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守られる小さな存在2
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僕は座り込み、スライムを下ろした。
『はあ……はあ……うええ……』
ずっと走ってきた疲れが一気に押し寄せてくる。
体全体に電気が走っているような不快感に襲われ、心臓は飛び出るほどバクバクする。
加えて、口の中から強烈な血の匂いがしてきた。
吐き気もするし、気持ち悪い。
落ち着くまでに10分ほどかかった。
『ぷりゅん』
そんな僕をスライムは不思議そうに見つめている。
僕が下ろしたところから動くことなく、ただただ僕の顔を見上げて見つめているのだ。
『……』
正直に言って僕はスライムのことをあまりわかってない。
知ってるのはこの子が最弱モンスターとして知られるスライムだということだけ。
僕はマナを持たない無能力者で、両親もまた無能力者だ。
なので、超能力や特殊能力と言われる魔法を使いながらモンスターを倒す魔法使いのようにダンジョンやモンスターのことは詳しくないし、別に知りたいとも思わない。
だからなおさら僕はこの子にどう接すればいいのかがわからないのだ。
にしてもかわいいスライムだ。
ちっこくてもちもちしてて、プリンみたいに柔らかい。
僕はスライムに微笑みをかけてサムズアップした。
『よかった!無事に抜け出せて』
『ぷる……』
気のせいかもしれないが、スライムの目が潤んでいるように見える。
しばし心地いい雰囲気が流れる。
『ぷるん!』
ずっと僕を見つめていたスライムは、いきなり僕の胸に飛んできた。
ペチャ!
『え!?』
びっくりした僕だが、スライムが目を瞑って気持ちよさそうに体を震わせる。
なぜか心が温かくなる。
僕はそんなちっこいスライムをなでなでしながら口を開いた。
『入り口の付近は多分安全だからな。他のモンスターに食べられないように注意してね』
『ぷりゅん?』
僕はスライムを下ろした。
この子を連れて行くわけにはいかない。
きっとお母さんとお父さんに叱られる。
ここならきっと安全のはずだ。
ダンジョンのことはあまり詳しくないから断ずることはできないが、入り口付近はこのスライムのように弱々なモンスターがいるのだろう。
奥深いところに行くにつれてさっきのバケモンみたいな強いやつが棲息しているんだ。
と思った僕は立ち上がった。
『良いしょっと!』
そして入り口に向けて歩くこうとした。
すると、
『ぷるん……』
スライムは僕の足にくっついてきた。
『どうした?』
『ぷるん……ぷるん……』
スライムは僕の左胸まで登ってきて目を瞑った。
体を震わせている。
おそらくまだ怖がっているのだろう。
僕はスライムをまた抱き抱えてなでなでしてあげた。
するとスライムの震えは徐々に減り始める。
僕はゆっくり口を開いた。
『一緒に僕の家に帰る?』
『ぷるん』
おそらく帰りたいと言っているようだ。
『じゃ……うん……ぷるんくん!お前はぷるんくんだ!一緒に帰ろうね!』
『ぷるるん!!』
僕は自分の胸に顔を激しく擦るぷるんくんを抱えながらドアの隙間を通って外へ出た。
目の前には茂みが広がっている。
逃げるようにここまでやってきたのだが、このちっこいぷるんくんが一緒にいるおかげか、僕の足はとても軽く、どこまでも行けそうな気がした。
もちろん、さっきのように、でかいクマに襲われないために僕は慎重に動いた。
ぷるんくんをぎゅっと抱えながら。
『はあ……はあ……うええ……』
ずっと走ってきた疲れが一気に押し寄せてくる。
体全体に電気が走っているような不快感に襲われ、心臓は飛び出るほどバクバクする。
加えて、口の中から強烈な血の匂いがしてきた。
吐き気もするし、気持ち悪い。
落ち着くまでに10分ほどかかった。
『ぷりゅん』
そんな僕をスライムは不思議そうに見つめている。
僕が下ろしたところから動くことなく、ただただ僕の顔を見上げて見つめているのだ。
『……』
正直に言って僕はスライムのことをあまりわかってない。
知ってるのはこの子が最弱モンスターとして知られるスライムだということだけ。
僕はマナを持たない無能力者で、両親もまた無能力者だ。
なので、超能力や特殊能力と言われる魔法を使いながらモンスターを倒す魔法使いのようにダンジョンやモンスターのことは詳しくないし、別に知りたいとも思わない。
だからなおさら僕はこの子にどう接すればいいのかがわからないのだ。
にしてもかわいいスライムだ。
ちっこくてもちもちしてて、プリンみたいに柔らかい。
僕はスライムに微笑みをかけてサムズアップした。
『よかった!無事に抜け出せて』
『ぷる……』
気のせいかもしれないが、スライムの目が潤んでいるように見える。
しばし心地いい雰囲気が流れる。
『ぷるん!』
ずっと僕を見つめていたスライムは、いきなり僕の胸に飛んできた。
ペチャ!
『え!?』
びっくりした僕だが、スライムが目を瞑って気持ちよさそうに体を震わせる。
なぜか心が温かくなる。
僕はそんなちっこいスライムをなでなでしながら口を開いた。
『入り口の付近は多分安全だからな。他のモンスターに食べられないように注意してね』
『ぷりゅん?』
僕はスライムを下ろした。
この子を連れて行くわけにはいかない。
きっとお母さんとお父さんに叱られる。
ここならきっと安全のはずだ。
ダンジョンのことはあまり詳しくないから断ずることはできないが、入り口付近はこのスライムのように弱々なモンスターがいるのだろう。
奥深いところに行くにつれてさっきのバケモンみたいな強いやつが棲息しているんだ。
と思った僕は立ち上がった。
『良いしょっと!』
そして入り口に向けて歩くこうとした。
すると、
『ぷるん……』
スライムは僕の足にくっついてきた。
『どうした?』
『ぷるん……ぷるん……』
スライムは僕の左胸まで登ってきて目を瞑った。
体を震わせている。
おそらくまだ怖がっているのだろう。
僕はスライムをまた抱き抱えてなでなでしてあげた。
するとスライムの震えは徐々に減り始める。
僕はゆっくり口を開いた。
『一緒に僕の家に帰る?』
『ぷるん』
おそらく帰りたいと言っているようだ。
『じゃ……うん……ぷるんくん!お前はぷるんくんだ!一緒に帰ろうね!』
『ぷるるん!!』
僕は自分の胸に顔を激しく擦るぷるんくんを抱えながらドアの隙間を通って外へ出た。
目の前には茂みが広がっている。
逃げるようにここまでやってきたのだが、このちっこいぷるんくんが一緒にいるおかげか、僕の足はとても軽く、どこまでも行けそうな気がした。
もちろん、さっきのように、でかいクマに襲われないために僕は慎重に動いた。
ぷるんくんをぎゅっと抱えながら。
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