上 下
42 / 95

ヤキトリを作るぞ2

しおりを挟む
 悠に数百個は超えてるぞ……

 僕は薪を落とした。

 そしたら作業に集中しているぷるんくんが「っ!?」と目を丸くして僕を見上げてくる。

「冷えてきたし、炭火もほしいからな。この木燃やせる?」
「ぷるるるん!!」
 
『朝飯前!』と言っているようにドヤ顔を浮かべる。

 ぷるんくんは、串を作る作業を止め、積まれている薪木に手を伸ばした。

 すると、薪木の真ん中から赤く光って行き、ものの数秒で薪は炭火へと姿を変える。

「……」

 普通、薪木が炭火になるためには数分から数十分ほどがかかるが、ぷるんくんの使ったスキルによって、あっという間に炭火になったのだ。

 これは鑑定を使わずにはいられない。

「鑑定……」

ーーーー

インサイドフレイム(SS級)

火属性最上級魔法

説明:対象を内側から燃やすことができる。SS級であるため、その熱は太陽をも凌駕する。

ーーーー


「た、太陽をも凌駕するほどの熱さか……」

 開いた口が塞がらなかった。

 おそらくほとんどの冒険者や貴族やモンスターがこのインサイドフレイム(SS級)を食らったら、一瞬にして灰燼《はいじん》に帰すのだろう。
 
 外見はぷるんぷるんしているが、中身は百戦錬磨の強者。

「……」

 僕は唇噛み締めて、左胸を右手で強く掴んだ。

 が、やがて頬を緩めてぷるんくんの頭を優しくなでなでする。

「ありがとな!ぷるんくんのおかげで作業時間がグッと減りそうだよ!」
「んんんん!!」

 何ネガティブな考えしてんだ。

『おい、レオ!なにしけた顔してんだ』

 この前のケルが僕にカツを入れた時の言葉が蘇る。
 
 そうだ!

 僕はぷるんくんの主《あるじ》だ!

 ぷるんくんがこれまで頑張ってくれたように、僕もこれから頑張ればいいだけの話だ!

 気合入れろよ!

 オオオオオオ……

 オオオオオオオオオ……

 オオオオオオオオオオオオオオオ!!!!!!!!

 僕はぷるんくんを高く持ち上げた。

「ん!?」

 驚いたぷるんくんは、興奮している僕を見て冷や汗をかくようだ。

「ぷるんくん、これから本気で行くからな!」
「……」

 僕はぷるんくんを抱えたまま串と、炭火を収納ボックスに入れてからキッチンへといく。

 まずはタレにとろみが出るまで鍋を熱してから、串打ちだ。

 ぷるんくんは一食あたり、100人前くらいを食べる健啖家だ。

 気が遠くなるほどの量だが、使

 僕は必死に串打ち作業を進める。

 手と腕がとても痛いけど、ぷるんくんがお腹いっぱいになって満足している姿を想像すると、力が漲ってきた。

「オオオオオオオオオ!!!!!行くぞオオオオオオ!!」
「……」

(レオの勢いに圧倒されて冷や汗をかくぷるんくん)

 ある程度串打ち作業が終われば、外に行って炭火で焼く焼く!

 片手に串25本、両手50本だ!!
 
 時々、タレをつけることを忘れない!!!

「んんんんん……んんんんんん……んんんんんんん……」

 大人しかったぷるんくんも炭火で焼かれるヤキトリの匂いに涎を垂らしている。

 ぷるんくん、そんなに美味しそうに見つめたら、僕まで食べたくなるじゃないか。

 僕の必死な作業の末、やっと焦げ目のついたヤキトリが出来上がった。
しおりを挟む

あなたにおすすめの小説

異世界転移したけど、果物食い続けてたら無敵になってた

甘党羊
ファンタジー
唐突に異世界に飛ばされてしまった主人公。 降り立った場所は周囲に生物の居ない不思議な森の中、訳がわからない状況で自身の能力などを確認していく。 森の中で引きこもりながら自身の持っていた能力と、周囲の環境を上手く利用してどんどん成長していく。 その中で試した能力により出会った最愛のわんこと共に、周囲に他の人間が居ない自分の住みやすい地を求めてボヤきながら異世界を旅していく物語。 協力関係となった者とバカをやったり、敵には情け容赦なく立ち回ったり、飯や甘い物に並々ならぬ情熱を見せたりしながら、ゆっくり進んでいきます。

没落した建築系お嬢様の優雅なスローライフ~地方でモフモフと楽しい仲間とのんびり楽しく生きます~

土偶の友
ファンタジー
優雅な貴族令嬢を目指していたクレア・フィレイア。 しかし、15歳の誕生日を前に両親から没落を宣言されてしまう。 そのショックで日本の知識を思いだし、ブラック企業で働いていた記憶からスローライフをしたいと気付いた。 両親に勧められた場所に逃げ、そこで楽しいモフモフの仲間と家を建てる。 女の子たちと出会い仲良くなって一緒に住む、のんびり緩い異世界生活。

田舎暮らしと思ったら、異世界暮らしだった。

けむし
ファンタジー
突然の異世界転移とともに魔法が使えるようになった青年の、ほぼ手に汗握らない物語。 日本と異世界を行き来する転移魔法、物を複製する魔法。 あらゆる魔法を使えるようになった主人公は異世界で、そして日本でチート能力を発揮・・・するの? ゆる~くのんびり進む物語です。読者の皆様ものんびりお付き合いください。 感想などお待ちしております。

ごめんみんな先に異世界行ってるよ1年後また会おう

味噌汁食べれる
ファンタジー
主人公佐藤 翔太はクラスみんなより1年も早く異世界に、行ってしまう。みんなよりも1年早く異世界に行ってしまうそして転移場所は、世界樹で最強スキルを実でゲット?スキルを奪いながら最強へ、そして勇者召喚、それは、クラスのみんなだった。クラスのみんなが頑張っているときに、主人公は、自由気ままに生きていく

せっかくのクラス転移だけども、俺はポテトチップスでも食べながらクラスメイトの冒険を見守りたいと思います

霖空
ファンタジー
クラス転移に巻き込まれてしまった主人公。 得た能力は悪くない……いや、むしろ、チートじみたものだった。 しかしながら、それ以上のデメリットもあり……。 傍観者にならざるをえない彼が傍観者するお話です。 基本的に、勇者や、影井くんを見守りつつ、ほのぼの?生活していきます。 が、そのうち、彼自身の物語も始まる予定です。

フリーター転生。公爵家に転生したけど継承権が低い件。精霊の加護(チート)を得たので、努力と知識と根性で公爵家当主へと成り上がる 

SOU 5月17日10作同時連載開始❗❗
ファンタジー
400倍の魔力ってマジ!?魔力が多すぎて範囲攻撃魔法だけとか縛りでしょ 25歳子供部屋在住。彼女なし=年齢のフリーター・バンドマンはある日理不尽にも、バンドリーダでボーカルからクビを宣告され、反論を述べる間もなくガッチャ切りされそんな失意のか、理不尽に言い渡された残業中に急死してしまう。  目が覚めると俺は広大な領地を有するノーフォーク公爵家の長男の息子ユーサー・フォン・ハワードに転生していた。 ユーサーは一度目の人生の漠然とした目標であった『有名になりたい』他人から好かれ、知られる何者かになりたかった。と言う目標を再認識し、二度目の生を悔いの無いように、全力で生きる事を誓うのであった。 しかし、俺が公爵になるためには父の兄弟である次男、三男の息子。つまり従妹達と争う事になってしまい。 ユーサーは富国強兵を掲げ、先ずは小さな事から始めるのであった。 そんな主人公のゆったり成長期!!

悠々自適な転生冒険者ライフ ~実力がバレると面倒だから周りのみんなにはナイショです~

こばやん2号
ファンタジー
とある大学に通う22歳の大学生である日比野秋雨は、通学途中にある工事現場の事故に巻き込まれてあっけなく死んでしまう。 それを不憫に思った女神が、異世界で生き返る権利と異世界転生定番のチート能力を与えてくれた。 かつて生きていた世界で趣味で読んでいた小説の知識から、自分の実力がバレてしまうと面倒事に巻き込まれると思った彼は、自身の実力を隠したまま自由気ままな冒険者をすることにした。 果たして彼の二度目の人生はうまくいくのか? そして彼は自分の実力を隠したまま平和な異世界生活をおくれるのか!? ※この作品はアルファポリス、小説家になろうの両サイトで同時配信しております。

孤児院で育った俺、ある日目覚めたスキル、万物を見通す目と共に最強へと成りあがる

シア07
ファンタジー
主人公、ファクトは親の顔も知らない孤児だった。 そんな彼は孤児院で育って10年が経った頃、突如として能力が目覚める。 なんでも見通せるという万物を見通す目だった。 目で見れば材料や相手の能力がわかるというものだった。 これは、この――能力は一体……なんなんだぁぁぁぁぁぁぁ!? その能力に振り回されながらも孤児院が魔獣の到来によってなくなり、同じ孤児院育ちで幼馴染であるミクと共に旅に出ることにした。 魔法、スキルなんでもあるこの世界で今、孤児院で育った彼が個性豊かな仲間と共に最強へと成りあがる物語が今、幕を開ける。 ※他サイトでも連載しています。  大体21:30分ごろに更新してます。

処理中です...