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SSランクのダンジョンに入る2
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僕は無言のまま約5秒間沈黙した。
僕の心の中で大きな何かが消失した感じがした。
けれど、僕はにっこり笑った。
「おめでとう!良かった!二人ともとても似合ってるよ!二人ならきっと幸せになれる!神様の祝福がありますように」
と、サムズアップして僕は二人を心の中で祝福した。
しかし、祝福すればするほど、僕の心は痛かった。
「ありがとう!レオ!全部レオのおかげだ。俺はレオのおかげで言葉の重さってのを思い知らされた。だからここまでやってこれたよ。エミリと結ばれたのも君のおかげだ」
ケルは後ろに行くにつれて唇を噛み締める。
昔のことをまだ気にしているのか。
大丈夫だよとずっと言ってるのに。
僕がケルを慈しむように見つめているとエミリが優しく言葉をかける。
「レオくんもきっといい人に巡り合えるはずよ」
言われた僕は誤魔化すように言う。
「……うん。ありがとう。僕、用事あるからそろそろ行く」
いい人。
巡り合えるはずがない。
僕は二人を通り過ぎる。
が、
「用事?なんの?」
ケルが怪訝そうな顔で聞いてきた。
僕は振り向かずにボソッと漏らした。
「会いたい子がいるんだ」
「「会いたい子?」」
僕は走った。
(レオを心配そうに見つめる二人)
僕はひたすら走った。
頭の邪念を取り払いつつ全力で駆けた。
柵を乗り越えてライデン村から抜け出した僕は果てしなく広がる茂みへと走っていった。
『Aランクのモンスター出没地域につきCランク以下の人は立ち入り禁止』
と書かれた標識なんか軽く無視して僕は必死に走った。
小さな渓流を渡り、草を分けながら僕はある目的地に向かって移動する。
幸いなことにモンスターは現れなかった。
昔はここで死にかけたことがあるというのに、そんなトラウマは全然気にならなかった。
「はあ……はあ……」
息を切らしている僕の目の前にあるのは小さな扉だ。
草が生い茂る岩についているこの扉はところどころ錆がついており、人々が出入りした痕跡は見当たらない。
木漏れ日によってできたパターンが時間と共に形を変え、ドアの錆とよく調和している。
ここはSSランクのダンジョンの裏口だ。
正門はとても強い結界が貼られていて、ギルド会館と国王様の許可がないと入ることもできないのだ。
だが、僕はこの裏口のことを知っている。
ここに入るのはいつぶりだろう。
僕はアランのやつに煽られてここまでやってきた。
やつは僕にSS級の魔石を持ってこいと要求してきた。
もちろん、魔石を持ってきてアランのやつの傲慢稚気な鼻っ柱をへし折ってやりたい気持ちもある。
けれど、たとえ持ってきたとしても、やつは難癖をつけて僕を貶めていじめるに違いない。
ていうか、僕は確かめないといけないんだ。
あの子が、この中にいるのか。
今までいろんなことがあった。
苦しいこともいっぱいあったけど、カリナ様の助けや、喫茶店La Vitaの店主クザンさんの助けもあった。
僕が挫けそうになっても、まるで砂漠の中のオアシスを見つけたように、新たな導きが僕にはあった。
絶望の中でもその導きが道標となって僕をここに連れてきた。
だとしたら……
僕は最後の希望を胸に託して、錆び付いたドアの中に入った。
追記
藁にも縋る思い
僕の心の中で大きな何かが消失した感じがした。
けれど、僕はにっこり笑った。
「おめでとう!良かった!二人ともとても似合ってるよ!二人ならきっと幸せになれる!神様の祝福がありますように」
と、サムズアップして僕は二人を心の中で祝福した。
しかし、祝福すればするほど、僕の心は痛かった。
「ありがとう!レオ!全部レオのおかげだ。俺はレオのおかげで言葉の重さってのを思い知らされた。だからここまでやってこれたよ。エミリと結ばれたのも君のおかげだ」
ケルは後ろに行くにつれて唇を噛み締める。
昔のことをまだ気にしているのか。
大丈夫だよとずっと言ってるのに。
僕がケルを慈しむように見つめているとエミリが優しく言葉をかける。
「レオくんもきっといい人に巡り合えるはずよ」
言われた僕は誤魔化すように言う。
「……うん。ありがとう。僕、用事あるからそろそろ行く」
いい人。
巡り合えるはずがない。
僕は二人を通り過ぎる。
が、
「用事?なんの?」
ケルが怪訝そうな顔で聞いてきた。
僕は振り向かずにボソッと漏らした。
「会いたい子がいるんだ」
「「会いたい子?」」
僕は走った。
(レオを心配そうに見つめる二人)
僕はひたすら走った。
頭の邪念を取り払いつつ全力で駆けた。
柵を乗り越えてライデン村から抜け出した僕は果てしなく広がる茂みへと走っていった。
『Aランクのモンスター出没地域につきCランク以下の人は立ち入り禁止』
と書かれた標識なんか軽く無視して僕は必死に走った。
小さな渓流を渡り、草を分けながら僕はある目的地に向かって移動する。
幸いなことにモンスターは現れなかった。
昔はここで死にかけたことがあるというのに、そんなトラウマは全然気にならなかった。
「はあ……はあ……」
息を切らしている僕の目の前にあるのは小さな扉だ。
草が生い茂る岩についているこの扉はところどころ錆がついており、人々が出入りした痕跡は見当たらない。
木漏れ日によってできたパターンが時間と共に形を変え、ドアの錆とよく調和している。
ここはSSランクのダンジョンの裏口だ。
正門はとても強い結界が貼られていて、ギルド会館と国王様の許可がないと入ることもできないのだ。
だが、僕はこの裏口のことを知っている。
ここに入るのはいつぶりだろう。
僕はアランのやつに煽られてここまでやってきた。
やつは僕にSS級の魔石を持ってこいと要求してきた。
もちろん、魔石を持ってきてアランのやつの傲慢稚気な鼻っ柱をへし折ってやりたい気持ちもある。
けれど、たとえ持ってきたとしても、やつは難癖をつけて僕を貶めていじめるに違いない。
ていうか、僕は確かめないといけないんだ。
あの子が、この中にいるのか。
今までいろんなことがあった。
苦しいこともいっぱいあったけど、カリナ様の助けや、喫茶店La Vitaの店主クザンさんの助けもあった。
僕が挫けそうになっても、まるで砂漠の中のオアシスを見つけたように、新たな導きが僕にはあった。
絶望の中でもその導きが道標となって僕をここに連れてきた。
だとしたら……
僕は最後の希望を胸に託して、錆び付いたドアの中に入った。
追記
藁にも縋る思い
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