上 下
25 / 95

唐揚げを作ろう

しおりを挟む
 とりあえずレシピを見てみようではないか。

 僕が目の前に浮かんでいるカラアゲを凝視すると、文字が変わってゆく。

ーーーー

カラアゲのレシピ(二人前)

鶏もも肉:約42シェケル
塩・胡椒:各少々



酒:小さじ2
片栗粉:大さじ2
マヨネーズ:小さじ2
醤油:小さじ2
にんにく(すりおろし):1/2 
生姜(すりおろし):1/2
水:大さじ1
小麦粉:1/2カップ
揚げ油:適量


食材の召喚には大量の魔力が必要です


作り方

①肉を切る
②……



ーーーー


「……結構詳しく書いてあるな」

 いつもクザンさんと家主のお婆さんがくれた小麦粉と油で作った種無しパンしか食べてない僕からしてみたら本格的なレシピである。

 それに

「……マヨネーズ、醤油ってなんなんだろう」

 初めて聞く食材に僕は戸惑っている。
  
 水、小麦粉、油は持っている。

 だが、それ以外はないわけだし、召喚するより他ないだろう。

 大量の魔力が必要か。

 魔力切れになったらどうなるんだろう。

 そもそも、胡椒はとんでもない高価な香辛料なのに、本当に召喚魔法一つで簡単に手に入るのか。

 ちょっと胡散臭い。
 
 僕は無意識のうちに後ろを振り返った。

 すると、いつしかベッドから降りてきてたぷるんくんが壁に半分ほど隠れて僕を興味津々な目で見つめている。

「ぷるんくんにおいしいものを食わせるんだ……」

 期待しているぷるんくんの顔を見ていたら、僕の疑問なんか幻の泡沫のように消え去った。
  
 そして目を瞑り、手を伸ばした。

「酒、片栗粉、マヨネーズ、醤油、ニンニク、生姜、塩、醤油……召喚」

 と小さくつぶやくと、キッチンのテーブルの上に何かが現れる。

 それと共に、凄まじいほどの頭痛が僕の頭を襲ってきた。

「っ!!あああ!!!」

 一瞬、よろめいてしまい躓きそうになる。

「ぷりゅん!」

 そんな僕の危ない姿を見てぷるんくんが僕の隣にやってくれた。

「んんんん……んんんん……」

 ぷるんくんは僕に心配の視線を向けてきた。

 僕はしゃがんでぷるんくんの頭を撫でながら、言う。

「僕は大丈夫」

 と微笑みをかけて立ち上がった。

 にしても、すごい魔力消費だった。

 一回ならなんとかなるが、これが休みなしで2回以上連続でやったらきっと魔力切れになって気を失ってしまうんだろう。

 今はぷるんくんに大丈夫と言ったが、実は結構頭が痛い。

 だが、ここで倒れるわけにはいかない。

 なぜなら、

 ぷるんくんはお腹を空かせているのだ。

 僕は机の上に視線を向けた。
 
 すると、僕が必要としている食材が現れた。

 お酒と醤油は小さなガラス瓶に入っており、他は四角い紙の上に乗っている形だ。
 
「マジか……本当に現れた」

 僕は目を瞬かせながら目の前に並んだ食材を見て驚いた。

 だが、

 その驚きは

 次第に

 大きな喜びへと変わってゆく。

「すごい!!!ニンニクと生姜はそんなに珍しい食材ではないけど、塩と胡椒……特に胡椒はすごいぞ!!」

 そう。

 胡椒。

 ラオデキヤ王国において、胡椒の値段はとんでもなく高価で、一部の金持ちの貴族や王族しか手に入らないほど貴重だ。

 昔は高価な食材ではあったものの、今のように金の1000倍ほどとんでもない値段だったわけはない。

 ある出来事をきっかけで、ラオデキヤ王国は胡椒を提供してくれる遊牧民族から信頼を失ったと聞く。

 実は僕も胡椒は図鑑でしか見たことがないので、こうやって実物を見ると、なぜか気持ちが昂ってきた。

 頭は痛いが、それを上回るやる気が漲ってきた。

 僕は制服の袖を捲って高らかに叫ぶ。

「よおおし!ぷるんくん!今から作るからなああ!」
「ぷるるるるるん!!!!!」

 僕が気合を入れると、ぷるんくんもつられる形で力を入れてくる。

「肉はキングレッドドラゴンを使えばなんとかなる!」
 
 と宣言するように言っては、収納でキングレッドドラゴンの尻尾のところだけを取り出した。

 そして僕はまな板を取り出してから包丁を持ち上げた。
 
 尻尾をまな板に乗せて僕は包丁でそれを力強く叩く。


カーン!!!

「……」

 僕はまた叩いた。

カーン!!!

カーン!!!!

「……傷ひとつ入ってないじゃん」

 そう。

 キングレッドドラゴンの尻尾はとても丈夫だった。

「ああ……」

 僕は絶望した。
しおりを挟む
感想 30

あなたにおすすめの小説

隠して忘れていたギフト『ステータスカスタム』で能力を魔改造 〜自由自在にカスタマイズしたら有り得ないほど最強になった俺〜

桜井正宗
ファンタジー
 能力(スキル)を隠して、その事を忘れていた帝国出身の錬金術師スローンは、無能扱いで大手ギルド『クレセントムーン』を追放された。追放後、隠していた能力を思い出しスキルを習得すると『ステータスカスタム』が発現する。これは、自身や相手のステータスを魔改造【カスタム】できる最強の能力だった。  スローンは、偶然出会った『大聖女フィラ』と共にステータスをいじりまくって最強のステータスを手に入れる。その後、超高難易度のクエストを難なくクリア、無双しまくっていく。その噂が広がると元ギルドから戻って来いと頭を下げられるが、もう遅い。  真の仲間と共にスローンは、各地で暴れ回る。究極のスローライフを手に入れる為に。

特殊部隊の俺が転生すると、目の前で絶世の美人母娘が犯されそうで助けたら、とんでもないヤンデレ貴族だった

なるとし
ファンタジー
 鷹取晴翔(たかとりはると)は陸上自衛隊のとある特殊部隊に所属している。だが、ある日、訓練の途中、不慮の事故に遭い、異世界に転生することとなる。  特殊部隊で使っていた武器や防具などを召喚できる特殊能力を謎の存在から授かり、目を開けたら、絶世の美女とも呼ばれる母娘が男たちによって犯されそうになっていた。  武装状態の鷹取晴翔は、持ち前の優秀な身体能力と武器を使い、その母娘と敷地にいる使用人たちを救う。  だけど、その母と娘二人は、    とおおおおんでもないヤンデレだった…… 第3回次世代ファンタジーカップに出すために一部を修正して投稿したものです。

フリーター転生。公爵家に転生したけど継承権が低い件。精霊の加護(チート)を得たので、努力と知識と根性で公爵家当主へと成り上がる 

SOU 5月17日10作同時連載開始❗❗
ファンタジー
400倍の魔力ってマジ!?魔力が多すぎて範囲攻撃魔法だけとか縛りでしょ 25歳子供部屋在住。彼女なし=年齢のフリーター・バンドマンはある日理不尽にも、バンドリーダでボーカルからクビを宣告され、反論を述べる間もなくガッチャ切りされそんな失意のか、理不尽に言い渡された残業中に急死してしまう。  目が覚めると俺は広大な領地を有するノーフォーク公爵家の長男の息子ユーサー・フォン・ハワードに転生していた。 ユーサーは一度目の人生の漠然とした目標であった『有名になりたい』他人から好かれ、知られる何者かになりたかった。と言う目標を再認識し、二度目の生を悔いの無いように、全力で生きる事を誓うのであった。 しかし、俺が公爵になるためには父の兄弟である次男、三男の息子。つまり従妹達と争う事になってしまい。 ユーサーは富国強兵を掲げ、先ずは小さな事から始めるのであった。 そんな主人公のゆったり成長期!!

引きこもり転生エルフ、仕方なく旅に出る

Greis
ファンタジー
旧題:引きこもり転生エルフ、強制的に旅に出される ・2021/10/29 第14回ファンタジー小説大賞 奨励賞 こちらの賞をアルファポリス様から頂く事が出来ました。 実家暮らし、25歳のぽっちゃり会社員の俺は、日ごろの不摂生がたたり、読書中に死亡。転生先は、剣と魔法の世界の一種族、エルフだ。一分一秒も無駄にできない前世に比べると、だいぶのんびりしている今世の生活の方が、自分に合っていた。次第に、兄や姉、友人などが、見分のために外に出ていくのを見送る俺を、心配しだす両親や師匠たち。そしてついに、(強制的に)旅に出ることになりました。 ※のんびり進むので、戦闘に関しては、話数が進んでからになりますので、ご注意ください。

異世界転生!俺はここで生きていく

おとなのふりかけ紅鮭
ファンタジー
俺の名前は長瀬達也。特に特徴のない、その辺の高校生男子だ。 同じクラスの女の子に恋をしているが、告白も出来ずにいるチキン野郎である。 今日も部活の朝練に向かう為朝も早くに家を出た。 だけど、俺は朝練に向かう途中で事故にあってしまう。 意識を失った後、目覚めたらそこは俺の知らない世界だった! 魔法あり、剣あり、ドラゴンあり!のまさに小説で読んだファンタジーの世界。 俺はそんな世界で冒険者として生きて行く事になる、はずだったのだが、何やら色々と問題が起きそうな世界だったようだ。 それでも俺は楽しくこの新しい生を歩んで行くのだ! 小説家になろうでも投稿しています。 メインはあちらですが、こちらも同じように投稿していきます。 宜しくお願いします。

異世界ソロ暮らし 田舎の家ごと山奥に転生したので、自由気ままなスローライフ始めました。

長尾 隆生
ファンタジー
【書籍情報】書籍2巻発売中ですのでよろしくお願いします。  女神様の手違いにより現世の輪廻転生から外され異世界に転生させられた田中拓海。  お詫びに貰った生産型スキル『緑の手』と『野菜の種』で異世界スローライフを目指したが、お腹が空いて、なにげなく食べた『種』の力によって女神様も予想しなかった力を知らずに手に入れてしまう。  のんびりスローライフを目指していた拓海だったが、『その地には居るはずがない魔物』に襲われた少女を助けた事でその計画の歯車は狂っていく。   ドワーフ、エルフ、獣人、人間族……そして竜族。  拓海は立ちはだかるその壁を拳一つでぶち壊し、理想のスローライフを目指すのだった。  中二心溢れる剣と魔法の世界で、徒手空拳のみで戦う男の成り上がりファンタジー開幕。 旧題:チートの種~知らない間に異世界最強になってスローライフ~

集団転移した商社マン ネットスキルでスローライフしたいです!

七転び早起き
ファンタジー
「望む3つのスキルを付与してあげる」 その天使の言葉は善意からなのか? 異世界に転移する人達は何を選び、何を求めるのか? そして主人公が○○○が欲しくて望んだスキルの1つがネットスキル。 ただし、その扱いが難しいものだった。 転移者の仲間達、そして新たに出会った仲間達と異世界を駆け巡る物語です。 基本は面白くですが、シリアスも顔を覗かせます。猫ミミ、孤児院、幼女など定番物が登場します。 ○○○「これは私とのラブストーリーなの!」 主人公「いや、それは違うな」

無能スキルと言われ追放されたが実は防御無視の最強スキルだった

さくらはい
ファンタジー
 主人公の不動颯太は勇者としてクラスメイト達と共に異世界に召喚された。だが、【アスポート】という使えないスキルを獲得してしまったばかりに、一人だけ城を追放されてしまった。この【アスポート】は対象物を1mだけ瞬間移動させるという単純な効果を持つが、実はどんな物質でも一撃で破壊できる攻撃特化超火力スキルだったのだ―― 【不定期更新】 1話あたり2000~3000文字くらいで短めです。 性的な表現はありませんが、ややグロテスクな表現や過激な思想が含まれます。 良ければ感想ください。誤字脱字誤用報告も歓迎です。

処理中です...