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獲物を狙う鷹よりドス黒い何か1
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王室主催のパーティ会場にて
煌びやかなシャンデリアが最上級絨毯を照らしている。その上には象牙と最上級のレバノン杉で作ったテーブルの数々があり、銀で作った食器やら金で作った盃やら王宮御用達の一流料理人が作った山海珍味やらがずらりと並んでいる。あたかも満漢全席を彷彿とさせるビジュアル。
そして、贅沢の限りを尽くしたパーティを楽しむ上流階級の人たち。その中でも異彩を放つ二人が二人用のテーブルの椅子に鎮座していた。
「みてみて、アリス様とカロル様だよ!お美しい」
「ここラオデキヤ王国における最も美しい姉妹だよね」
「ああ!顔もさることながらお体まで完璧……この世の人とは思えないな」
「俺みたいな伯爵の長男なんかがアピールしても相手にすらされないんだよね……」
「王族からの求婚も一発で断ったからそりゃそうだろうよ」
「本当に住む次元が違うね」
「まるで二つの薔薇が咲いているみたい……」
「この前、謎の集団が敷地を襲ったと聞いたけど、無事に解決したみたいね」
「ああ、噂だと、あの集団は魔法無効化手錠を持っていたらしくて、今王宮管轄の監獄で拷問を受けているらしいよ」
「物騒な世の中になったもんだな」
伯爵やお金持ちの子爵の御子息、御子女と思しき男女が、大人しくお茶を飲んでいるドレス姿の美人姉妹に視線を向けながら話し合っている。
すると、ある若い男一人が美人姉妹の方へと近づいていく。
「アリスお嬢様、カロルお嬢様、お久しぶりでございます」
金髪の男性は会釈をして、笑顔を浮かべた。
その瞬間、美人姉妹は一瞬、冷め切った視線を互いに送って、作り笑いして目の前の男に返事する。
「(カロル)久しぶりですわ」
「(アリス)久しぶりです」
「この前は、謎の集団から屋敷が襲撃されたと聞いてだいぶ驚きました。もし、僕があの場にいたら……3人を安全に守れたはずなのに……悔しい限りです」
この若い金髪の男が握り拳を作り悔しがっていると、妹のカロルが口を開く。
「大丈夫ですよ!私たちは無事なので!ねえ?お姉様?」
「ええ、私たちは全員無事です。お気遣いありがとう」
「もし、何かあればいつでも呼んでください。マンチェスター伯爵家の次男である僕・アランがいつでも駆けつけます」
と言ってから、アランという男は片膝を絨毯にくっつけ頭を下げる。
その彼を見たアリスは、顔を引き攣らせて言葉を発した。
「ええ、気が向いたら呼びましょう」
「僕はアリスお嬢様のためならいつでも命を捨てる覚悟ができております」
「そう?」
「はい」
「じゃ、下がってくれないかしら?私、カロルとお茶が飲みたいの」
「……」
アランという男は、頭を下げたまま顔を歪ませた。
「わかりました。もし、ダンスが踊りたくなったらいつでも僕をお呼びください」
と言って、アランという男は下がった。
そしてその光景を遠いところから見ていた貴族たちが口々にいう。
「あいつも玉砕だな」
「マンチェスター伯爵家の次男か……アリス様と結婚したら、リンスター公爵と名乗ることができるから下心丸見えだけどな。顔はイケメンだけど、あのお二方とは釣り合わない」
X X X
パーティが終わって、姉のアリスと妹のカロルは高級そうな馬車に乗り、帰路についている。
だけど、二人とも表情が暗い。
「気持ち悪い……」
と、アリスが小声で呟くと、カロルが姉の手を掴んで、心配そうに言う。
「お姉様……やっぱりパーティには参加しない方がよかったんですわ」
「……お母様と王族の方々の面子を潰すわけにはいかないんだもの」
「それは……そうなんですけど」
このパーティは前々から参加が決まったことで、事故にあったとしても、王族側からの頼み事を反故にするわけにはいかないという大人の事情をアリスはよく知っている。
だけど、いくら事情を理解しているアリスだと言えども、燃え盛る怒りを抑えることはできずにいる。妹のカロルも同じだ。
パーティ会場でアランという男が見せたあの表情。この姉妹はアランの表情の奥底に隠れている秘密を知っている。
自分を犯そうとしていた男たちが見せていた表情と同じだった。
王室主催のパーティ会場にて
煌びやかなシャンデリアが最上級絨毯を照らしている。その上には象牙と最上級のレバノン杉で作ったテーブルの数々があり、銀で作った食器やら金で作った盃やら王宮御用達の一流料理人が作った山海珍味やらがずらりと並んでいる。あたかも満漢全席を彷彿とさせるビジュアル。
そして、贅沢の限りを尽くしたパーティを楽しむ上流階級の人たち。その中でも異彩を放つ二人が二人用のテーブルの椅子に鎮座していた。
「みてみて、アリス様とカロル様だよ!お美しい」
「ここラオデキヤ王国における最も美しい姉妹だよね」
「ああ!顔もさることながらお体まで完璧……この世の人とは思えないな」
「俺みたいな伯爵の長男なんかがアピールしても相手にすらされないんだよね……」
「王族からの求婚も一発で断ったからそりゃそうだろうよ」
「本当に住む次元が違うね」
「まるで二つの薔薇が咲いているみたい……」
「この前、謎の集団が敷地を襲ったと聞いたけど、無事に解決したみたいね」
「ああ、噂だと、あの集団は魔法無効化手錠を持っていたらしくて、今王宮管轄の監獄で拷問を受けているらしいよ」
「物騒な世の中になったもんだな」
伯爵やお金持ちの子爵の御子息、御子女と思しき男女が、大人しくお茶を飲んでいるドレス姿の美人姉妹に視線を向けながら話し合っている。
すると、ある若い男一人が美人姉妹の方へと近づいていく。
「アリスお嬢様、カロルお嬢様、お久しぶりでございます」
金髪の男性は会釈をして、笑顔を浮かべた。
その瞬間、美人姉妹は一瞬、冷め切った視線を互いに送って、作り笑いして目の前の男に返事する。
「(カロル)久しぶりですわ」
「(アリス)久しぶりです」
「この前は、謎の集団から屋敷が襲撃されたと聞いてだいぶ驚きました。もし、僕があの場にいたら……3人を安全に守れたはずなのに……悔しい限りです」
この若い金髪の男が握り拳を作り悔しがっていると、妹のカロルが口を開く。
「大丈夫ですよ!私たちは無事なので!ねえ?お姉様?」
「ええ、私たちは全員無事です。お気遣いありがとう」
「もし、何かあればいつでも呼んでください。マンチェスター伯爵家の次男である僕・アランがいつでも駆けつけます」
と言ってから、アランという男は片膝を絨毯にくっつけ頭を下げる。
その彼を見たアリスは、顔を引き攣らせて言葉を発した。
「ええ、気が向いたら呼びましょう」
「僕はアリスお嬢様のためならいつでも命を捨てる覚悟ができております」
「そう?」
「はい」
「じゃ、下がってくれないかしら?私、カロルとお茶が飲みたいの」
「……」
アランという男は、頭を下げたまま顔を歪ませた。
「わかりました。もし、ダンスが踊りたくなったらいつでも僕をお呼びください」
と言って、アランという男は下がった。
そしてその光景を遠いところから見ていた貴族たちが口々にいう。
「あいつも玉砕だな」
「マンチェスター伯爵家の次男か……アリス様と結婚したら、リンスター公爵と名乗ることができるから下心丸見えだけどな。顔はイケメンだけど、あのお二方とは釣り合わない」
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パーティが終わって、姉のアリスと妹のカロルは高級そうな馬車に乗り、帰路についている。
だけど、二人とも表情が暗い。
「気持ち悪い……」
と、アリスが小声で呟くと、カロルが姉の手を掴んで、心配そうに言う。
「お姉様……やっぱりパーティには参加しない方がよかったんですわ」
「……お母様と王族の方々の面子を潰すわけにはいかないんだもの」
「それは……そうなんですけど」
このパーティは前々から参加が決まったことで、事故にあったとしても、王族側からの頼み事を反故にするわけにはいかないという大人の事情をアリスはよく知っている。
だけど、いくら事情を理解しているアリスだと言えども、燃え盛る怒りを抑えることはできずにいる。妹のカロルも同じだ。
パーティ会場でアランという男が見せたあの表情。この姉妹はアランの表情の奥底に隠れている秘密を知っている。
自分を犯そうとしていた男たちが見せていた表情と同じだった。
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