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迫り来る脅威

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 ジャンプをして、僕の左胸に引っ付いた。
 
 僕は申し訳ない気持ちを紛らすべく、ぷるんくんの頭を優しくなでなでしてあげた。

 柔らかいが、ぷるんくんの体は震えている。

 ごめんよぷるんくん。

 もう、君に寂しい思いはさせない。

 僕は外を出た。

 だが、一つ問題がある。

 人にスライムと一緒にいるところを見られてしまったら、変に思われてしまいかねないのだ。
 
 スライムは最弱と言われている。

 もし、お節介な冒険者に見られたら、『何こんなの連れて行くんだい!』とカツを入れられ、注目の的になる可能性がある。

 だから僕はぷるんくんをカバンの中に入れることにした。

「ぷるんくん、不便じゃない?」
「ぷりゅん!」
「不便なら言ってね、いつでも出してあげるから」
「ぷるるるるん!!」

 どうやらカバンの中のぷるんくんは『大丈夫だよ、あるじいいい』と言っているようだ。
 
 なので、僕は安堵のため息をついて、マホニア魔法学院に向かうのだった。

 光の世界へ。

 肌が溶け落ちるほどの強烈な光を放つ煌びやかで目眩く世界へ。


X X X

王立マホニア魔法学院

 幸いなことに遅刻はしてない。

 早歩きできたので、クラスに着いても15分くらいの自由時間がありそうだ。

「ぷるんくん、ここでは静かにしてくれよな」
「ぷるん!」

 ぷるんくんが膨らんだカバンの中から勢いよく返事してくれた。

 僕は早速自分のクラスの中に入った。

 そしたら、

「……」

 クラスの全員が僕を見つめてくる。

 どうやら一番遅れてきたのは僕のようだ。
 
 まるで僕の登場を待っていたと言わんばかりの反応。

 僕は自分の席にいき、カバンを下ろして座る。

 それと同時に囁き声が僕の耳に入ってくる。

「おお、きたぜ。SSランクのダンジョンから帰ってきた属性なしの平民が」
「その割には無傷のようだけれど」
「あはは、SSランクのダンジョンの前でおしっこでも漏らして逃げてきやんじゃねーのか」
「あはははは……ありだな」
「おほほほほ」

 陰で悪口を言うなら、本人である僕が聞こえないようにしてほしい。

 まあ、聞こえよがしに言っているだけだと思うが。

 僕がクラスの連中を無視していると、ふと、向かい側に座っているカリナ様と目があった。

「……」

 カリナ様は深海を思わせる瞳で僕を捉え、物憂げな表情をする。

 カリナ様の隣に座っている専属メイドであるサーラさんも浮かない顔で、僕を見つめていた。

 そんな僕たちのアイコンタクトをアランのやつが見逃すはずもなく、

 彼はコメカミに血管を浮かせながら立ち上がって、僕のところへやってきた。

「おい、くそ平民、SS級の魔石は?」

 低い声で放たれた彼の言葉。
 
「……持ってきてません」

 そう。
 
 僕は魔石を持ってくることをしなかった。

 ていうか、それどころじゃなかったから。

 ぷるんくんとの出会いのインパクトがあまりにもデカすぎて、魔石という存在を完全に忘れてしまったんだ。

 僕の返事を聞いたアランのやつは、気持ち悪く笑いながらカリナ様を一瞥したのち、勝ち誇ったような態度で言う。

「きっとおじけついてSSクラスのダンジョンに行く前にちびったんだろ?まあ、実にお前らしいオチだな」
 
 やつが言うと、いつしか取り巻き2人がやってきた。

 うち太っている方(ジョルジョ)が声高に言葉を発する。

「何虚栄なんか張ってんだよ。Fランクのモンスターもろくに倒せないくせによ。うへへへへへ」

 ゲラゲラ笑うジョルジョのやつに加勢するようにもう1人の細い取り巻き(ミケール)が口を挟む。

「そうだ!くっそ貧乏庶民風情が身の程弁えろっつーの。この嘘つきが!」

 彼らの言葉がクラスに響き渡り、殆どの生徒が口角を吊り上げ、笑い始める。

 僕は小声でいう。

「僕、昨日SSランクのダンジョンに行ってきたもん……」
 
 僕は小声で小さな抵抗をしてみた。

 すると、

 アランが僕の胸ぐらを掴んできた。

「クズの上に嘘までつくか?お前にはプライドってもんがねーのかよ?もし、俺がお前だったら恥ずかしくて舌を噛んで自決したぞ。ちょっと可哀想だから飼い殺しって感じでいじってやったのによ、お前、マジで潰すぞ。お前なんか潰してもこの学院は見向きもしないからよ!!!そんな汚らしい面でカリナお嬢様に近づくんじゃねーよ!!」
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