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第二の試験は危険区域
それぞれの事情
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「リーブ様」
そこにはさっきまでは豪華な服を身に纏っていたはずのリーブ様がシスターの姿で現れたのです。
「ローズ様、備品の方は?」
「人員も物品も何もかも足りないわ…多めに要請しないと…
それより、リーブ様…そのお姿は…」
報告よりもなぜそのような格好をしているのかの方が気になってしまい、リーブ様に質問すると
「こちらでお手伝いを志願させていただいたのですが…ドレスでは動きづらくて…」
「なるほど。」
なんてことはない、至極単純かつ真っ当な理由だった。
まぁ、リーブ様は料理の心得があるようですし、私が割って入ることもありませんわね。
今日の食事内容だけ確認して後は他のところのお手伝いへ行きましょう。
「後程、手伝いが来ると思うからそれまで頑張って。
それよりどのような食事を振舞っているの?見せてもらえる?」
「こちらでございます」
私はリーブ様含めここにいる全員にそう伝える。
そして、シスターの一人が私を鍋の前案内してくれて中身を見せてくれた。
しかし…それは想像以上にお粗末なものだった。
「…これ…ただのお湯じゃない」
色のない水、一口味をさせていただいたけどなんとなく塩味がするだけ。
貧しいにしても、病人食にしてももう少し何か入っていてもいいはずだ。
そんな私の言葉を聞いてシスターが口を挟む。
「少し芋が入っております」
「こんなの入っているうちには入らないわ…!
あなた方、これ病人用の食事なのよね?こんな食事じゃ治るものも治らないわ」
私は怒りをあらわにして彼女たちに訴える。
しかし、シスターたちは私の怒りに物おじせず、お辞儀をしたまま私に物申しました。
「恐れながら貴族のお嬢さん、栄養あるものなんて言うけど…こんな時期にそんな贅沢言ってらんないよ。」
「在庫なら確認したわ、十分あるとは確かにいえないかもしれないけれど、
今日のこのスープに他の食材を入れられないほどではないわ、今すぐ材料を追加して」
「何を入れろと言うのですか」
白々しい、自分達の教会に患者が押し寄せてきているのだもの、
しかも食事担当の彼女たちが食材の在庫に何があるのか、そして量はどのくらいあるのか、
それを理解していないはずがありませんわ。
何を入れればいいなんて、私よりもわかっているはず。
「豆と生姜を入れて、それだけでも栄養価は変わるわ。
それから食べるのが難しい人にはあったかい擦りリンゴの飲み物を…」
「これだからお嬢様は困る。
私たちがいたずらにこんなチンケな料理を作ってると思っているのですか?」
私は少しカチンと頭にきてしまう。
しかし、彼女たちは何も私が貴族で偉そうだからこのような言葉を言っているわけではないようでした。
「これは正当な分配です、この地域はご存知の通り作物が育たず、食料の備蓄が少ないのです。
支給があるからと食材を使い、思ったほどの量がこちらに回って来なかったら?
何日も食べずに過ごさねばならなくなるのです。」
「全てを分けるよりも、一日一種類の食材を使ったほうが食料が減る速さを遅くできるのです」
彼女から出てくるその言葉は、経験からくる知恵。
少ない食糧を少しでも持たせるため、やむ終えずにしていると言う説明だ。
それでも、納得はいきませんわ。
「何も、全部使えなんて言ってませんわ、
日にち何日も持つように配分した上で材料を増やせと」
「もし、今日お嬢様方がこちらに食材を持ってきてくださったのであればそうしておりました。
でも、実際には持ってきて下さらなかった」
「それは一度領主に預けただけでのちに……」
「直接持ってこなかった、これは事実だよ。
一度、偉いさんのところに預けられたら、どう分配されるかわかったものじゃない。
それとも、いつどれだけの食料がくると言うことを補償してくれるのかい?」
「…それは」
「お嬢様の言うように、今日一日なら栄養のつく食事を作ることもできるでしょう。
でも明日は?明後日は?栄養食を一日食べるてその後食べるものが無くなれば餓死してしまいます。」
シスターたちの強い言及に私は柄にもなくタジタジになってしまいました。
彼女たちは、王都から十分な食料の支給があるなんて信じていないのだ。
そして、それは正しい。
私もさっき同じようなことをハロルドに言ったばかりだ。
きっと平等かつ十分にここに食料が回ってくるなんてことはないだろう。
でも、次の支給があるまでの一週間、こんな塩を入れただけのお湯を病人に食べさせないと
飢えに侵される可能性があるほどだとは思えない。
そこにはさっきまでは豪華な服を身に纏っていたはずのリーブ様がシスターの姿で現れたのです。
「ローズ様、備品の方は?」
「人員も物品も何もかも足りないわ…多めに要請しないと…
それより、リーブ様…そのお姿は…」
報告よりもなぜそのような格好をしているのかの方が気になってしまい、リーブ様に質問すると
「こちらでお手伝いを志願させていただいたのですが…ドレスでは動きづらくて…」
「なるほど。」
なんてことはない、至極単純かつ真っ当な理由だった。
まぁ、リーブ様は料理の心得があるようですし、私が割って入ることもありませんわね。
今日の食事内容だけ確認して後は他のところのお手伝いへ行きましょう。
「後程、手伝いが来ると思うからそれまで頑張って。
それよりどのような食事を振舞っているの?見せてもらえる?」
「こちらでございます」
私はリーブ様含めここにいる全員にそう伝える。
そして、シスターの一人が私を鍋の前案内してくれて中身を見せてくれた。
しかし…それは想像以上にお粗末なものだった。
「…これ…ただのお湯じゃない」
色のない水、一口味をさせていただいたけどなんとなく塩味がするだけ。
貧しいにしても、病人食にしてももう少し何か入っていてもいいはずだ。
そんな私の言葉を聞いてシスターが口を挟む。
「少し芋が入っております」
「こんなの入っているうちには入らないわ…!
あなた方、これ病人用の食事なのよね?こんな食事じゃ治るものも治らないわ」
私は怒りをあらわにして彼女たちに訴える。
しかし、シスターたちは私の怒りに物おじせず、お辞儀をしたまま私に物申しました。
「恐れながら貴族のお嬢さん、栄養あるものなんて言うけど…こんな時期にそんな贅沢言ってらんないよ。」
「在庫なら確認したわ、十分あるとは確かにいえないかもしれないけれど、
今日のこのスープに他の食材を入れられないほどではないわ、今すぐ材料を追加して」
「何を入れろと言うのですか」
白々しい、自分達の教会に患者が押し寄せてきているのだもの、
しかも食事担当の彼女たちが食材の在庫に何があるのか、そして量はどのくらいあるのか、
それを理解していないはずがありませんわ。
何を入れればいいなんて、私よりもわかっているはず。
「豆と生姜を入れて、それだけでも栄養価は変わるわ。
それから食べるのが難しい人にはあったかい擦りリンゴの飲み物を…」
「これだからお嬢様は困る。
私たちがいたずらにこんなチンケな料理を作ってると思っているのですか?」
私は少しカチンと頭にきてしまう。
しかし、彼女たちは何も私が貴族で偉そうだからこのような言葉を言っているわけではないようでした。
「これは正当な分配です、この地域はご存知の通り作物が育たず、食料の備蓄が少ないのです。
支給があるからと食材を使い、思ったほどの量がこちらに回って来なかったら?
何日も食べずに過ごさねばならなくなるのです。」
「全てを分けるよりも、一日一種類の食材を使ったほうが食料が減る速さを遅くできるのです」
彼女から出てくるその言葉は、経験からくる知恵。
少ない食糧を少しでも持たせるため、やむ終えずにしていると言う説明だ。
それでも、納得はいきませんわ。
「何も、全部使えなんて言ってませんわ、
日にち何日も持つように配分した上で材料を増やせと」
「もし、今日お嬢様方がこちらに食材を持ってきてくださったのであればそうしておりました。
でも、実際には持ってきて下さらなかった」
「それは一度領主に預けただけでのちに……」
「直接持ってこなかった、これは事実だよ。
一度、偉いさんのところに預けられたら、どう分配されるかわかったものじゃない。
それとも、いつどれだけの食料がくると言うことを補償してくれるのかい?」
「…それは」
「お嬢様の言うように、今日一日なら栄養のつく食事を作ることもできるでしょう。
でも明日は?明後日は?栄養食を一日食べるてその後食べるものが無くなれば餓死してしまいます。」
シスターたちの強い言及に私は柄にもなくタジタジになってしまいました。
彼女たちは、王都から十分な食料の支給があるなんて信じていないのだ。
そして、それは正しい。
私もさっき同じようなことをハロルドに言ったばかりだ。
きっと平等かつ十分にここに食料が回ってくるなんてことはないだろう。
でも、次の支給があるまでの一週間、こんな塩を入れただけのお湯を病人に食べさせないと
飢えに侵される可能性があるほどだとは思えない。
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