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第一試験はおもてなし
慕っていてもライバル
しおりを挟む「まぁ、ローズ様!
まさかわざわざライレイニ邸までお越しいただけるなんて、光栄ですわ!」
アポなしでリリー様のお宅に伺いましたら、
目を見開き、頬を赤らめ、涙を浮かべるという
おそらくこの世の喜びの最上級の表情を浮かべて私を歓迎してくださいました。
そんなに喜ばれるようなことではないと思うのですが…
というより、アポなしなんですから追い出される覚悟でしたのに。
「さぁ、何をぼさっとしておりますの!?レフレイムのご令嬢ローズ様ですわよ!
早く最上級のおもてなしの準備を!」
リリー様はそういうと手をパンパンとたたき、近くにいた使用人たちに指示を出す。
そして…さすがライレイニの使用人というべきだろうか…行動が早かった。
私の手を取ると速やかにテラスに案内され、席に着席すると即座にお茶の用意がされた。
そして全ての準備が終わった頃、リリー様がテラスへやってきた。
「素敵なテラスでしょう?本当は客間でおもてなしをするべきかとは思ったのですが、
今日は気候も心地よいですし、うちの自慢のお庭を見ながらお茶をするのも良いかと思いまして。」
「確かに、レフレイム邸には劣りますが、それでも素敵なお庭ですわね。」
「最上級のお褒めの言葉ありがとうございます」
試しに言ってみた嫌味も通じやしない。
いや、むしろ心底喜んでいるかのような満面の笑みだ。
彼女のことは本当に理解に苦しみますわ
私がティーカップの中のお茶を見つめていると、リリー様がお茶に砂糖を入れてくるくるとかき混ぜながら私に話を振ってきました。
「それで、ローズ様が私に一体なんのご用でしょうか?
まさか、本当に昨日の提案を受けてくださるおつもりになったのですか?」
「まさか、この試験で共闘してもなんの意味もございませんわ。
共闘などあり得ないお話だと、この前もお伝えしたかと思いますが」
私はピシャリと言い放つ。
実際に本当に意味がないのだ。
私たち3人でお妃様試験を受けて共闘に意味が出るのは、リーブ様を陥れる場合のみ。
でも、リーブ様はほとんど格好だけの参加。
既にバクランドに嫁ぐことが決まっていて、その事実により誰も…リーブ様本人までもが国母になることを望んでいない状況で、私たちが共闘する必要性が微塵もない。
3人という格好だけの私とリリー様の一騎打ちの戦いなのだ。
それに、仮にリーブ様が有力候補だとして、彼女と手を組むなんてまっさらごめんですわ。
私のその思いが伝わったのか、リリー様はニコニコと笑顔で私を見る
「そうでしたね、そういうお話をガーデンでしたばかりでしたね。
それではやはり、私になんの用事で会いにきてくださったのか、検討がつきませんね」
リリー様は紅茶の香りを楽しみながら一口それを啜った。
まさかの偵察だ…なんていうわけにはいかないし…なんと言い訳をしようか考えた結果
「大した用事じゃなければ来てはいけないの?」
低レベルのごまかしをすることにした。
「まさか、ローズ様でしたら大歓迎ですわ」
それをわかってかわからずか、やはり満面の笑みで返すリリー様。
とてもやりにくいですわ。
いえ、そんなことばかり言ってる場合でもありませんわね。
「実際大した用事ではありませんわ、リーブ様はおもてなし内容を決めたと伺いましたので、
リリー様も準備に忙しいのではないかと思いまして。」
「ご心配いただいてありがとうございます、痛み入りますわ。」
遠回りに、どんな準備をしているのか聞ければ
おおよそどんなものを準備するのか、もしくは用意するのか、
話の確信をつかなくてもなんとなくわかるかもしれないという探りでした。
これで結構簡単に現状を話してくださるのではないかという期待もありましたが…
「ローズ様の方こそいかがです?」
ティーカップを置きながら逆にリリー様に質問をされてしまった。
「何か準備はできまして?」
この質問になんて答えましょう。
ここでたじろいだら、私がまだ何をするか決めかねていることが悟られてしまいますわ。
そんなのプライドが許しません。
だから私はできるだけ優雅に、横柄にお答えいたしました。
「それこそ、あなたに教えるようなことはございませんわ」
そして私は、近くにあったクッキーをひとつつまみながら話をつなげました。
「強いていうなら万一おもてなし内容が被ってしまいましたら私が勝ってしまいそうなので、その心配はしておりますけれど」
私は摘んだクッキーを口に運び、カリッと前歯で噛みました。
少し嫌味っぽく見えていれば良いのですが…
「それだけはあり得ませんわ」
リリー様は余裕の様子。
もう何をするのかは決まっている様子。
しかも、私と被ることはないという慢心。
私は意味がわからなくついつい聞き返してしまう
「あり得ない?なぜそのようなことがわかるのです?」
「あら、ローズ様の頭で考えればすぐにわかることだとは思いますけど。」
私はそれに少し苛立ってしまう。
リリー様にできて私にできないことなど…一体ないと言い切れる根拠はなんなのか
小一時間問い詰めたい気分になりましたが
「そういう意味では、今回はそのシチュエーションにはなり得ないので残念ですね。
でも仕方ありませんわ、ローズ様が同じことをすれば被害がでかねませんもの」
その言葉がまあまあ本気っぽく見えてしまい引いてしまった。
「何をするつもりですの?まさか…危険なことを…」
「私がやる分には問題ないのでご安心を」
結局、リリー様からは有益な情報を引き出すことができず邸を後にすることとなりました。
こうなったら仕方ありませんわ。もう一度ガーデンを見学させていただいてアイディアを閃かせるしかないですわ。
私はダメもとで皇宮へと向かった。
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