昔助けた弱々スライムが最強スライムになって僕に懐く件

決闘

　勢いよく壁にぶつかるぷるんくんは、あえなく地面に落ちる。

　アランはそんなぷるんくんを見て、感心したように呟く。

「へえ？まだ生きてるのかよ。お前と似てなかなかしぶといな。こりゃ、ウルのおもちゃにちょうどいい。うっへへ！」

　謝るどころか、ぷるんくんを自分の使い魔のおもちゃにしようとしているのか。

　そんな自分勝手なことは、絶対させない。

　それより、ぷるんくんの方が心配だ。

　なので、僕はぷるんくんに視線を向ける。

「ぷるるるるる……ぷるるるるるん……」

　ぷるんくんはアランを睨んで、体を震わせている。

　時折、僕の顔色を伺っては、アランに殺意のこもった眼差しを向けているのだ。

　そうか。

　ぷるんくんは我慢をしているのか。

『ぷるんくん、ここでは静かにしてくれよな』

　僕の命令に従っているんだ。
　　
　だとしたら、僕はそんなぷるんくんの誠意に応えなければならない。

　そう考えた僕は、アランに強く言い放つ。

「アラン、最後の警告だ。これ以上、ぷるんくんを侮辱したら、お前は恥をかくことになる。大人しくぷるんくんに謝れ」

　冷め切った面持ちの僕。

　けれど、

　アランは、また僕を馬鹿にしくさった感じ言う。

「弱いクソ平民が、偉そうに言ってんじゃねー！！！！」

　
　ゲシッ


　やつの足が僕のお腹に突き刺さるように当たってしまう。

「っ！」

　僕はやつの足に飛ばされてしまった。

　やつに殴られるのには慣れている。

　だから大丈夫だ。

　耐性はついている。

　けれど、


「ぷるるるるるん！！！！！」


　興奮状態のぷるんくんが、ジャンプをして、アランの方へ飛んだ。

　ぷるんくんは素早く手を生えさたと同時に、ちっこい右手に魔力を込める。

　すると、ぷるんくんの手が白く光り始めた。

　あれは……

　昨日、キングレッドドラゴンの尻尾を切った時に使っていた『超音波カッティング』。

　あの硬いキングレッドドラゴンの鱗を簡単に切断したほど強力なスキルだ。

　ぷるんくんの右手は、

　アランの左胸を狙っている。

　左胸の奥にはやつの心臓が脈を打っているのだ。

　つまり、

　ぷるんくんはアランの命そのものを絶とうとしている。

　いくらあいつが憎いからと言って、殺すのは間違っている。

　僕はアランを殺しにかかっているぷるんくんに命令した。

「ぷるんくん！ダメだ！やつを殺しちゃダメ！！」
「ぷるっ！？」

　僕の言葉を聞いたぷるんくん。

　ぷるんくんは、土属性のSS級スキルの超音波カッティングを止め、
　
　その代わりに

　アランのミゾオチに体当たりをする。

「おっ！」

　アランはというと、奇声をあげ、凄まじい勢いで飛ばされてゆく。

「ゲホ！！ゲホゲホ！！あっ！」
　
　息ができないアランは横になった状態で自分のお腹を抱え咳き込む。

　それと同時にやつの使い魔であるウルが窓から入ってきた。

「ガルルルル……」

　ウルは牙を剥き出しにして、今にも飛びかかりそうな形相だ。

　けれど、ぷるんくんはこれ以上の攻撃をするつもりはないらしく、倒れているアランと威嚇するガルを交互に見ているだけだった。

「あ……」

　やっと息ができるようになったアラン。

　昨日、ぷるんくんがキングレッドドラゴンにヒットさせた体当たりと比べると、威力は100万分の1、いや、1000万分の1ってところか。

　しかし、それでも結構なダメージが入ったはず。

　静かになったクラスの中で、アランの荒い息がやけにうるさい。

「ああ……ああ……」

　しばしたつと、アランは立ち上がった。
　
　みんな息を殺してアランを見つめる。

　やつは再び僕の方へ歩いてきた。

「ぷるるるるん……」

　ぷるんくんは、僕の前でアランを威嚇している。

　アランのやつは、

　僕を殺す勢いで睨め付け、

　自分のブレザーの内ポケットに手を突っ込み、真っ白な手袋を取り出しては、

　僕の方へ叩きつける。


「「「っ！！」」、」


　彼の見せた行為にクラスにいる全員が驚く。

「我が名はアラン・バロン。バロン伯爵家の長男でありハードウルフが使い魔の魔法使いだ。お前に決闘を申し込む。もし、反対したら、わかるよな」