3 / 95
SSランクのダンジョン1
しおりを挟む
「貴族だろうと平民だろうと、いじめは校則によって固く禁じられています。なのに、登校時間に生徒たちが通っている正門近くでこれ見よがしにレオくんにひどいことをするなんて……ラオデキヤ王国のイメージに泥を塗りつけているのはレオくんじゃなくてアランさん、あなたではありませんか?そこの二人も」
アランと取り巻き二人を睥睨するカリナ様。
だが、アランは気にする風もなく頭を上げて口を開く。
「カリナ様……俺は常日頃からあなたの役に立つことを考えております」
図々しいアランの言い方にカリナ様は眉間に皺を寄せる。
「では、なぜ入学してから1年間もレオくんをいじめていたんですか?私は弱いものをいじめる人間が大嫌いですが」
問われたアランは頭をフル稼働させるように考える仕草を見せたのち、倒れている僕を睥睨して口角を吊り上げる。
「お邪魔虫は取り除かないといけませんから。お嬢様はずっとこの平民にお情けを施してきました。ですので、この下賎な雑種によってカリナお嬢様が汚される可能性があるのです。それは国家をも揺るがす危機につながりかねません。なんせ、カリナお嬢様は独り子ですので」
アランの言葉に周りは動揺し出した。
ほとんどの生徒は僕に軽蔑の視線を向けてくる。
僕がカリナ様に劣情を抱いているとでも言うのか。
でも、相手は宰相の一人娘だ。
そんな気持ちは持ってない。
むしろ、彼女に助けられれば助けられるほど、僕の惨めな現状に嘆いて、いつも自分を責めてきた。
このままだと、僕の評判はさらに落ちてくるんだろう。
まあ、落ちる評判なんてとっくに無くした。
と思っていると、
カリナ様が倒れている僕の方へやってきた。
そしてアランの使い魔であるウルによって生じたお腹の傷に手を当てる。
「っ!」
柔らかい感触もするが、それを上回る苦しみが増し加わる。
「ヒーリング」
カリナお嬢様は僕にヒールをかけてくれた。
彼女は三つの属性を持っている。
そのうち一つが治癒に関わるものだ。
しばしの時がたち、傷が治った僕のお腹を見て安堵したように息を吐くカリナ様。
そして僕の目を真っ直ぐ見つめて言うのだ。
「これで大丈夫よ」
「あ、ありがとうございます……カリナ様……」
彼女の真っ直ぐな蒼い瞳を見るたびに、自分は何もできない無能中の無能であることに気がつき、悲しくなった。
僕は目を逸らした。
すると、彼女は慈愛の表情をしたのち、横にいるメイドに目配せをする。
それからアランたちに言うのだ。
「あなたに助けられるほど私は弱くありません。私を怒らせないで」
「……」
タメ語になったことで、事態の深刻さを感知したアランは再び頭を下げる。
「承知いたしました」
それから倒れている僕を殺す勢いで睨んだのち、何かを思い出したかのように目を見開く。
「そういえば、もうすぐ王室主催の舞踏会が開かれますね。カリナお嬢様の綺麗なドレス姿、いかなる女性よりも美しいことでしょう。では」
と言い残して、取り巻き二人と共に立ち去る。
取り残された僕たち。
とりあえず立ち上がろう。
僕は立ち上がった。
そしたら、カリナお嬢様のそばにいた紫色の髪のメイド(サーラさん)が僕に紙切れ一枚を差し出す。
「メディチ家発行金匠手形……ラオデキヤ王国金貨2枚……ええ?なんでこれを僕に?」
これをラオデキヤ王国公認の金庫や銀行に持ち込めば、ラオデキヤ王国金貨2枚が手に入る。
ラオデキヤ王国金貨2枚は力仕事をする成人男性の二ヶ月分相当の給料だ。
僕が戸惑っていると、カリナ様が心配そうに言う。
「アランさんのいじめによってボロボロになった制服を捨てて新しい制服を買いなさい」
「い、いや……受け取れません!」
僕が両手をぶんぶん振って拒絶すると、メイドのサーラさんがジト目を向けてきた。
「こんな服を着たら、あなただけでなく、マホニア魔法学院の評判も下がることになりますから」
「……」
反論できない。
今の僕はこの学院において目の上のたんこぶのような存在だ。
そんな僕をカリナ様は助けようとしている。
いつもこんな感じだ。
1年間ずっと。
僕は悔しい表情をし、握り拳を作った。
僕は何もできない。
無能だ。
そんな否定的な考えに打ちひしがれていると、制服姿でメイド用のカチューシャをつけているサーラさんが素早く僕の手に金匠手形を差し込んできた。
そんな僕をみてカリナ様がにっこり笑って口を開く。
「私はレオくんのことを応援しているわよ」
微笑みを湛える彼女に僕は問う。
「どうして……こんな……こんな下賎な僕にここまでして下さるんですか?」
聞かずにはいられなかった。
アランと取り巻き二人を睥睨するカリナ様。
だが、アランは気にする風もなく頭を上げて口を開く。
「カリナ様……俺は常日頃からあなたの役に立つことを考えております」
図々しいアランの言い方にカリナ様は眉間に皺を寄せる。
「では、なぜ入学してから1年間もレオくんをいじめていたんですか?私は弱いものをいじめる人間が大嫌いですが」
問われたアランは頭をフル稼働させるように考える仕草を見せたのち、倒れている僕を睥睨して口角を吊り上げる。
「お邪魔虫は取り除かないといけませんから。お嬢様はずっとこの平民にお情けを施してきました。ですので、この下賎な雑種によってカリナお嬢様が汚される可能性があるのです。それは国家をも揺るがす危機につながりかねません。なんせ、カリナお嬢様は独り子ですので」
アランの言葉に周りは動揺し出した。
ほとんどの生徒は僕に軽蔑の視線を向けてくる。
僕がカリナ様に劣情を抱いているとでも言うのか。
でも、相手は宰相の一人娘だ。
そんな気持ちは持ってない。
むしろ、彼女に助けられれば助けられるほど、僕の惨めな現状に嘆いて、いつも自分を責めてきた。
このままだと、僕の評判はさらに落ちてくるんだろう。
まあ、落ちる評判なんてとっくに無くした。
と思っていると、
カリナ様が倒れている僕の方へやってきた。
そしてアランの使い魔であるウルによって生じたお腹の傷に手を当てる。
「っ!」
柔らかい感触もするが、それを上回る苦しみが増し加わる。
「ヒーリング」
カリナお嬢様は僕にヒールをかけてくれた。
彼女は三つの属性を持っている。
そのうち一つが治癒に関わるものだ。
しばしの時がたち、傷が治った僕のお腹を見て安堵したように息を吐くカリナ様。
そして僕の目を真っ直ぐ見つめて言うのだ。
「これで大丈夫よ」
「あ、ありがとうございます……カリナ様……」
彼女の真っ直ぐな蒼い瞳を見るたびに、自分は何もできない無能中の無能であることに気がつき、悲しくなった。
僕は目を逸らした。
すると、彼女は慈愛の表情をしたのち、横にいるメイドに目配せをする。
それからアランたちに言うのだ。
「あなたに助けられるほど私は弱くありません。私を怒らせないで」
「……」
タメ語になったことで、事態の深刻さを感知したアランは再び頭を下げる。
「承知いたしました」
それから倒れている僕を殺す勢いで睨んだのち、何かを思い出したかのように目を見開く。
「そういえば、もうすぐ王室主催の舞踏会が開かれますね。カリナお嬢様の綺麗なドレス姿、いかなる女性よりも美しいことでしょう。では」
と言い残して、取り巻き二人と共に立ち去る。
取り残された僕たち。
とりあえず立ち上がろう。
僕は立ち上がった。
そしたら、カリナお嬢様のそばにいた紫色の髪のメイド(サーラさん)が僕に紙切れ一枚を差し出す。
「メディチ家発行金匠手形……ラオデキヤ王国金貨2枚……ええ?なんでこれを僕に?」
これをラオデキヤ王国公認の金庫や銀行に持ち込めば、ラオデキヤ王国金貨2枚が手に入る。
ラオデキヤ王国金貨2枚は力仕事をする成人男性の二ヶ月分相当の給料だ。
僕が戸惑っていると、カリナ様が心配そうに言う。
「アランさんのいじめによってボロボロになった制服を捨てて新しい制服を買いなさい」
「い、いや……受け取れません!」
僕が両手をぶんぶん振って拒絶すると、メイドのサーラさんがジト目を向けてきた。
「こんな服を着たら、あなただけでなく、マホニア魔法学院の評判も下がることになりますから」
「……」
反論できない。
今の僕はこの学院において目の上のたんこぶのような存在だ。
そんな僕をカリナ様は助けようとしている。
いつもこんな感じだ。
1年間ずっと。
僕は悔しい表情をし、握り拳を作った。
僕は何もできない。
無能だ。
そんな否定的な考えに打ちひしがれていると、制服姿でメイド用のカチューシャをつけているサーラさんが素早く僕の手に金匠手形を差し込んできた。
そんな僕をみてカリナ様がにっこり笑って口を開く。
「私はレオくんのことを応援しているわよ」
微笑みを湛える彼女に僕は問う。
「どうして……こんな……こんな下賎な僕にここまでして下さるんですか?」
聞かずにはいられなかった。
20
お気に入りに追加
1,653
あなたにおすすめの小説

クラス転移で無能判定されて追放されたけど、努力してSSランクのチートスキルに進化しました~【生命付与】スキルで異世界を自由に楽しみます~
いちまる
ファンタジー
ある日、クラスごと異世界に召喚されてしまった少年、天羽イオリ。
他のクラスメートが強力なスキルを発現させてゆく中、イオリだけが最低ランクのEランクスキル【生命付与】の持ち主だと鑑定される。
「無能は不要だ」と判断した他の生徒や、召喚した張本人である神官によって、イオリは追放され、川に突き落とされた。
しかしそこで、川底に沈んでいた謎の男の力でスキルを強化するチャンスを得た――。
1千年の努力とともに、イオリのスキルはSSランクへと進化!
自分を拾ってくれた田舎町のアイテムショップで、チートスキルをフル稼働!
「転移者が世界を良くする?」
「知らねえよ、俺は異世界を自由気ままに楽しむんだ!」
追放された少年の第2の人生が、始まる――!
※本作品は他サイト様でも掲載中です。

特殊部隊の俺が転生すると、目の前で絶世の美人母娘が犯されそうで助けたら、とんでもないヤンデレ貴族だった
なるとし
ファンタジー
鷹取晴翔(たかとりはると)は陸上自衛隊のとある特殊部隊に所属している。だが、ある日、訓練の途中、不慮の事故に遭い、異世界に転生することとなる。
特殊部隊で使っていた武器や防具などを召喚できる特殊能力を謎の存在から授かり、目を開けたら、絶世の美女とも呼ばれる母娘が男たちによって犯されそうになっていた。
武装状態の鷹取晴翔は、持ち前の優秀な身体能力と武器を使い、その母娘と敷地にいる使用人たちを救う。
だけど、その母と娘二人は、
とおおおおんでもないヤンデレだった……
第3回次世代ファンタジーカップに出すために一部を修正して投稿したものです。
スライム10,000体討伐から始まるハーレム生活
昼寝部
ファンタジー
この世界は12歳になったら神からスキルを授かることができ、俺も12歳になった時にスキルを授かった。
しかし、俺のスキルは【@&¥#%】と正しく表記されず、役に立たないスキルということが判明した。
そんな中、両親を亡くした俺は妹に不自由のない生活を送ってもらうため、冒険者として活動を始める。
しかし、【@&¥#%】というスキルでは強いモンスターを討伐することができず、3年間冒険者をしてもスライムしか倒せなかった。
そんなある日、俺がスライムを10,000体討伐した瞬間、スキル【@&¥#%】がチートスキルへと変化して……。
これは、ある日突然、最強の冒険者となった主人公が、今まで『スライムしか倒せないゴミ』とバカにしてきた奴らに“ざまぁ”し、美少女たちと幸せな日々を過ごす物語。

最強無敗の少年は影を従え全てを制す
ユースケ
ファンタジー
不慮の事故により死んでしまった大学生のカズトは、異世界に転生した。
産まれ落ちた家は田舎に位置する辺境伯。
カズトもといリュートはその家系の長男として、日々貴族としての教養と常識を身に付けていく。
しかし彼の力は生まれながらにして最強。
そんな彼が巻き起こす騒動は、常識を越えたものばかりで……。
最強の職業は解体屋です! ゴミだと思っていたエクストラスキル『解体』が実は超有能でした
服田 晃和
ファンタジー
旧題:最強の職業は『解体屋』です!〜ゴミスキルだと思ってたエクストラスキル『解体』が実は最強のスキルでした〜
大学を卒業後建築会社に就職した普通の男。しかし待っていたのは設計や現場監督なんてカッコいい職業ではなく「解体作業」だった。来る日も来る日も使わなくなった廃ビルや、人が居なくなった廃屋を解体する日々。そんなある日いつものように廃屋を解体していた男は、大量のゴミに押しつぶされてしまい突然の死を迎える。
目が覚めるとそこには自称神様の金髪美少女が立っていた。その神様からは自分の世界に戻り輪廻転生を繰り返すか、できれば剣と魔法の世界に転生して欲しいとお願いされた俺。だったら、せめてサービスしてくれないとな。それと『魔法』は絶対に使えるようにしてくれよ!なんたってファンタジーの世界なんだから!
そうして俺が転生した世界は『職業』が全ての世界。それなのに俺の職業はよく分からない『解体屋』だって?貴族の子に生まれたのに、『魔導士』じゃなきゃ追放らしい。優秀な兄は勿論『魔導士』だってさ。
まぁでもそんな俺にだって、魔法が使えるんだ!えっ?神様の不手際で魔法が使えない?嘘だろ?家族に見放され悲しい人生が待っていると思った矢先。まさかの魔法も剣も極められる最強のチート職業でした!!
魔法を使えると思って転生したのに魔法を使う為にはモンスター討伐が必須!まずはスライムから行ってみよう!そんな男の楽しい冒険ファンタジー!

異世界でリサイクルショップ!俺の高価買取り!
理太郎
ファンタジー
坂木 新はリサイクルショップの店員だ。
ある日、買い取りで査定に不満を持った客に恨みを持たれてしまう。
仕事帰りに襲われて、気が付くと見知らぬ世界のベッドの上だった。

異世界召喚でクラスの勇者達よりも強い俺は無能として追放処刑されたので自由に旅をします
Dakurai
ファンタジー
クラスで授業していた不動無限は突如と教室が光に包み込まれ気がつくと異世界に召喚されてしまった。神による儀式でとある神によってのスキルを得たがスキルが強すぎてスキル無しと勘違いされ更にはクラスメイトと王女による思惑で追放処刑に会ってしまうしかし最強スキルと聖獣のカワウソによって難を逃れと思ったらクラスの女子中野蒼花がついてきた。
相棒のカワウソとクラスの中野蒼花そして異世界の仲間と共にこの世界を自由に旅をします。
現在、第三章フェレスト王国エルフ編

クラス召喚に巻き込まれてしまいました…… ~隣のクラスがクラス召喚されたけど俺は別のクラスなのでお呼びじゃないみたいです~
はなとすず
ファンタジー
俺は佐藤 響(さとう ひびき)だ。今年、高校一年になって高校生活を楽しんでいる。
俺が通う高校はクラスが4クラスある。俺はその中で2組だ。高校には仲のいい友達もいないしもしかしたらこのままボッチかもしれない……コミュニケーション能力ゼロだからな。
ある日の昼休み……高校で事は起こった。
俺はたまたま、隣のクラス…1組に行くと突然教室の床に白く光る模様が現れ、その場にいた1組の生徒とたまたま教室にいた俺は異世界に召喚されてしまった。
しかも、召喚した人のは1組だけで違うクラスの俺はお呼びじゃないらしい。だから俺は、一人で異世界を旅することにした。
……この物語は一人旅を楽しむ俺の物語……のはずなんだけどなぁ……色々、トラブルに巻き込まれながら俺は異世界生活を謳歌します!
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる