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格好いい姿を見せたかった

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 それからというもの、僕は凄まじい勢いでヤキトリを作ってゆく。
 
 焼いてはぷるんくんに与え、焼いてはぷるんくんに与えを延々と繰り返した結果、

「ぷりゅん……」

 目を瞑って炭火の横で寛いでいるぷるんくん。

 とても満足そうな顔のぷるんくんを見ていると、重労働による疲れも吹き飛ぶ。

 結構冷えているはずだが、僕の心は目の前の炭火のように暖かい。

 一つ大事な任務を終えた。

 一段落ついた僕。

「……」

 人間は不思議なもので、落ち着いた途端、心の奥底に打ち捨てていた悩みが鮮やかに浮かんでくる。

 明日はアランとの決闘がある。

 もちろん負けるつもりはない。

 けれど、

 僕を一年近くいじめていたあくどいやつだ。

 そんな長きにわたる理不尽な秩序が変わろうとする。

 そこからくる違和感と緊張が未知の恐怖と化し、僕を苦しめる。

 恐怖……

 いや、

 これは恐怖なんかじゃない。

 怒りだ。

 やつはぷるんくんを侮辱したんだ。

 灰色の僕の心に彩りを加えたぷるんくん。

 僕との約束を守ってくれたぷるんくん。

 だから、

 だから……

 やつを許すことはできない。

 ぷるんくんは生ゴミなんかじゃない。

 かわいくて、強くて、とても優しいちっこいスライムだ。

 アランよ、自分の罪とがを言葉と行動を以て悔い改めないと、お前に救いはない。

「ぷるん?」

 顔を顰めて怒りを募らせる僕にぷるんくんが心配そうに見つめる。

「ぷるんくん……」

 幽玄な炭火に照らされたぷるんくん。

 この子の顔を見ていると、怒りという感情がなくなり、代わりに罪悪感が僕の心を締め付ける。

 恥ずかしい気持ちもあるが、僕は自分の胸の内を打ち明けることにした。

「ぷるんくん、ごめんよ。僕にテイムされてからまだあまり経ってないのに、決闘なんかして……」
「……」

 体育座りの僕は向かいに座っているぷるんくんに語る。

「もっと格好いい姿、見せたかったのに……めっちゃ格好悪いところばっか見せちゃって……」

 そう。

 金欠だったり、いじめられたり、強くなかったり……

 本当に、惨めだ。

 僕は唇を噛み締め、体育座りして突っ伏した。

 しばしの時が経つ。

 虫の鳴き声、炭火の爆跳、差し込む月光、
 
 そして、

 左胸に伝わる柔らかい感覚。

「……」

 ぷるんくんは無言のまま僕の左胸に引っ付いた状態で目を瞑る。

 そういえば、
 
 ぷるんくんが小さかった頃も、こうやって僕の左胸に登ってきて安らいでたな。

 小さいぷるんくんも、大きいくなったぷるんくんも、

 同じぷるんくんだ。

 僕はぷるんくんを抱えたまま立ち上がる。

「一緒に寝ようか」
「ぷりゅん」

 僕は寝巻きに着替え、ぷるんくんとベッドに潜る。
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