44 / 95
格好いい姿を見せたかった
しおりを挟む
それからというもの、僕は凄まじい勢いでヤキトリを作ってゆく。
焼いてはぷるんくんに与え、焼いてはぷるんくんに与えを延々と繰り返した結果、
「ぷりゅん……」
目を瞑って炭火の横で寛いでいるぷるんくん。
とても満足そうな顔のぷるんくんを見ていると、重労働による疲れも吹き飛ぶ。
結構冷えているはずだが、僕の心は目の前の炭火のように暖かい。
一つ大事な任務を終えた。
一段落ついた僕。
「……」
人間は不思議なもので、落ち着いた途端、心の奥底に打ち捨てていた悩みが鮮やかに浮かんでくる。
明日はアランとの決闘がある。
もちろん負けるつもりはない。
けれど、
僕を一年近くいじめていたあくどいやつだ。
そんな長きにわたる理不尽な秩序が変わろうとする。
そこからくる違和感と緊張が未知の恐怖と化し、僕を苦しめる。
恐怖……
いや、
これは恐怖なんかじゃない。
怒りだ。
やつはぷるんくんを侮辱したんだ。
灰色の僕の心に彩りを加えたぷるんくん。
僕との約束を守ってくれたぷるんくん。
だから、
だから……
やつを許すことはできない。
ぷるんくんは生ゴミなんかじゃない。
かわいくて、強くて、とても優しいちっこいスライムだ。
アランよ、自分の罪とがを言葉と行動を以て悔い改めないと、お前に救いはない。
「ぷるん?」
顔を顰めて怒りを募らせる僕にぷるんくんが心配そうに見つめる。
「ぷるんくん……」
幽玄な炭火に照らされたぷるんくん。
この子の顔を見ていると、怒りという感情がなくなり、代わりに罪悪感が僕の心を締め付ける。
恥ずかしい気持ちもあるが、僕は自分の胸の内を打ち明けることにした。
「ぷるんくん、ごめんよ。僕にテイムされてからまだあまり経ってないのに、決闘なんかして……」
「……」
体育座りの僕は向かいに座っているぷるんくんに語る。
「もっと格好いい姿、見せたかったのに……めっちゃ格好悪いところばっか見せちゃって……」
そう。
金欠だったり、いじめられたり、強くなかったり……
本当に、惨めだ。
僕は唇を噛み締め、体育座りして突っ伏した。
しばしの時が経つ。
虫の鳴き声、炭火の爆跳、差し込む月光、
そして、
左胸に伝わる柔らかい感覚。
「……」
ぷるんくんは無言のまま僕の左胸に引っ付いた状態で目を瞑る。
そういえば、
ぷるんくんが小さかった頃も、こうやって僕の左胸に登ってきて安らいでたな。
小さいぷるんくんも、大きいくなったぷるんくんも、
同じぷるんくんだ。
僕はぷるんくんを抱えたまま立ち上がる。
「一緒に寝ようか」
「ぷりゅん」
僕は寝巻きに着替え、ぷるんくんとベッドに潜る。
焼いてはぷるんくんに与え、焼いてはぷるんくんに与えを延々と繰り返した結果、
「ぷりゅん……」
目を瞑って炭火の横で寛いでいるぷるんくん。
とても満足そうな顔のぷるんくんを見ていると、重労働による疲れも吹き飛ぶ。
結構冷えているはずだが、僕の心は目の前の炭火のように暖かい。
一つ大事な任務を終えた。
一段落ついた僕。
「……」
人間は不思議なもので、落ち着いた途端、心の奥底に打ち捨てていた悩みが鮮やかに浮かんでくる。
明日はアランとの決闘がある。
もちろん負けるつもりはない。
けれど、
僕を一年近くいじめていたあくどいやつだ。
そんな長きにわたる理不尽な秩序が変わろうとする。
そこからくる違和感と緊張が未知の恐怖と化し、僕を苦しめる。
恐怖……
いや、
これは恐怖なんかじゃない。
怒りだ。
やつはぷるんくんを侮辱したんだ。
灰色の僕の心に彩りを加えたぷるんくん。
僕との約束を守ってくれたぷるんくん。
だから、
だから……
やつを許すことはできない。
ぷるんくんは生ゴミなんかじゃない。
かわいくて、強くて、とても優しいちっこいスライムだ。
アランよ、自分の罪とがを言葉と行動を以て悔い改めないと、お前に救いはない。
「ぷるん?」
顔を顰めて怒りを募らせる僕にぷるんくんが心配そうに見つめる。
「ぷるんくん……」
幽玄な炭火に照らされたぷるんくん。
この子の顔を見ていると、怒りという感情がなくなり、代わりに罪悪感が僕の心を締め付ける。
恥ずかしい気持ちもあるが、僕は自分の胸の内を打ち明けることにした。
「ぷるんくん、ごめんよ。僕にテイムされてからまだあまり経ってないのに、決闘なんかして……」
「……」
体育座りの僕は向かいに座っているぷるんくんに語る。
「もっと格好いい姿、見せたかったのに……めっちゃ格好悪いところばっか見せちゃって……」
そう。
金欠だったり、いじめられたり、強くなかったり……
本当に、惨めだ。
僕は唇を噛み締め、体育座りして突っ伏した。
しばしの時が経つ。
虫の鳴き声、炭火の爆跳、差し込む月光、
そして、
左胸に伝わる柔らかい感覚。
「……」
ぷるんくんは無言のまま僕の左胸に引っ付いた状態で目を瞑る。
そういえば、
ぷるんくんが小さかった頃も、こうやって僕の左胸に登ってきて安らいでたな。
小さいぷるんくんも、大きいくなったぷるんくんも、
同じぷるんくんだ。
僕はぷるんくんを抱えたまま立ち上がる。
「一緒に寝ようか」
「ぷりゅん」
僕は寝巻きに着替え、ぷるんくんとベッドに潜る。
1
お気に入りに追加
1,647
あなたにおすすめの小説
隠して忘れていたギフト『ステータスカスタム』で能力を魔改造 〜自由自在にカスタマイズしたら有り得ないほど最強になった俺〜
桜井正宗
ファンタジー
能力(スキル)を隠して、その事を忘れていた帝国出身の錬金術師スローンは、無能扱いで大手ギルド『クレセントムーン』を追放された。追放後、隠していた能力を思い出しスキルを習得すると『ステータスカスタム』が発現する。これは、自身や相手のステータスを魔改造【カスタム】できる最強の能力だった。
スローンは、偶然出会った『大聖女フィラ』と共にステータスをいじりまくって最強のステータスを手に入れる。その後、超高難易度のクエストを難なくクリア、無双しまくっていく。その噂が広がると元ギルドから戻って来いと頭を下げられるが、もう遅い。
真の仲間と共にスローンは、各地で暴れ回る。究極のスローライフを手に入れる為に。
特殊部隊の俺が転生すると、目の前で絶世の美人母娘が犯されそうで助けたら、とんでもないヤンデレ貴族だった
なるとし
ファンタジー
鷹取晴翔(たかとりはると)は陸上自衛隊のとある特殊部隊に所属している。だが、ある日、訓練の途中、不慮の事故に遭い、異世界に転生することとなる。
特殊部隊で使っていた武器や防具などを召喚できる特殊能力を謎の存在から授かり、目を開けたら、絶世の美女とも呼ばれる母娘が男たちによって犯されそうになっていた。
武装状態の鷹取晴翔は、持ち前の優秀な身体能力と武器を使い、その母娘と敷地にいる使用人たちを救う。
だけど、その母と娘二人は、
とおおおおんでもないヤンデレだった……
第3回次世代ファンタジーカップに出すために一部を修正して投稿したものです。
フリーター転生。公爵家に転生したけど継承権が低い件。精霊の加護(チート)を得たので、努力と知識と根性で公爵家当主へと成り上がる
SOU 5月17日10作同時連載開始❗❗
ファンタジー
400倍の魔力ってマジ!?魔力が多すぎて範囲攻撃魔法だけとか縛りでしょ
25歳子供部屋在住。彼女なし=年齢のフリーター・バンドマンはある日理不尽にも、バンドリーダでボーカルからクビを宣告され、反論を述べる間もなくガッチャ切りされそんな失意のか、理不尽に言い渡された残業中に急死してしまう。
目が覚めると俺は広大な領地を有するノーフォーク公爵家の長男の息子ユーサー・フォン・ハワードに転生していた。
ユーサーは一度目の人生の漠然とした目標であった『有名になりたい』他人から好かれ、知られる何者かになりたかった。と言う目標を再認識し、二度目の生を悔いの無いように、全力で生きる事を誓うのであった。
しかし、俺が公爵になるためには父の兄弟である次男、三男の息子。つまり従妹達と争う事になってしまい。
ユーサーは富国強兵を掲げ、先ずは小さな事から始めるのであった。
そんな主人公のゆったり成長期!!
引きこもり転生エルフ、仕方なく旅に出る
Greis
ファンタジー
旧題:引きこもり転生エルフ、強制的に旅に出される
・2021/10/29 第14回ファンタジー小説大賞 奨励賞 こちらの賞をアルファポリス様から頂く事が出来ました。
実家暮らし、25歳のぽっちゃり会社員の俺は、日ごろの不摂生がたたり、読書中に死亡。転生先は、剣と魔法の世界の一種族、エルフだ。一分一秒も無駄にできない前世に比べると、だいぶのんびりしている今世の生活の方が、自分に合っていた。次第に、兄や姉、友人などが、見分のために外に出ていくのを見送る俺を、心配しだす両親や師匠たち。そしてついに、(強制的に)旅に出ることになりました。
※のんびり進むので、戦闘に関しては、話数が進んでからになりますので、ご注意ください。
異世界転生!俺はここで生きていく
おとなのふりかけ紅鮭
ファンタジー
俺の名前は長瀬達也。特に特徴のない、その辺の高校生男子だ。
同じクラスの女の子に恋をしているが、告白も出来ずにいるチキン野郎である。
今日も部活の朝練に向かう為朝も早くに家を出た。
だけど、俺は朝練に向かう途中で事故にあってしまう。
意識を失った後、目覚めたらそこは俺の知らない世界だった!
魔法あり、剣あり、ドラゴンあり!のまさに小説で読んだファンタジーの世界。
俺はそんな世界で冒険者として生きて行く事になる、はずだったのだが、何やら色々と問題が起きそうな世界だったようだ。
それでも俺は楽しくこの新しい生を歩んで行くのだ!
小説家になろうでも投稿しています。
メインはあちらですが、こちらも同じように投稿していきます。
宜しくお願いします。
異世界ソロ暮らし 田舎の家ごと山奥に転生したので、自由気ままなスローライフ始めました。
長尾 隆生
ファンタジー
【書籍情報】書籍2巻発売中ですのでよろしくお願いします。
女神様の手違いにより現世の輪廻転生から外され異世界に転生させられた田中拓海。
お詫びに貰った生産型スキル『緑の手』と『野菜の種』で異世界スローライフを目指したが、お腹が空いて、なにげなく食べた『種』の力によって女神様も予想しなかった力を知らずに手に入れてしまう。
のんびりスローライフを目指していた拓海だったが、『その地には居るはずがない魔物』に襲われた少女を助けた事でその計画の歯車は狂っていく。
ドワーフ、エルフ、獣人、人間族……そして竜族。
拓海は立ちはだかるその壁を拳一つでぶち壊し、理想のスローライフを目指すのだった。
中二心溢れる剣と魔法の世界で、徒手空拳のみで戦う男の成り上がりファンタジー開幕。
旧題:チートの種~知らない間に異世界最強になってスローライフ~
集団転移した商社マン ネットスキルでスローライフしたいです!
七転び早起き
ファンタジー
「望む3つのスキルを付与してあげる」
その天使の言葉は善意からなのか?
異世界に転移する人達は何を選び、何を求めるのか?
そして主人公が○○○が欲しくて望んだスキルの1つがネットスキル。
ただし、その扱いが難しいものだった。
転移者の仲間達、そして新たに出会った仲間達と異世界を駆け巡る物語です。
基本は面白くですが、シリアスも顔を覗かせます。猫ミミ、孤児院、幼女など定番物が登場します。
○○○「これは私とのラブストーリーなの!」
主人公「いや、それは違うな」
無能スキルと言われ追放されたが実は防御無視の最強スキルだった
さくらはい
ファンタジー
主人公の不動颯太は勇者としてクラスメイト達と共に異世界に召喚された。だが、【アスポート】という使えないスキルを獲得してしまったばかりに、一人だけ城を追放されてしまった。この【アスポート】は対象物を1mだけ瞬間移動させるという単純な効果を持つが、実はどんな物質でも一撃で破壊できる攻撃特化超火力スキルだったのだ――
【不定期更新】
1話あたり2000~3000文字くらいで短めです。
性的な表現はありませんが、ややグロテスクな表現や過激な思想が含まれます。
良ければ感想ください。誤字脱字誤用報告も歓迎です。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる