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無知がもたらした悲劇2
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両親side
潔く去ってゆくレオを見て、母は不安そうにつぶやいた。
『レオ、大丈夫かしら……スライムはFランクのダンジョンでしか棲息しないとはいえ、やっぱり心配だわ』
物憂げな表情をする母に、夫が後ろから彼女を抱きしめながら優しい声音でいう。
『いいんだ。レオでもFランクのモンスターは倒せる』
『……』
『不安か?』
『うん……レオ、いつもと雰囲気違ったから……』
『成長したのさ。レオが赤ちゃんだった時のことは忘れて』
『……』
二人は体を密着したまま不安を和らげた。
レオside
怖く無かった。
ぷるんくんをテイムする未来を描いていると、大人たちが行ってはならないと言っていた危険地域は普通の茂みに見える。
不思議だ。
さっき、僕はここで強力なモンスターに命を狙われたが、今の僕の足は震えるどころかとても軽い。
ぷるんくんはというと、
『……』
僕の左胸に引っ付いたまま、僕の顔を真っ直ぐ見つめている。
頭が普段より冴えているので、場所は覚えている。
やがてダンジョンの入り口に到着した。
迷いなく中に入った僕たち。
僕はぷるんくんを優しくひっぺがして地面にそっと置いた。
『ん?』
小さな黄色いぷるんくんは小首を傾げながら僕を見つめる。
僕はそんなぷるんくんを見て、一瞬悔しそうに握り拳を作ったが、やがて体に力を抜いて言う。
『ごめん。お父さんとお母さんが元の場所に戻してって言うから……僕、テイムもできないしめっちゃ弱い……悔しけど、ぷるんくんとお別れしないといけないんだ』
『ぷるん……』
ぷるんくんは気落ちしたように俯いていた。
僕はそんなぷるんくんに、しゃがんでなでなでしてあげた。
そして、上着のポケットから小さな皮袋を取り出した。
そこから僕はクッキーを取り出す。
ケルとエミリにあげるために用意したものだ。
今の僕はこれくらいしかぷるんくんにしてあげられない。
僕はぷるんくんにクッキーを差し出した。
『食べてね』
『ぷるん……』
『僕、強くなってテイムできるようになったら、ぷるんくんに会いに行くから!その時が来れば、僕と一緒に住もう!』
『っ!?ぷるん!?』
ぷるんくんは期待に満ちた目で僕を見てくれた。
『ぷるんくんも気をつけながら強いスライムになってね!』
僕は手にもっと力を入れてぷるんくん頭をまたなでなでした。
そして
『約束だよ。僕とぷるんくんだけの約束』
言うと、
『ぷりゅん!』
ぷるんくんは目を『^^』にして僕のクッキーを咥えた。
ぷるんくんの喜ぶ姿を見て心が温かくなった僕は密かに立ち上がった。
『また会おうな!ぷるんくん!』
僕の言葉を聞いてぷるんくんが、クッキーを咥えた状態で喜びながらぴょんぴょん跳んで僕にお別れの挨拶をしてくれた。
『ぷるるるるるるるん!!!!!んんんんんん!!』
当時の僕の心は夢と希望に満ち溢れていた。
自分が初めて救った尊《たっと》い存在。
ぷるんくんと一緒に暮らす未来の自分。
できる。
実現できる。
そんな希望を胸に秘めて危険地域から抜け出そうとした。
日が暮れている。
赤、橙、青、紺、黒。
空のグラデーションは僕の目を魅了するほど美しい。
この世の全てのものが僕とぷるんくんを祝福してくれている気がした。
が、
僕の希望が絶望に変わるのは一瞬だった。
『グウアアアアアア!!!!』
『あっ!』
音を立たずに僕に接近してきたジャイアントベアが僕に一撃を食らわしたのだ。
気がつくと僕は血を流しながら倒れていた。
死ぬのか。
死んでしまうのか。
『ぷるんくん……』
震える声でいうも、僕の声は空気と共に儚く消えてゆく。
奴が僕の前で手を上げた。
僕をしとめるつもりか。
絶望していたら
『レオから離れろ!!!!!!!!』
松明を引っ提げて走ってくるケルの姿が見えた。
潔く去ってゆくレオを見て、母は不安そうにつぶやいた。
『レオ、大丈夫かしら……スライムはFランクのダンジョンでしか棲息しないとはいえ、やっぱり心配だわ』
物憂げな表情をする母に、夫が後ろから彼女を抱きしめながら優しい声音でいう。
『いいんだ。レオでもFランクのモンスターは倒せる』
『……』
『不安か?』
『うん……レオ、いつもと雰囲気違ったから……』
『成長したのさ。レオが赤ちゃんだった時のことは忘れて』
『……』
二人は体を密着したまま不安を和らげた。
レオside
怖く無かった。
ぷるんくんをテイムする未来を描いていると、大人たちが行ってはならないと言っていた危険地域は普通の茂みに見える。
不思議だ。
さっき、僕はここで強力なモンスターに命を狙われたが、今の僕の足は震えるどころかとても軽い。
ぷるんくんはというと、
『……』
僕の左胸に引っ付いたまま、僕の顔を真っ直ぐ見つめている。
頭が普段より冴えているので、場所は覚えている。
やがてダンジョンの入り口に到着した。
迷いなく中に入った僕たち。
僕はぷるんくんを優しくひっぺがして地面にそっと置いた。
『ん?』
小さな黄色いぷるんくんは小首を傾げながら僕を見つめる。
僕はそんなぷるんくんを見て、一瞬悔しそうに握り拳を作ったが、やがて体に力を抜いて言う。
『ごめん。お父さんとお母さんが元の場所に戻してって言うから……僕、テイムもできないしめっちゃ弱い……悔しけど、ぷるんくんとお別れしないといけないんだ』
『ぷるん……』
ぷるんくんは気落ちしたように俯いていた。
僕はそんなぷるんくんに、しゃがんでなでなでしてあげた。
そして、上着のポケットから小さな皮袋を取り出した。
そこから僕はクッキーを取り出す。
ケルとエミリにあげるために用意したものだ。
今の僕はこれくらいしかぷるんくんにしてあげられない。
僕はぷるんくんにクッキーを差し出した。
『食べてね』
『ぷるん……』
『僕、強くなってテイムできるようになったら、ぷるんくんに会いに行くから!その時が来れば、僕と一緒に住もう!』
『っ!?ぷるん!?』
ぷるんくんは期待に満ちた目で僕を見てくれた。
『ぷるんくんも気をつけながら強いスライムになってね!』
僕は手にもっと力を入れてぷるんくん頭をまたなでなでした。
そして
『約束だよ。僕とぷるんくんだけの約束』
言うと、
『ぷりゅん!』
ぷるんくんは目を『^^』にして僕のクッキーを咥えた。
ぷるんくんの喜ぶ姿を見て心が温かくなった僕は密かに立ち上がった。
『また会おうな!ぷるんくん!』
僕の言葉を聞いてぷるんくんが、クッキーを咥えた状態で喜びながらぴょんぴょん跳んで僕にお別れの挨拶をしてくれた。
『ぷるるるるるるるん!!!!!んんんんんん!!』
当時の僕の心は夢と希望に満ち溢れていた。
自分が初めて救った尊《たっと》い存在。
ぷるんくんと一緒に暮らす未来の自分。
できる。
実現できる。
そんな希望を胸に秘めて危険地域から抜け出そうとした。
日が暮れている。
赤、橙、青、紺、黒。
空のグラデーションは僕の目を魅了するほど美しい。
この世の全てのものが僕とぷるんくんを祝福してくれている気がした。
が、
僕の希望が絶望に変わるのは一瞬だった。
『グウアアアアアア!!!!』
『あっ!』
音を立たずに僕に接近してきたジャイアントベアが僕に一撃を食らわしたのだ。
気がつくと僕は血を流しながら倒れていた。
死ぬのか。
死んでしまうのか。
『ぷるんくん……』
震える声でいうも、僕の声は空気と共に儚く消えてゆく。
奴が僕の前で手を上げた。
僕をしとめるつもりか。
絶望していたら
『レオから離れろ!!!!!!!!』
松明を引っ提げて走ってくるケルの姿が見えた。
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