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砂糖売りの女の子と謎めいた老人
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「エルフ近隣地域で採れたミツレモンが安いんよ!一個当たり銅貨40枚!」
「持ってけ泥棒!!今ならライデン村で採れたトマトが破格の値段だぜ!」
「イラス帝国産の最上級じゃがいももあるで!!他にもイラス帝国産の野菜、いっぱいあるからどんとこい!早いもの勝ちだああ!!!」
僕の故郷・ライデン村で採れたトマトが出回るのか。
早いな。
あと、そろそろ小麦の収穫の時期がやってくる。
そしたら、ライデン村の小麦の味が堪能できるわけだ。
しかし、一つ気になる。
「イラス帝国産か……」
僕は目を細めながら、イラス王国産の青果物を売り捌く商人を見つめる。
それからと言うもの、僕はぷるんくんと共に市場を回りながら野菜や果物などの値段を調べた。
だが、
どれも値段が高く、大量かつ安価で買うことの出来る野菜と果物は見つからずだった。
肉と小麦粉ばかりでなく、野菜と果物をぷるんくんに与えて、より栄誉バランスの採れた食事を堪能して欲しかったが……
まあ、銅貨60枚だけだと買えないのも当然といっちゃ当然か。
と、落ち込みながら僕の胸にくっついているぷるんくんを見つめる僕。
ぷるんくんは、道ゆく人々や建物などを興味深く見ては、僕の左胸により強く引っ付き、また人々を見つめては、僕の左胸に強く引っ付くを繰り返している。
ギルド会館に向かい、今すぐにでもレッドドラゴンの鱗やツノなどを売りたい気分だが、一介のFランクの魔法使いがそんな大それたことをしてしまうと、疑われて捕まってしまう。
ため息をつく僕。
すると、
「さあ、ラオデキヤ王国のみなさん、イラス帝国の上級砂糖が安いんですわよ!今日はランチング初日ということで、砂糖5キロ当たり銅貨60枚ですわ!!はい!どうぞどうぞ!あっ!割り込んでくる人には売りませんから!ちょ、ちょっと!ちゃんと列を並びなさい!こら!しばきますわよ!!」
調味料エリアで砂糖を売っている少女が見える。
桃色の髪を三つ編みを二つに結んだ彼女。
服装は間違いなくイラス帝国の上位貴族が着ていそうなものだ。
なぜ、帝国の偉い方がこんなところに砂糖を売りに来たんだろう。
まあ、それは今の僕にとってそんなに大事ではない。
今重要なのは、
「ぷるんくん!!」
「っ!?ぷるん!?」
「砂糖を買いに行くぞおおお!」
と、息巻いて貴重な砂糖をほぼタダで売っている少女の店に突っ込んだ。
そしてしばし経つ。
「はああ……はああ……押し潰されて死ぬかと思った……ぷるんくんは大丈夫?」
「ぷりゅん!」
「よかった……」
元気溌溂なぷるんくんを見て胸を撫で下ろしていたら、僕のすぐそばで誰かが呟いた。
「世も末じゃの……一時《いっとき》はイラス帝国をもはるかに上回ると言われたラオデキヤ王国も今やイラス帝国を頼らないと成り立たなくなったとはの……栄華を極めたあの頃はもう幻の泡沫と化したのか。嗚呼……人生とは……歴史とは……かくも儚くも虚しいものか……」
長い白髪と白い髭を靡かせる老人が残念そうに砂糖を売っているお店を見てため息をついた。
「持ってけ泥棒!!今ならライデン村で採れたトマトが破格の値段だぜ!」
「イラス帝国産の最上級じゃがいももあるで!!他にもイラス帝国産の野菜、いっぱいあるからどんとこい!早いもの勝ちだああ!!!」
僕の故郷・ライデン村で採れたトマトが出回るのか。
早いな。
あと、そろそろ小麦の収穫の時期がやってくる。
そしたら、ライデン村の小麦の味が堪能できるわけだ。
しかし、一つ気になる。
「イラス帝国産か……」
僕は目を細めながら、イラス王国産の青果物を売り捌く商人を見つめる。
それからと言うもの、僕はぷるんくんと共に市場を回りながら野菜や果物などの値段を調べた。
だが、
どれも値段が高く、大量かつ安価で買うことの出来る野菜と果物は見つからずだった。
肉と小麦粉ばかりでなく、野菜と果物をぷるんくんに与えて、より栄誉バランスの採れた食事を堪能して欲しかったが……
まあ、銅貨60枚だけだと買えないのも当然といっちゃ当然か。
と、落ち込みながら僕の胸にくっついているぷるんくんを見つめる僕。
ぷるんくんは、道ゆく人々や建物などを興味深く見ては、僕の左胸により強く引っ付き、また人々を見つめては、僕の左胸に強く引っ付くを繰り返している。
ギルド会館に向かい、今すぐにでもレッドドラゴンの鱗やツノなどを売りたい気分だが、一介のFランクの魔法使いがそんな大それたことをしてしまうと、疑われて捕まってしまう。
ため息をつく僕。
すると、
「さあ、ラオデキヤ王国のみなさん、イラス帝国の上級砂糖が安いんですわよ!今日はランチング初日ということで、砂糖5キロ当たり銅貨60枚ですわ!!はい!どうぞどうぞ!あっ!割り込んでくる人には売りませんから!ちょ、ちょっと!ちゃんと列を並びなさい!こら!しばきますわよ!!」
調味料エリアで砂糖を売っている少女が見える。
桃色の髪を三つ編みを二つに結んだ彼女。
服装は間違いなくイラス帝国の上位貴族が着ていそうなものだ。
なぜ、帝国の偉い方がこんなところに砂糖を売りに来たんだろう。
まあ、それは今の僕にとってそんなに大事ではない。
今重要なのは、
「ぷるんくん!!」
「っ!?ぷるん!?」
「砂糖を買いに行くぞおおお!」
と、息巻いて貴重な砂糖をほぼタダで売っている少女の店に突っ込んだ。
そしてしばし経つ。
「はああ……はああ……押し潰されて死ぬかと思った……ぷるんくんは大丈夫?」
「ぷりゅん!」
「よかった……」
元気溌溂なぷるんくんを見て胸を撫で下ろしていたら、僕のすぐそばで誰かが呟いた。
「世も末じゃの……一時《いっとき》はイラス帝国をもはるかに上回ると言われたラオデキヤ王国も今やイラス帝国を頼らないと成り立たなくなったとはの……栄華を極めたあの頃はもう幻の泡沫と化したのか。嗚呼……人生とは……歴史とは……かくも儚くも虚しいものか……」
長い白髪と白い髭を靡かせる老人が残念そうに砂糖を売っているお店を見てため息をついた。
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