特殊部隊の俺が転生すると、目の前で絶世の美人母娘が犯されそうで助けたら、とんでもないヤンデレ貴族だった

なるとし

文字の大きさ
上 下
64 / 66

獲物は狩人の毒牙にかかり、死んでゆく2

しおりを挟む

X X X
 
 ノースミンスター寺院

 朝ごはんを食べ終わった俺たちが馬車に乗って向かったのは、アニエスさんの夫でありアリスとカロルの父にあたるケルツさんが埋葬されているノースミンスター寺院。ちなみにシエスタさんが馬車を運転した。

「……お父様」
「パパ……」

 ケルツさんのものと思しき墓に花を手向けるアリスとカロル。二人の表情を見ると、ケルツさんが自分の娘たちをどれほど愛していたのかがよくわかる。涙こそ流してないが、在りし日に思いを馳せているアリスとカロルからは俺が踏み込めないオーラが漂っているように見える。

「きっと、夫が生きていたら、ハルトくんと仲良くなれたと思うわ……」

 アニエスさんが色っぽい声で俺の耳に囁く。

「きっとそうですわ。ハルトお兄様と一緒にいたら、私たちを愛してくれたパパと同じ匂いを感じますの」
「そうね。だから私たちがハルトをもっと好きになったと思うわ。血が繋がってない異性をこんなに好きになったことは初めてだから……」
「みんな……」

 三人の美人母娘は俺が感じている壁を簡単に壊して手を差し伸べてくれる。

 生まれ育った環境も違って価値観も違う俺たち。だけど、俺の心は満たされている。だから、

 俺の気持ちをちゃんと三人に伝えよう。

「俺は両親を亡くしていら、ずっとドス黒い気持ちを抱えて生きていました」

 俺が話し始めると、3美女は俺に向き直って耳をそばだてる。

「この気持ちが一体なんなのか、俺は頭を必死に振り絞って探していました。けど、探せば探すほど俺の心が締め付けられるように苦しくなって」
「「……」」
「だけど、アニエス様とアリスとカロルに出会ってからは、全てが変わりました。俺を優しく包み込んでくれたアニエス様と妹みたいに甘える可愛いカロル、そして俺をいつも助けてくれるアリスまで……もうこのドス黒い感情を感じることはありません。今は全てが抉り取られたように心が空っぽで……だから俺は感謝の気持ちを伝えたいです。アニエス様に、アリスに、カロルに……そして三人に愛を注いでくれたケルツさんにも!」

 潤んだ目を誤魔化すように俺は笑顔を作る。

 すると、

「ハルトくんが抱えてきたドス黒い感情はおそらく寂しさだと思うわ」
「寂しさ……」
「そうですわ!お兄様は私たちと同じく悲しい過去を背負っていますから、私、わかる気がしますの!」
「ええ、それはきっと寂しさよ」
「そうか……」

 俺は、日本にいる間、ずっと寂しさを感じていたというのか。それが寂しさとわからずに黙々と生きていたというのか。

 長年、俺を悩ませた謎の答えを教えてくれたアニエスさんたち。もう俺たちの間に壁など存在しない。

 そう安堵のため息をついて、俺とアニエスさんは花を手向けた。

 ケルツさん

 俺、この三人を守り抜いて見せます。

 そう心の中で誓うと、

 三人はまた俺にねちこい視線を送ってくる。

 アニエスさんが話し始めた。
 
「ハルトくん」
「は、はい」
「実は私たちもずっとドス黒い感情を抱えていたわ」
「そ、そうですか?」
「そう。でも、ハルトくんとは違って、だんだん大きくなっていくのよね」
「それは大変だ……」
「ううん。大変じゃないわ。だって、このドス黒い感情を、空っぽになったハルトくんの心に全部注ぎこむから」
「っ!」

 色っぽく粘っこい声音でアニエスさんが言うと、カロルがバトンを継ぐ。

「ハルトお兄様は……私、もっと甘えたいんですの……とろけるほどに……」
「か、カロル!?」

 ルビーのような瞳で俺を捉えるカロルは、目が死んでいる。

「ハルト……私たちはまだ婚約したばかりよ。だから、溺れるほどの重い愛を晴翔にずっと向けるから……」
「アリスまで……」

 生気のないRGBの光は鎖につながった俺の心を徐々に手繰り寄せる気がする。
 
 おい……ここは墓地だぞ。

 微かに残る俺の理性は、ここから早く抜け出すようにと必死に訴えかけるが、




『ハルトくん、頑張れ!俺の妻と娘たちの愛はとおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおっても重いよ~』





 と、誰かが俺に囁きかける気がした頃には、






 俺の目も死んでいた。

 



 まるで、狩人の毒牙にかかった獲物のように。
しおりを挟む
感想 5

あなたにおすすめの小説

【完結】幼馴染にフラれて異世界ハーレム風呂で優しく癒されてますが、好感度アップに未練タラタラなのが役立ってるとは気付かず、世界を救いました。

三矢さくら
ファンタジー
【本編完結】⭐︎気分どん底スタート、あとはアガるだけの異世界純情ハーレム&バトルファンタジー⭐︎ 長年思い続けた幼馴染にフラれたショックで目の前が全部真っ白になったと思ったら、これ異世界召喚ですか!? しかも、フラれたばかりのダダ凹みなのに、まさかのハーレム展開。まったくそんな気分じゃないのに、それが『シキタリ』と言われては断りにくい。毎日混浴ですか。そうですか。赤面しますよ。 ただ、召喚されたお城は、落城寸前の風前の灯火。伝説の『マレビト』として召喚された俺、百海勇吾(18)は、城主代行を任されて、城に襲い掛かる謎のバケモノたちに立ち向かうことに。 といっても、発現するらしいチートは使えないし、お城に唯一いた呪術師の第4王女様は召喚の呪術の影響で、眠りっ放し。 とにかく、俺を取り囲んでる女子たちと、お城の皆さんの気持ちをまとめて闘うしかない! フラれたばかりで、そんな気分じゃないんだけどなぁ!

スライム10,000体討伐から始まるハーレム生活

昼寝部
ファンタジー
 この世界は12歳になったら神からスキルを授かることができ、俺も12歳になった時にスキルを授かった。  しかし、俺のスキルは【@&¥#%】と正しく表記されず、役に立たないスキルということが判明した。  そんな中、両親を亡くした俺は妹に不自由のない生活を送ってもらうため、冒険者として活動を始める。  しかし、【@&¥#%】というスキルでは強いモンスターを討伐することができず、3年間冒険者をしてもスライムしか倒せなかった。  そんなある日、俺がスライムを10,000体討伐した瞬間、スキル【@&¥#%】がチートスキルへと変化して……。  これは、ある日突然、最強の冒険者となった主人公が、今まで『スライムしか倒せないゴミ』とバカにしてきた奴らに“ざまぁ”し、美少女たちと幸せな日々を過ごす物語。

勇者一行から追放された二刀流使い~仲間から捜索願いを出されるが、もう遅い!~新たな仲間と共に魔王を討伐ス

R666
ファンタジー
アマチュアニートの【二龍隆史】こと36歳のおっさんは、ある日を境に実の両親達の手によって包丁で腹部を何度も刺されて地獄のような痛みを味わい死亡。 そして彼の魂はそのまま天界へ向かう筈であったが女神を自称する危ない女に呼び止められると、ギフトと呼ばれる最強の特典を一つだけ選んで、異世界で勇者達が魔王を討伐できるように手助けをして欲しいと頼み込まれた。 最初こそ余り乗り気ではない隆史ではあったが第二の人生を始めるのも悪くないとして、ギフトを一つ選び女神に言われた通りに勇者一行の手助けをするべく異世界へと乗り込む。 そして異世界にて真面目に勇者達の手助けをしていたらチキン野郎の役立たずという烙印を押されてしまい隆史は勇者一行から追放されてしまう。 ※これは勇者一行から追放された最凶の二刀流使いの隆史が新たな仲間を自ら探して、自分達が新たな勇者一行となり魔王を討伐するまでの物語である※

解呪の魔法しか使えないからとSランクパーティーから追放された俺は、呪いをかけられていた美少女ドラゴンを拾って最強へと至る

早見羽流
ファンタジー
「ロイ・クノール。お前はもう用無しだ」 解呪の魔法しか使えない初心者冒険者の俺は、呪いの宝箱を解呪した途端にSランクパーティーから追放され、ダンジョンの最深部へと蹴り落とされてしまう。 そこで出会ったのは封印された邪龍。解呪の能力を使って邪龍の封印を解くと、なんとそいつは美少女の姿になり、契約を結んで欲しいと頼んできた。 彼女は元は世界を守護する守護龍で、英雄や女神の陰謀によって邪龍に堕とされ封印されていたという。契約を結んだ俺は彼女を救うため、守護龍を封印し世界を牛耳っている女神や英雄の血を引く王家に立ち向かうことを誓ったのだった。 (1話2500字程度、1章まで完結保証です)

性的に襲われそうだったので、男であることを隠していたのに、女性の本能か男であることがバレたんですが。

狼狼3
ファンタジー
男女比1:1000という男が極端に少ない魔物や魔法のある異世界に、彼は転生してしまう。 街中を歩くのは女性、女性、女性、女性。街中を歩く男は滅多に居ない。森へ冒険に行こうとしても、襲われるのは魔物ではなく女性。女性は男が居ないか、いつも目を光らせている。 彼はそんな世界な為、男であることを隠して女として生きる。(フラグ)

役立たずと言われダンジョンで殺されかけたが、実は最強で万能スキルでした !

本条蒼依
ファンタジー
地球とは違う異世界シンアースでの物語。  主人公マルクは神聖の儀で何にも反応しないスキルを貰い、絶望の淵へと叩き込まれる。 その役に立たないスキルで冒険者になるが、役立たずと言われダンジョンで殺されかけるが、そのスキルは唯一無二の万能スキルだった。  そのスキルで成り上がり、ダンジョンで裏切った人間は落ちぶれざまあ展開。 主人公マルクは、そのスキルで色んなことを解決し幸せになる。  ハーレム要素はしばらくありません。

異世界召喚でクラスの勇者達よりも強い俺は無能として追放処刑されたので自由に旅をします

Dakurai
ファンタジー
クラスで授業していた不動無限は突如と教室が光に包み込まれ気がつくと異世界に召喚されてしまった。神による儀式でとある神によってのスキルを得たがスキルが強すぎてスキル無しと勘違いされ更にはクラスメイトと王女による思惑で追放処刑に会ってしまうしかし最強スキルと聖獣のカワウソによって難を逃れと思ったらクラスの女子中野蒼花がついてきた。 相棒のカワウソとクラスの中野蒼花そして異世界の仲間と共にこの世界を自由に旅をします。 現在、第三章フェレスト王国エルフ編

スキル間違いの『双剣士』~一族の恥だと追放されたが、追放先でスキルが覚醒。気が付いたら最強双剣士に~

きょろ
ファンタジー
この世界では5歳になる全ての者に『スキル』が与えられる――。 洗礼の儀によってスキル『片手剣』を手にしたグリム・レオハートは、王国で最も有名な名家の長男。 レオハート家は代々、女神様より剣の才能を与えられる事が多い剣聖一族であり、グリムの父は王国最強と謳われる程の剣聖であった。 しかし、そんなレオハート家の長男にも関わらずグリムは全く剣の才能が伸びなかった。 スキルを手にしてから早5年――。 「貴様は一族の恥だ。最早息子でも何でもない」 突如そう父に告げられたグリムは、家族からも王国からも追放され、人が寄り付かない辺境の森へと飛ばされてしまった。 森のモンスターに襲われ絶対絶命の危機に陥ったグリム。ふと辺りを見ると、そこには過去に辺境の森に飛ばされたであろう者達の骨が沢山散らばっていた。 それを見つけたグリムは全てを諦め、最後に潔く己の墓を建てたのだった。 「どうせならこの森で1番派手にしようか――」 そこから更に8年――。 18歳になったグリムは何故か辺境の森で最強の『双剣士』となっていた。 「やべ、また力込め過ぎた……。双剣じゃやっぱ強すぎるな。こりゃ1本は飾りで十分だ」 最強となったグリムの所へ、ある日1体の珍しいモンスターが現れた。 そして、このモンスターとの出会いがグレイの運命を大きく動かす事となる――。

処理中です...