 セバスチャンさんに言われて戸惑うカリナ様は頬を薄いピンク色に染めて、もじもじしている。

いつもは冷静で、品があり、お淑やかで話し掛けづらい印象がある。

 学院での彼女をずっと見てきたから、こんなギャップを見せらたら、つい可愛いと思ってしまいそうだ。

 柄にもなくそんなこと考えてしまった。

 すると、カリナ様の隣にいる専属メイドのサーラさんが紫色の瞳でカリナ様を捉えて落ち着いた声音で言った。

「普段もこんなふうに明るく振る舞ったら、もっとお美しんでしょうに」

 と、少し残念そうにため息をつくが、目は少し笑っている。
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