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赤色青色緑色の糸は獲物を正確に捉えていた2
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「これは一体……」
「食事をした際、妹みたいな存在が居ればいいと言ってましたわね?」
「あ、ああ……」
「妹なら、ここにいますわ」
「カロルが……俺の妹?」
「はい。もちろん、血は混ざってないので好都……残念ですが、私もずっとお兄様が欲しかったですの……」
「なるほど。そういう意味だったか。だとしたら別にお兄様って呼んでいいよ。様で呼ばわれるのはちょっと恥ずかしいけど」
「お兄様……ハルトお兄様……はあ……」
そう言ってカロルは、口角を吊り上げて、晴翔の手首を握っている自分の手に力をもっと入れる。まるで自分の体の一部にしようとするように。
だけど、二人は名残惜しそうに晴翔の手を離した。が、二人は宝石より美しい瞳から発せられる眼光を向けて晴翔をロック続ける。
そして二人は同時に口を開いた。
「ずっと待っているから」
「ずっと待っていますわ」
二人は魔法を使っているわけではない。しかし、外見、仕草、言葉、視線、香り、重い愛はがあわさって晴翔を絡めとる。
「ああ。絶対また来る」
晴翔から返事を聞いた二人は甘美なる吐息を漏らし、優しく微笑む。彼の言葉と目が二人に確信を持たせた。
晴翔の後ろ姿を見る二人の姿は恋する乙女のそれと似ているが、どこかドス黒い何かを孕んでいるようにも見える。
そんな二人に後ろから誰かが声をかけてきた。
「アリス、カロル」
名前を呼ばれた二人ははたと目を見開いて、振り向く。すると、そこには、少し上気した自分達の美しい母が立っている。
「ハルト様は、アリスと、カロルを幸せに出来る男ですわ。だから」
一旦切って、呼吸を整えるアニエス。そんな彼女をみて二人の娘は固唾を飲む。
「公爵家の娘だからといって、してもらうことばかり考えてはなりませんわよ。理想の男がいれば、身動きが取れなくなるまで絡め取って、愛を捧げるのです。蕩けるほどの愛を……」
「はい、お母様」
「はい、ママ」
3人の美人母娘は、すでに居なくなって晴翔が通った道に視線を送る。彼はもういないが、この3美女が放った赤色青色緑色の糸は、彼を体を正確に捉えていた。
「アリス、カロル、部屋に戻って紅茶でも飲みながらハルト様の話をしましょう」
「はい……私、お兄様のこともっと知りたいですわ」
「一緒に過ごした時間はほんの僅かだけれど、これからはたっぷりとご主人様のことを知っていくから……」
身長も性格も、言葉遣いも、瞳の色も違うけど、
この母娘が彼に向ける重い愛は同じ形をしていて、
彼を徐々に締め付けようとする。
だけど、彼に迷惑をかけてはならない。ただ単に自分達の心を彼にぶつけるのは無粋というものだ。
彼を「自分達の愛」という小さくて深くてドス黒い坩堝《るつぼ》に浸かせて、彼の全てを解放させ、自分達も彼も幸せを手に入れる。
そんなことを考えながら、三美女は瀟洒な邸宅の中に入った。
その様子を遠いところから見つめていたシエスタというメイド長は、密かに呟く。
「間も無く王室主催のパーティーが開かれるけど、晴翔様が冒険者としてでなく、アリスお嬢様の婚約者として参加できればいいのに……」
そう心配そうに呟いてから、やがて闘志を燃やし、握り拳を作るシエスタメイド長もまた煌びやかな邸宅の中に入った。
X X X
「ははは……間も無く王室主催パーティーが開かれる。そこで、僕の強さと優秀さをみんなに見せつけて、リンスター公爵の爵位とあの美しい女を……ははは!この力さえあれば……僕はクラス5なんかよりも強くなれる!」
追記
熱いのおお
「食事をした際、妹みたいな存在が居ればいいと言ってましたわね?」
「あ、ああ……」
「妹なら、ここにいますわ」
「カロルが……俺の妹?」
「はい。もちろん、血は混ざってないので好都……残念ですが、私もずっとお兄様が欲しかったですの……」
「なるほど。そういう意味だったか。だとしたら別にお兄様って呼んでいいよ。様で呼ばわれるのはちょっと恥ずかしいけど」
「お兄様……ハルトお兄様……はあ……」
そう言ってカロルは、口角を吊り上げて、晴翔の手首を握っている自分の手に力をもっと入れる。まるで自分の体の一部にしようとするように。
だけど、二人は名残惜しそうに晴翔の手を離した。が、二人は宝石より美しい瞳から発せられる眼光を向けて晴翔をロック続ける。
そして二人は同時に口を開いた。
「ずっと待っているから」
「ずっと待っていますわ」
二人は魔法を使っているわけではない。しかし、外見、仕草、言葉、視線、香り、重い愛はがあわさって晴翔を絡めとる。
「ああ。絶対また来る」
晴翔から返事を聞いた二人は甘美なる吐息を漏らし、優しく微笑む。彼の言葉と目が二人に確信を持たせた。
晴翔の後ろ姿を見る二人の姿は恋する乙女のそれと似ているが、どこかドス黒い何かを孕んでいるようにも見える。
そんな二人に後ろから誰かが声をかけてきた。
「アリス、カロル」
名前を呼ばれた二人ははたと目を見開いて、振り向く。すると、そこには、少し上気した自分達の美しい母が立っている。
「ハルト様は、アリスと、カロルを幸せに出来る男ですわ。だから」
一旦切って、呼吸を整えるアニエス。そんな彼女をみて二人の娘は固唾を飲む。
「公爵家の娘だからといって、してもらうことばかり考えてはなりませんわよ。理想の男がいれば、身動きが取れなくなるまで絡め取って、愛を捧げるのです。蕩けるほどの愛を……」
「はい、お母様」
「はい、ママ」
3人の美人母娘は、すでに居なくなって晴翔が通った道に視線を送る。彼はもういないが、この3美女が放った赤色青色緑色の糸は、彼を体を正確に捉えていた。
「アリス、カロル、部屋に戻って紅茶でも飲みながらハルト様の話をしましょう」
「はい……私、お兄様のこともっと知りたいですわ」
「一緒に過ごした時間はほんの僅かだけれど、これからはたっぷりとご主人様のことを知っていくから……」
身長も性格も、言葉遣いも、瞳の色も違うけど、
この母娘が彼に向ける重い愛は同じ形をしていて、
彼を徐々に締め付けようとする。
だけど、彼に迷惑をかけてはならない。ただ単に自分達の心を彼にぶつけるのは無粋というものだ。
彼を「自分達の愛」という小さくて深くてドス黒い坩堝《るつぼ》に浸かせて、彼の全てを解放させ、自分達も彼も幸せを手に入れる。
そんなことを考えながら、三美女は瀟洒な邸宅の中に入った。
その様子を遠いところから見つめていたシエスタというメイド長は、密かに呟く。
「間も無く王室主催のパーティーが開かれるけど、晴翔様が冒険者としてでなく、アリスお嬢様の婚約者として参加できればいいのに……」
そう心配そうに呟いてから、やがて闘志を燃やし、握り拳を作るシエスタメイド長もまた煌びやかな邸宅の中に入った。
X X X
「ははは……間も無く王室主催パーティーが開かれる。そこで、僕の強さと優秀さをみんなに見せつけて、リンスター公爵の爵位とあの美しい女を……ははは!この力さえあれば……僕はクラス5なんかよりも強くなれる!」
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熱いのおお
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