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第二の試験は危険区域
二次審査の結果
しおりを挟む翌朝。
「お疲れ様でした。」
「…」
私たち…いいえ、厳密にはリーブ様と私は一晩の疲れでぐったりしておりました。
もう、目がしょぼしょぼして眠いですわ。
「ローズ様…少しお眠りになった方が…」
「一日中ずっと働き詰めでしたでしょ?」
元気なリリー様と、私よりはマシとはいえ憔悴しているリーブ様がそう声をかけました。
大丈夫…と言いたいところですが、もう頭がグワンぐワン揺れて喋れそうにありません
まぁ、もうあと馬車に乗って帰るだけですし…ゆっくりさせてもらいましょう。
「ぜひ、帰路の馬車の中ではそうしてください、
しかしあと数分だけ私に耳をお貸しください
今日のこの視察が2次審査であることはお伝えしたとおりです。
なので、今回もまた順位をつけなければいけません」
あぁ、まだ馬車には乗せてもらえないのですね…
その話…帰ってからではいけませんの?
「今回、一番得点が高かったのは…リーブ様です」
「え…わ…私?」
普通、こういう時悔しがるべきなんでしょうね。
私の方が頑張ってた自負はありますし、これで後が無くなりましたし。
でも、この時の私の正直な気持ちを言いましょう。
ふーん…………………
これだけですわ。
しかし、なぜか私以外の方が熱い議論を始めました。
「そうです、評価のポイントは皆の話を見聞きして、率先して手伝い、患者に優しい言葉をかけ看病した…」
「お、お待ちください!」
「今回、その評価をいただくべきは私ではなくローズ様の方がふさわしいですわ
ローズ様は一日中今日怪獣を駆け巡って、私に言えなかったことをローズ様は平然と言い退けて…
患者のことを一番に考え、指示し回していたのは」
リーブ様にそう言っていただけるのは、少し嬉しかったですわ。
私、牽制されたのかもと思っておりましたので…
でも、今回リーブ様が選ばれた理由はわかる気がしますの。
あれだけ親身になって、患者と話していたんですもの…見る人がみれば彼女を選びますわ。
「リーブ様、これは決定事項です、苦情は受け付けません」
「しかし」
「リーブ様」
必死になって抗弁を垂れるリーブ様に割って入ったのは、意外にもリリー様でした。
「そんなに…ローズ様に譲りたくなる何か理由があるのですか?」
「…私は…ただ…正当な評価を…するべきではないかと…思って…」
いつものような明るい声、彼女は笑顔でそう言っているのでしょうか?
私はもう瞼を開けているのが限界でしたので、リリー様の表情は見えませんでした。
「あ」
ついに私ははしたなく、倒れそうになってしまいました。
それを受け止めてくださったのは、皇太子殿下でした。
「ローズ様…」
そんな様子を見たリリー様が私に声をかけますが、それに応える元気はもはやありません。
だから皇太子殿下が代わりに話してくださいました。
「多分ローズは今日眠いだろう?
定員4人の馬車では窮屈で十分に眠れない、帰りは二つの馬車に分かれて乗ろう」
「で、でしたら私がローズ様と!」
「女性だけの方がいいとは僕も思うんだけどね、多分リリーが静かにできないでしょ?」
「…」
そういうと皇太子殿下に担がれ、馬車の中の椅子に横たわらせられました。
「あの、殿下…私のことはお気になさらず」
私は少しだけ目を開けて、皇太子殿下にそういう。
こんなはしたない姿を見せるのは心苦しかった。
しかし、あまり気にしていない様子で
「何をいう、君が今日の一番の功労者だ。
僕の好意に少しは甘えたまえ」
と私の頭を撫でました。
一体何のつもりかとむかつきましたので
「…でしたらMVPは私にしていただきたかったですわ」
と喧嘩を打ってやりました。
本当は少しも思ってないのですけれど。
しかし皇太子殿下の返事は、意外に真剣なものでした
「こっちにも事情があるんだよ」
「事情…ですの?」
「時期が来たら話すよ。」
そして、その言葉を最後に私は眠りについたのでした。
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