転生前から生粋の悪役令嬢は、百合ヒロインから逃亡したい！

第二の試験は危険区域

仲裁

「あなた方、なんのためにここにいるの！？
何も私たちに豪華な食事をと言っているのではございませんわ、病人に生のつく食事をと言ってるだけです
食料が足りない？私も言いましたわ、食料がないことくらい在庫を確認して重々承知であると！
でも、それでもなんとか分量を配分して、看病するのがあなた方の仕事ではないの！？」


現在の在庫の状況と照らし合わせた上で間違っていることを言っているとは思っていない。

きっと、この地域の人にとって私の言葉は酷なもので、矛盾しているものだと思う。
だからシスターたちはため息を吐いて、攻撃的に意義を申し立てる

「今年はただでさえ不作で例年より食糧が足りないんだ。
万一のことを考えて飢えを凌ぐ対策をとっているというのに、贅沢なオーダーはやめとくれ」

「だから、万一食糧が底を尽きた時その食材をどうしてくれんだよ！って話をしてんのさ！
まさか、ひもじい思いをしている民間の家から巻き上げてこいとでも…」

「し、シスター！落ち着いてください」


まだまだ物言い足りない彼女たちと私の間にリーブ様が割って入る、
背中を私の方に向け、守るように両手を広げる。

「ローズ様は、決して意地悪でこのようなことを申し上げているわけではございません。
病人のことを思い発言しているだけございます
しかしながら、皆様の食事事情を鑑みずこのような無茶なお願いをしてしまいましたことは、皆様をご不快にさせたものだと思います。
皆様にそのような思いをさせてしまいましたこと、お詫び申し上げます。」


その発言は、どちら側の人間を責めるものではない。
そして、相手に詫びるには十分に効果のあるものでした。
そのリーブ様の対応に、今度はシスターたちがオロオロしてしまう。

でも、シスターたちが言葉を紡ぐ前にリーブ様は話を進めていく。


「しかしながら、ローズ様の意見には一理ございます。
仕方がないとはいえ、これだけで栄養が足りるかどうかというのは気になるところではございます。
ここは寒いところです、体を温めるために生姜を少量だけでも追加しませんか？
明日になれば食材の支給が届くはずです、その量がどれほどなのか…私には見当つきません。
でもその後のことはその時に考えればいいではありませんか。」


それを聞くと、シスターたちは顔を見合わせる。
やはり、それでも食材を一つ追加するのを躊躇しているようだった。


「その中には足が速いものがありますから、それを優先的に使えば数日は栄養があるものが作れますし、
寒い気候に適した山菜もありますわ、それを使えば仮に食材がなくなってもなんとかなるかもしれません
それでもないならば無理をする必要はありませんが、少しでも病にかかっている皆様方の助けになれる食事を準備して皆さんで乗り越えましょう」


リーブ様は、笑顔でそうシスターたちに声をかけるとようやく納得してくれた様子で、生姜を取りに戻っていった。
その場が収まったところで私はリーブ様に声をかけました。


「リーブ様…」

「どうかお気になさらないでください、お手伝いした時に食材について気になったのは私も同じでした。
しかし、彼女たちが食料独占しているわけではない以上、食料事情を考慮することなく咎めることはできませんでした。
それができるローズ様のこと、尊敬いたしますわ。」

「…」


これは、リーブ様の本心だろうか…それとも遠回りの注意なのだろうか。
もう少し考慮しろということなのか、言い過ぎだと言う意味なのか…どちらかは測れないけれど。

腹が立つわ、間違ったことなど何も言っていないのにこんなふうに言われるのは。
でも、こうなってしまった以上、ここは私が関わらない方がいいのは間違いがないでしょう。


「リーブ様、こちらのことはお任せいたしますわ。」

「あ…はい…」


リーブ様は、なぜか申し訳なさそうに少し俯いて私の方を向いてそう言った。