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守られる小さな存在1

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『モオオオオオオ!!!!』

 スライムを抱えながら僕は必死に入る。

 そんな僕を絶対逃さないと言わんばかりの水牛っぽいモンスターが追ってくる。

 25メートルほどの大きさで、やつが地に足をつけるたびに、地面が揺れて、バランスを保つことが難しい。

『やば……早すぎる……』

 後ろを振り向けば、やつは赤いツノを僕に向けて猛烈に突撃。

 このままだとさっきの熊のように一瞬にして追い付かれる。

『ぷりゅん……』

 黄色いスライムは僕の顔を見て、心配そうに体を震わせる。

『大丈夫!』

 そうなんの根拠のない言葉をちっこいスライムに投げかけながら、僕はひたむきに走る。

 どうしたものか。

 必死に頭を働かせていたら、目の前に多くの穴が見えてきた。

 とりあえずこの穴は小さいからあのモンスターは入れないはず。
 
 そう踏んで、僕は小さな穴に入った。

 穴の中は小さな洞窟のようになっており、奥にはまた穴がたくさんついている。

 僕は安全な場所へ行くべく、穴を通ってさらに奥のほうへと駆ける。

 やがて、奥深いところについた僕たち。

 周りにはこの洞窟の外と比べて若干暗いけど、かといって困るほど暗いわけでもない。

『ふう……』

 体育座りで深呼吸をする僕。

『ぷる……』

 安堵のため息をついていると、スライムが僕を見上げてきた。

『ここでしばらくあの水牛っぽいやつがいなくなるまで待とうね!』
 
 と、僕が笑顔を向けていると、スライムは小さなお目目を動かすことなく、ずっと僕に視線を向け続ける。

 そんなスライムに僕は微笑む。

 が、

『ムウウウオオオオオ!!!!』

 やつの鳴き声とともに、大きな地震が起きた。

 まさか……

『あいつ、ツノでこの洞窟ごと破壊するつもりか!?』

 僕の言葉はどうやら的中したらしく、やつは叫び散らかしながら洞窟に何度も体当たりする凄まじい音を聞かせてきた。

 すると、洞窟にヒビが入り、石が落ちてくる。
 
 このままだと生き埋めになってしまう。
 
 迫り来る死への恐怖に僕の全身は極度の緊張で震えてきた。

『ぷるん……』

 そんな僕をスライムは心配そうに見つめているようであった。

 助けようとしたちっこいスライムにも心配されるほど僕は弱いのか。

『……』

 僕は握り拳をして立ち上がる。

『ぷるっ!?』

『僕が守ってあげるよ!!ちゃんと捕まって!!』

 スライムをぎゅっと抱きしめて言ってから、僕は他の穴に向かって走る。

『……』
 
 数秒後、僕が座っていたところに、大きな岩が落ちた。

 僕は歯を食いしばって必死に走った。
 
 今のところ目的地はない。

 穴が多すぎてどこを通ればいいの分からないのだ。

 ただ、崩れてゆくところから比較的安全なところに逃げるのみ。

 心臓はとっくに爆発寸前だ。

 僕の胸にはスライムの柔らかな感触が伝わってくる。

 僕はもっとスピードを上げた。
 
 崩壊してゆく洞窟。

『はあ……ああ……はあ……』
『ぷりゅん……』

(レオをじっと見つめるスライム)

 やっと出口が見えてきた

 多くの穴で構成される洞窟から抜け出した僕。

 すると、遠くから体当たりしている水牛っぽいモンスターが見える。

 やつは、洞窟から抜け出した僕たちを発見した途端に、ツノをもっと濃い赤色に変え、唾液を流しながら咆哮する。

!!!!!!』

 完全にキチガイのような表情をするやつ。

 けれど、

 僕が通ったトンネルがすぐ近くにあるのだ。

 僕は必死にそのトンネルに向かって走る。

『はあ……ああ……』

 息を切らしつつ、僕はトンネルを通った。

 後ろからはやつが追いかけようとするが、トンネルは狭いため、やつの体だと通れない。
 
 さっきみたいにツノでトンネルを壊そうとするが、瓦礫によって入り口が塞がったため、やつは攻撃を止めた。 

 だが油断は大敵だ。

 攻撃を再開してトンネルごとぶっ飛ばす可能性もあるし、トンネルの先も、つよつよなモンスターがないとは限らない。

 幸いなことに僕の記憶力は、集中するとかなりいい方なので、今まで辿ってきた道は全部覚えている。

 なので、僕は走るのをやめずに、ダンジョンの入り口の前までやってきた。

 ここはモンスターの痕跡はなく、長らく放置された感じになっている。

 僕は座り込み、スライムを下ろした。
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