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現実を知るアラン

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 ウルはAランクのモンスターになったのだ。

 生徒の中でウルを倒せる者はいない。

 アランは身動きできないほどのダメージを受けている。

 このままだとまずい。

 僕はぷるんくんに命令する。

「ぷるんくん、ウルを抑えて」
「ぷりゅん!」
  
 僕の隣にいるぷるんくんは頭を縦に振って、ウルの方へ這っていく。
 
 ぷるんくんは手を生えさせ落ちている小石を拾い、それをウルの頭に投げつけた。

 すると、ウルが後ろを振り向いてぷるんくんを見つめる。

「がああ……があああああ!!!」

 理性を完全に失ったウルは早速ぷるんくんの方へ突撃した。

 6メートルを悠に超えるジャイアントウルフと40センチ弱のちっこいぷるんくん。

 ウルはツノを光らせ、ぷるんくんへと凄まじいスピードで走って、そのままぷるんくんへ体当たりした。

 だが、

「ぷるん!」

 ぷるんくんは片手を使い、防御幕を張ってそれを片手で防いで見せた。

 衝撃派は辺りを包み込み、砂埃が巻き上がる。

 すると

 ウルのツノを抑えているぷるんくんの手から光が生じ、ウルは勢いよく飛ばされてゆく。

 鑑定で確認すると『スライム弾丸(最上)威力弱め』だった。
 
「があああっ!!」

 40センチ弱のスライムが放ったちっこい弾丸を食らって壁に突き刺さるウル。
 
 ぷるんくんはそんなウルに狙いを定めて、手を伸ばした。

「ぷるっ!」

 ぷるんくんはもう一発スライム弾丸を飛ばす。

 ウルはぷるんくんの攻撃に気が付き、避けようとしたが、

 スライム弾丸は途中曲がりながらウルの体に当たる。

 体が一瞬凹みながらウルはまた壁に突き刺さる。

 ウルの動きの全てはぷるんくんに読まれている。

「あ、ありえない……ウルがあんな小さなスライムなんかに……っ!」

 絶望するアラン。

 ぷるんくんはスライム弾丸で攻撃を続けた。

「があああっ!!あああ!!」

 逃げようとしても、ぷるんくんのスライム弾丸は例外なくウルの体に的中する。

 ただ単に弾丸をぶっ放す訳ではない。

 一発一発が緻密に計算し尽くされた軌道を描いているんだ。

 まるで百戦錬磨を彷彿とさせるスライムである。

 しかし、

「ガルルル!!!」

 ウルは諦めることなく、立ち上がってぷるんくんを威嚇する。

 ウルの目は赤く充血していて、理性という要素がこれっぽちも見当たらない。

 ただありとあらゆるものを破壊したいと、物語っているような瞳だ。

 狂気と混沌。
 
 この二つの単語が今のウルの状態を最も的確に表現しているといえよう。

 ぷるんくんはそんなウルのところへジャンプをした。
 
 そして、ウルのお腹目掛けて体当たりする。

「ぷりゅん!!」
「ガッ!」

 レッドドラゴンの時を思い出させるほどぷるんくんの体当たりは凄まじかった。

 ぷるんくんは、

 体当たりを使って、ウルを一方的にぶん殴り始める。

「ぷりゅ!」
「ア!」
「ぷりゅりゅん!!」
「オ!!」
「プリュウウウウウン!!!」
「っ!」
 
 見るに耐えない光景。

 40センチ弱のスライムの攻撃に6メートル超のジャイアントウルフは抵抗できず、そのままぷるんくんのサンドバッグと化す。

「ウル……ウル……やめろ。このままだとウルが死んじゃう!」

 身体中傷だらけのアランはウルを一方的に殴っているぷるんくんを見て叫ぶ。

 しかし、

 ぷるんくんは遠慮することなく、ウルを殴り続ける。

「ぷりゅうううう!!!!」
「キャッ!!」

 だんだん動きが鈍くなるガル。

「やめてくれよ……ウルが苦しんでんだろ……やめろ!!」

 アランの虚しい叫び声がこだまするが、ウルはというと、

「ワオオ……ワオオオオオ!!」

 ぷるんくんの強力な体当たりをたくさん受けたにも関わらず立ち上がり、鳴く。

 足はガクガク震えており、たてがみは乱れ、全体的に傷だらけだ。

 あられもない姿。

「ウル!あのスライムを攻撃すんな!っ!」
 
 と、アランがウルに命令してから、ウルによってできたお腹の傷を抑える。

 僕はそんなアランに、冷めた表情で言い放つ。

「お前はもうウルの主《あるじ》でもなんでもない。だから、お前の言葉なんか聞かないんだ」
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