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失われた気持ち1

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「ガッ!……」

 謎の奇声をあげたのち、

 白目を剥いて泡を吹きながら倒れた。

 倒れた後のウルは、全身を痙攣させながらおしっこを漏らしている。

「「「っ!?」」」

 この光景を見て、客席にどよめきが走る。

「な、なんだ!?」
「ウルが倒れた!?」
「一体なんのことだ!?」
「あのスライム、ウルくんに何をしたんだよ!?」
 
 動揺しているのは観客だけでなく、アランも。

「あ?なんだ!?ウル!」

 全身痙攣状態のウルの姿にアランは小首を傾げる。
 
 けれど、ウルの様子に変わりはない。

「ガアア……」

 ウルは何かを非常に恐れているようだ。

 瀕死状態と言っても過言ではないだろう。

「まさか……こんなに凄まじい威力だとは……」

 僕は口を半開きにして、ウルを睨むぷるんくんを見つめる。

 そう。

 何を隠そう。

 ウルがあんな状態になったのは、ぷるんくんのかけたスキルが原因だ。

『ぷるんくん、いくら決闘だからといって、アランとウルを殺しちゃダメだよ!』
『ぷりゅん……』
『でも、アランに勝つためにはそれなりの戦術は必要かも』

 今朝、ヤキトリを食べ終えたぷるんくんに決闘に向けて話し合っていた時、僕は閃いた。

『もしかして、僕の立てた仮説が正しいのであれば……ぷるんくん!』
『ん?』
『死神の恐怖だ』

 そう。

 死神の恐怖。
 
 闇属性の最上位スキルで、死神の恐怖にかかった対象は、死の恐怖を感じる事になる。

 僕は威力を最大限弱めてウルにかけるよう命令したのだ。

 けれど、

 威力を弱めてもあの様だとは……

 僕が驚いていると、何もわからないアランが鼻息を荒げて捲し立てる。

「おい、ウル!悪戯にしては度がすぎてるぞ」
「ガアア……」 

 パニック状態のウル。

「何やってんだ……」

 アランは握り拳を作ってさらに畳み掛けるように言う。

「なにやってんだよって聞いてんだろ!!!オラああ!!」
「ガア……」

 息もできないウルにやつは容赦無く、

 まるで狂ったように唾を吐きながら、叫び散らかす。

「こんなクソ弱い連中相手に醜態を晒して……立ち上がれ!!!早く、立ち上がれえええ!!!」

 小皺が増えた彼の顔。

「主《あるじ》の声が聞こえねーのかよおお!!!クッソがあ!!」

 アランの叫びに観客席はシーンと静まり返る。

 いくら自分の使い魔だからといって、これはあんまりだ。

「やりすぎだ。ウルは戦闘ができる状態じゃない。遺伝子レベルでぷるんくんを恐れているんだ。早く降参しろ」
 
 と、僕がいうも、

「クソ平民は黙れえええ!!ウル!!立ち上がれ!!この俺に恥をかかせるつもりか!?」

 聞く耳を持たないアランはウルを責め立てる。

 すると、

「ガアア……」

 いまだにパニック状態のウルが力を振り絞って立ち上がり、主であるアランのところへ歩いてきた。

 そんなウルの姿を見たアランは、卑劣な笑い方をしながら言う。

「よくできた。さあ、早く二人を始末しろ!!今すぐ!」

 と、アランは興奮気味に言うが、
 
 ウルは

「……」

 アランの後ろに隠れて全身を震わせた。

 戦意を完全に失ったウルだが、アランは何かに取り憑かれたように息巻いて


 

「キャッ!」
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