26 / 95
唐揚げを作ろう2
しおりを挟むこのままだとカラアゲを作ることはできない。
ぷるんくんに格好いい主としての姿を見せたかった。
僕が顔を俯かせていると、ぷるんくんがジャンプをして、まな板に着地した。
「ぷるんくん?どうした?」
僕の問いに、ぷるんくんはちっこい手を生えさせ、何かを説明するようにかわいく動かす。
「ぷる、ぷるぷる!ぷるるん!ぷるるるん!!」
「ん?」
何かを一生懸命伝えようとしているようだが、僕には伝わらなかった。
僕がはてなと首を捻ると、ぷるんくんは諦めたようにため息をついては、片手を上げる。
すると、ぷるんくんの手は光り始めた。
「ぷ、ぷるんくん?」
白い光り。
これはぷるんくんのスキルの一種だろうか。
僕はいそいそと鑑定でぷるんくんの手を分析してみる。
ーーーー
スキル名:超音波カッティング
説明:自分の体の一部に高エネルギーの超音波をかけて振動させて対象を切る。土属性のSS級スキル。
ーーーー
「ちょ、超音波?」
超音波は海に住むイルカなどが発するもので、人が認知できない音域だと教わった。
魔道具を使えば、超音波を捉えることはできるが、超音波を使って対象を切る話は聞いた覚えがない。
しかもSS級スキル。
人間が到達できるクラスはSが限界だ。
もちろんスキルだって、SS級を覚醒させたものは存在しない。
つまり、完全に未知の領域だ。
そんなことを考えていると、ぷるんくんはゆっくりと言ったスピードでキングレッドドラゴンの尻尾の方へ手を下げてゆく。
やがて、ぷるんくんの白く光る手と尻尾が接触した。
それと同時に
キイイイイイイイ!!!!!
甲高い音と共に、想像を絶するほどの量の火花が散ってゆく。
火花は僕の部屋の全体に広がってゆき、僕に途轍もない不安をもたらした。
なぜなら
「ぷぷぷぷぷるんくん……ここ木造建築物だから」
そう。
ここは木で作られている。
僕の不安を裏切らないと言わんばかりに、天井あたりで火がついてしまった。
それと同時に、尻尾を切り終えたぷるんくんが目を『^^』にして僕を見上げてくる。
僕はそんなぷるんくんに向かって天井を指差しながら慌ただしく言う。
「ぷるんくん!火、火だよ!早く消さないと!そ、そうだ。水!水を!」
慌てふためく僕を見たぷるんくん。
そんなぷるんくんは目力を込めて、手を天井に向ける。
すると、ぷるんくんの手の先から直径50センチほどの水の塊が現れた。
「ぷりゅん!」
と、ぷるんくんが気合いを入れると同時に、その水の塊は火の元である天井へと凄まじいスピードで飛んでゆく。
火は消えた。
それと同時に、
天井に50センチほどの穴が開いてしまった。
「……」
ただでさえ家賃滞納しているというのに、穴まで開けてしまった。
追い出されても文句は言えぬ。
僕が冷や汗をかいていると、
ぷるんくんは僕を見上げて目をまた『^^』にした。
純真無垢な笑顔。
そう。
ぷるんくんは悪くない。
ぷるんくんは僕に従っただけだ。
キングレッドドラゴンの硬さを忘れた僕に非があるというわけだ。
僕はぷるんくんの頭を優しくなでなでしてあげた。
すると、ぷるんくんが気持ちよさそうに体を震わせる。
「ぷるんくん、ありがとう。よく頑張ってくれた」
「んんん」
「次、キングレッドドラゴンを切る時は、周りに防御膜を張ってくれるかな?」
「ぷりゅん」
「ふふ、ありがとう」
と、しばしぷるんくんを撫で撫でした後、僕は再びぷるんくんをベッドに戻してから料理作りに取り掛かった。
11
お気に入りに追加
1,644
あなたにおすすめの小説
没落した建築系お嬢様の優雅なスローライフ~地方でモフモフと楽しい仲間とのんびり楽しく生きます~
土偶の友
ファンタジー
優雅な貴族令嬢を目指していたクレア・フィレイア。
しかし、15歳の誕生日を前に両親から没落を宣言されてしまう。
そのショックで日本の知識を思いだし、ブラック企業で働いていた記憶からスローライフをしたいと気付いた。
両親に勧められた場所に逃げ、そこで楽しいモフモフの仲間と家を建てる。
女の子たちと出会い仲良くなって一緒に住む、のんびり緩い異世界生活。
異世界転移したけど、果物食い続けてたら無敵になってた
甘党羊
ファンタジー
唐突に異世界に飛ばされてしまった主人公。
降り立った場所は周囲に生物の居ない不思議な森の中、訳がわからない状況で自身の能力などを確認していく。
森の中で引きこもりながら自身の持っていた能力と、周囲の環境を上手く利用してどんどん成長していく。
その中で試した能力により出会った最愛のわんこと共に、周囲に他の人間が居ない自分の住みやすい地を求めてボヤきながら異世界を旅していく物語。
協力関係となった者とバカをやったり、敵には情け容赦なく立ち回ったり、飯や甘い物に並々ならぬ情熱を見せたりしながら、ゆっくり進んでいきます。
田舎暮らしと思ったら、異世界暮らしだった。
けむし
ファンタジー
突然の異世界転移とともに魔法が使えるようになった青年の、ほぼ手に汗握らない物語。
日本と異世界を行き来する転移魔法、物を複製する魔法。
あらゆる魔法を使えるようになった主人公は異世界で、そして日本でチート能力を発揮・・・するの?
ゆる~くのんびり進む物語です。読者の皆様ものんびりお付き合いください。
感想などお待ちしております。
ごめんみんな先に異世界行ってるよ1年後また会おう
味噌汁食べれる
ファンタジー
主人公佐藤 翔太はクラスみんなより1年も早く異世界に、行ってしまう。みんなよりも1年早く異世界に行ってしまうそして転移場所は、世界樹で最強スキルを実でゲット?スキルを奪いながら最強へ、そして勇者召喚、それは、クラスのみんなだった。クラスのみんなが頑張っているときに、主人公は、自由気ままに生きていく
せっかくのクラス転移だけども、俺はポテトチップスでも食べながらクラスメイトの冒険を見守りたいと思います
霖空
ファンタジー
クラス転移に巻き込まれてしまった主人公。
得た能力は悪くない……いや、むしろ、チートじみたものだった。
しかしながら、それ以上のデメリットもあり……。
傍観者にならざるをえない彼が傍観者するお話です。
基本的に、勇者や、影井くんを見守りつつ、ほのぼの?生活していきます。
が、そのうち、彼自身の物語も始まる予定です。
孤児院で育った俺、ある日目覚めたスキル、万物を見通す目と共に最強へと成りあがる
シア07
ファンタジー
主人公、ファクトは親の顔も知らない孤児だった。
そんな彼は孤児院で育って10年が経った頃、突如として能力が目覚める。
なんでも見通せるという万物を見通す目だった。
目で見れば材料や相手の能力がわかるというものだった。
これは、この――能力は一体……なんなんだぁぁぁぁぁぁぁ!?
その能力に振り回されながらも孤児院が魔獣の到来によってなくなり、同じ孤児院育ちで幼馴染であるミクと共に旅に出ることにした。
魔法、スキルなんでもあるこの世界で今、孤児院で育った彼が個性豊かな仲間と共に最強へと成りあがる物語が今、幕を開ける。
※他サイトでも連載しています。
大体21:30分ごろに更新してます。
悠々自適な転生冒険者ライフ ~実力がバレると面倒だから周りのみんなにはナイショです~
こばやん2号
ファンタジー
とある大学に通う22歳の大学生である日比野秋雨は、通学途中にある工事現場の事故に巻き込まれてあっけなく死んでしまう。
それを不憫に思った女神が、異世界で生き返る権利と異世界転生定番のチート能力を与えてくれた。
かつて生きていた世界で趣味で読んでいた小説の知識から、自分の実力がバレてしまうと面倒事に巻き込まれると思った彼は、自身の実力を隠したまま自由気ままな冒険者をすることにした。
果たして彼の二度目の人生はうまくいくのか? そして彼は自分の実力を隠したまま平和な異世界生活をおくれるのか!?
※この作品はアルファポリス、小説家になろうの両サイトで同時配信しております。
神の宝物庫〜すごいスキルで楽しい人生を〜
月風レイ
ファンタジー
グロービル伯爵家に転生したカインは、転生後憧れの魔法を使おうとするも、魔法を発動することができなかった。そして、自分が魔法が使えないのであれば、剣を磨こうとしたところ、驚くべきことを告げられる。
それは、この世界では誰でも6歳にならないと、魔法が使えないということだ。この世界には神から与えられる、恩恵いわばギフトというものがかって、それをもらうことで初めて魔法やスキルを行使できるようになる。
と、カインは自分が無能なのだと思ってたところから、6歳で行う洗礼の儀でその運命が変わった。
洗礼の儀にて、この世界の邪神を除く、12神たちと出会い、12神全員の祝福をもらい、さらには恩恵として神をも凌ぐ、とてつもない能力を入手した。
カインはそのとてつもない能力をもって、周りの人々に支えられながらも、異世界ファンタジーという夢溢れる、憧れの世界を自由気ままに創意工夫しながら、楽しく過ごしていく。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる