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第三は試験と謎解き

答え

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「試験官、答えがわかりましたわ」


私は今、三次試験の説明を受けた馬車の中にいた。
ハロルドに真相を伝えるためだ。


「さすが成績トップ、最初に答えを持ってきましたか。」

「あなた、本当に意地が悪いですわね。」

「何がでしょう」


ハロルドは白々しい笑顔を浮かべる。
「何がでしょう?」じゃありませんわ。


「なぜこのようなゲームじみたことをなさるのかと思いましたが、
あなたが求めていたのは、事件の真相を突き止められるかどうかではなく
顕になった真相を知ってどうするか…それを確かめたかったのではないですか?」


考えてみれば、妃になるのに謎解きなんて要素は必要ありませんわ。
余興にしても無駄が多すぎますもの。


「面白そうな話ですね、その説の話を聞きいたいところですが、
まずは課題の答えの方から聞かせていただきましょうか。」


私は盛大なため息を吐くと、突き止めた真相を口にした。


「犯人は『ダレンツ・ルネ』ですわ」

「ほう…」


ハロルドは私の怪盗に、ニヤリと笑う。
その答えが正解かどうかはまだ言わないけれど、その代わりこんな質問をした。


「『怪盗ジャック』ではないのですか?」


誘導尋問ですわ、もしこれで確信が持てていなければ…心が揺れたかもしれない。
でも、それがあり得ないと言うことはもうわかりきっていた。


「巧妙でしたわね、『怪盗ジャック』でも矛盾なく筋書きは通りますわ。
でも、コレクターではなく義勇軍の可能性のある『怪盗ジャック』が、『カリズ・ルネの作品じゃないから』と言って絵画を返却する理由はありませんわ。
ルネ家の誰かの絵画であれば、カリズじゃなくてもオークションで売れますもの
それに、怪盗ジャックが単独犯なのであれば今回は無理ですわ。」


私が芯を持ってそう答えると、ハロルドはそれ以上口を挟まず、
真相を話すように私に促した。


「事件の真相はこうですわ。
ルネ家の卒業生、マルゴット・ルネが『カリズ・ルネ』の絵を贈呈することを校長先生にお約束しました。」


この辺りは詳しい詮索はしておりませんが、まぁ恩義があったか、ルネ家に興味のあった校長が話しかけたかどちらかでしょう。
ここまで調べる必要が本当はあったかもしれないけれど、そこまでの時間がありませんわ。
だからその辺りの事情は飛ばして説明を続けました。


「ところが手違いで、本来お渡しする絵画と間違えてお爺さまの形見の絵画を間違えて贈呈してしまった。
慌てて交渉したものの、校長がその絵画を気に入ってしまい返却をしてもらえなかった。
ダレンツは、あの絵を『カリズ・ルネの作品じゃない』と見抜けなくて、それに憤慨するほど芸術への情が熱く、
あれを大事にしていて売りに出さなかった事情を知って誰にも手渡したくないほど、祖父のことを尊敬し大事にしていた形見の作品、家が許しても、校長にあの絵を渡すなんて彼には許し難いこと。」


あの形見の絵画をどれだけ返してほしかったでしょうね。
そして、彼は自分が傷つかずに絵画を取り戻す方法を考えたのでしょうね。

そして、自分以外にあの絵を盗んでもおかしくなくて文句を言わなさそうな相手を探した。
普通はそんな都合のいい人物は存在しないけれど、このケースでは当てはまる人物がいた。

それが…怪盗ジャックだった。


「ですから彼は美術研究クラブの仲間に頼み、絵画を盗んだのです。
彼らなら傷をつけずに盗み、隠すことができる愛情と技術が備わっている。
しばらくは美術倉庫かどこかに隠して、ほとぼりが覚めたら持ち帰るつもりでしたのよ。
まぁ、元の場所に戻っていると言うことは…どこかでバレて計画は失敗、
破損がなかったことでアカデミーは問題をもみ消した、違いますか?」


私はハロルドに自分の推理に問題がないか確認を求めた。
ハロルドは、相変わらずニヤニヤと笑いながら私に質問を投げかけます。


「なるほど、しかし妙な話ですね。
それなら怪盗ジャックの手紙はなんなのです?」


「ただの模倣ですわ、ルネ家には一度解答ジャックが盗難のため侵入しておりますわ。
その際、予告状もしっかり出されたとか…ならダレンツはその予告状を見たことがあるはず。
彼の技術なら、文字やマーク、紙までそれと同じように再現して作ることなど朝飯前。
一つだけ違うのは、予告状ではなく事後報告の内容だったと言うところ。
当然よね、警備なんか増やされたら運び出せないもの。」

「それが真相ですか?」

「えぇ。これが私の導き出した真相です。
でも、あなたの狙いは、私にこの答えを出させることではありませんね」

「おかしなことを言う、私は事件の謎を解けと言ったのですよ」

「…こんな謎、解かせてなんだと言うのです。
知って正解でした、で放置できる問題ではないでしょう?
だって、この事件は実際に起こった事件なのだもの。」


この事件の謎を解くことで明かされる事実は…それが意味することは…、
『アカデミーはこの事件の真相を隠蔽している』と言う事実だ。
つまり…


「三次試験の本当の内容はこうよ
『事件の謎を解いて、この事件をどう扱うか』あなたはその答えを望んでいる。」


そうでなければ、こんな無意味な余興を行う意味がわかりませんもの。
頭脳と知識だけじゃない…対応力も試されているのよ…きっと。

ハロルドは足を組み直すと、私を品定めでもするかのように全身を舐めるように見回した。


「そうだと思うのであれば、そう言うことにしましょう。
では、仮にそういう課題だったとして、あなたはこの事件の何を問題定義にして、答えを出すのです?」

「この問題は、大層な問題が起きていると言うのに処分せず箝口令を出して、もみ消したことですわ。
かわいそうではありますが、果たして処分をしないのはためになるのでしょうか」

「では、その生徒を今からでも処分しますか?」


そう、隠蔽していることが問題だと言うなら
これからするべきことは一つ。

この事件を公にして、生徒を叱るべき罰を受けてもらう。
一番正しく、誠実なことですわ。

これが一般人が思い描く正義。
でも…世の中は…そんなに単純なものかしら?


「…綺麗事…私は嫌い。」
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