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家に到着
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数時間後
御者さんの運転する馬車が王都に着く頃にはすっかり夜になっていた。
石たたみの道を歩く冒険者、今日の商売を終えた人々、メイド、執事。
実にいろんな人がいる。
ぷるんくんはというと、ずっと僕の肩に乗って通りゆく人々を眺めている。
すると、馬車の速度が遅くなり、やがて馬が止まった。
「着きましたよ」
御者さんの声を聞いて、僕はぷるんくんを抱えながら馬車から降りた。
「ありがとうございます」
深く頭を下げると、御者さんはにっこり笑いながら返事をした。
「ほほほ、とても礼儀正しい方ですな」
言い終えた御者さんは帽子をつまみながら軽く頭を下げる。
僕はぷるんくんを両手で抱えて足を動かす。
「ぷるるるる……」
ぷるんくんはというと、僕に体をくっつけた状態で、街ゆく人々に警戒の視線を向けてくるようであった。
体を小刻みに震えさせ、目力を込めるぷるんくん。
僕はそんなぷるんくんの頭に手を乗せる。
「ぷるんくん。いいよ。敵じゃないから」
というと、ぷるんくんは僕を見上げて頷く。
普通のお店は閉店時間ではあるが、酒場や大人たちが通いそうなエッチなお店は派手に光る魔石を照明に使って客を引き寄せている。
僕は無言のまま歩き続ける。
王都の繁華街を通り過ぎれば、住宅街が出てくる。
中には貴族の冒険者らの拠点となる大きな建物がある。
BランクやAランクくらいの強者たちが集う場所だ。
Fランクの僕とは全く縁がない場所だ。
続いてC、Dランククラスの冒険者が使う団地。
だが、あそこにも僕の居場所はない。
さらに奥を進んだら、商人や平民らが住む団地が現れる。
光る魔石は値段が高いので、龕灯《がんどう》やオイルランプ、蝋燭を使う。
だけど、あそこにも僕の居場所はない。
僕の家はさらに奥深いところにある
「ぷるん?」
ぷるんくんは小首を傾げて僕を見上げるが、僕はあえてぷるんくんに視線を向けることをせずひたすら前を進んだ。
良心の呵責が僕を苦しめているからだ。
僕は悔しそうに歯を食いしばりつつ、恥ずかしそうにため息をついた。
僕の家。
廃墟が入り乱れる敷地の周辺に佇むボロボロな木造の小さな建物。
月明かりに照らされた僕の家は、まるでお化けが出てきそうな雰囲気を漂わせていた。
ぷるんくんをテイムしたはいいが、僕にはお金がないため、こんなボロボロな家に住むしかない。
もっと広くていい家をぷるんくんに見せたかった。
だが、これが現実だ。
「ぷるんくん……ここだよ。ここが僕の家」
言ってぷるんくんを地面に下ろすと、ぷるんくんは興味深げにボロボロな家を一周する。
やっぱり恥ずかしい。
マホニア魔法学院に通う子女はみんな煌びやかな邸宅に住んでいるんだ。
僕が落ち込んでいると、ぷるんくんは
ジャンプをして、ドアにくっついた。
ペチャ!
そして目を『^^』にして、僕を優しく見つめていた。
「ぷるんくん……」
僕は一瞬物憂げな表情をしたのち、唇を噛み締めてから口を開いた。
「入ろうか!」
「ぷりゅん!」
ぷるんくんは地面に着地したのち一回ぴょんと跳ねて返事をしてくれた。
部屋に入った。
マッチで蝋燭に火をつけると、真っ暗だった部屋が明るくなった。
まず、やるべきことは明日への準備だ。
課題もやらないとダメだし、教科書も明日の分のものを鞄に入れないといけない。
「ぷるんくん、ちょっとベッドで待ってくれよな」
と、僕がぷるんくんを両手で持ち上げて古いベッドへ移動しようとした瞬間
グウウウウウウウウウウン!!!!!!!!!
まるで雷が落ちたような凄まじい音がぷるんくんの体から聞こえた。
御者さんの運転する馬車が王都に着く頃にはすっかり夜になっていた。
石たたみの道を歩く冒険者、今日の商売を終えた人々、メイド、執事。
実にいろんな人がいる。
ぷるんくんはというと、ずっと僕の肩に乗って通りゆく人々を眺めている。
すると、馬車の速度が遅くなり、やがて馬が止まった。
「着きましたよ」
御者さんの声を聞いて、僕はぷるんくんを抱えながら馬車から降りた。
「ありがとうございます」
深く頭を下げると、御者さんはにっこり笑いながら返事をした。
「ほほほ、とても礼儀正しい方ですな」
言い終えた御者さんは帽子をつまみながら軽く頭を下げる。
僕はぷるんくんを両手で抱えて足を動かす。
「ぷるるるる……」
ぷるんくんはというと、僕に体をくっつけた状態で、街ゆく人々に警戒の視線を向けてくるようであった。
体を小刻みに震えさせ、目力を込めるぷるんくん。
僕はそんなぷるんくんの頭に手を乗せる。
「ぷるんくん。いいよ。敵じゃないから」
というと、ぷるんくんは僕を見上げて頷く。
普通のお店は閉店時間ではあるが、酒場や大人たちが通いそうなエッチなお店は派手に光る魔石を照明に使って客を引き寄せている。
僕は無言のまま歩き続ける。
王都の繁華街を通り過ぎれば、住宅街が出てくる。
中には貴族の冒険者らの拠点となる大きな建物がある。
BランクやAランクくらいの強者たちが集う場所だ。
Fランクの僕とは全く縁がない場所だ。
続いてC、Dランククラスの冒険者が使う団地。
だが、あそこにも僕の居場所はない。
さらに奥を進んだら、商人や平民らが住む団地が現れる。
光る魔石は値段が高いので、龕灯《がんどう》やオイルランプ、蝋燭を使う。
だけど、あそこにも僕の居場所はない。
僕の家はさらに奥深いところにある
「ぷるん?」
ぷるんくんは小首を傾げて僕を見上げるが、僕はあえてぷるんくんに視線を向けることをせずひたすら前を進んだ。
良心の呵責が僕を苦しめているからだ。
僕は悔しそうに歯を食いしばりつつ、恥ずかしそうにため息をついた。
僕の家。
廃墟が入り乱れる敷地の周辺に佇むボロボロな木造の小さな建物。
月明かりに照らされた僕の家は、まるでお化けが出てきそうな雰囲気を漂わせていた。
ぷるんくんをテイムしたはいいが、僕にはお金がないため、こんなボロボロな家に住むしかない。
もっと広くていい家をぷるんくんに見せたかった。
だが、これが現実だ。
「ぷるんくん……ここだよ。ここが僕の家」
言ってぷるんくんを地面に下ろすと、ぷるんくんは興味深げにボロボロな家を一周する。
やっぱり恥ずかしい。
マホニア魔法学院に通う子女はみんな煌びやかな邸宅に住んでいるんだ。
僕が落ち込んでいると、ぷるんくんは
ジャンプをして、ドアにくっついた。
ペチャ!
そして目を『^^』にして、僕を優しく見つめていた。
「ぷるんくん……」
僕は一瞬物憂げな表情をしたのち、唇を噛み締めてから口を開いた。
「入ろうか!」
「ぷりゅん!」
ぷるんくんは地面に着地したのち一回ぴょんと跳ねて返事をしてくれた。
部屋に入った。
マッチで蝋燭に火をつけると、真っ暗だった部屋が明るくなった。
まず、やるべきことは明日への準備だ。
課題もやらないとダメだし、教科書も明日の分のものを鞄に入れないといけない。
「ぷるんくん、ちょっとベッドで待ってくれよな」
と、僕がぷるんくんを両手で持ち上げて古いベッドへ移動しようとした瞬間
グウウウウウウウウウウン!!!!!!!!!
まるで雷が落ちたような凄まじい音がぷるんくんの体から聞こえた。
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