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二部 1話 嵐を巻き起こす蝙蝠
二部 1−7 不思議な悪夢の漠となれ
しおりを挟むそれから時間が経って数時間後、自宅にて
「着替えと…一応シャンプーと…あれとこれと…お泊まりセットはこれでOK」
私はやるべき家事を片付けた後、バッグの中にお泊まりの準備をしていた。
「えーっと、洗濯物は畳んで、お兄ちゃんの分の夕飯は冷蔵庫に入れて置き手紙も置いた。
…家のことはまぁ一日だしこれでよし。」
これならお兄ちゃん一人でもなんとかなるでしょう
私はリビングのチェックを終えると、荷物を持って玄関に向かう。
「光星くん行くよー」
「はーい」
私は階段の方を見て光星くんを呼ぶと、
上の階からパタパタと鳩の姿で降りてきた。
光星くんは玄関で靴を履いている私の頭の上に乗っかる。
口に出しては言わないけど、鳩姿の光星くんって何故かでっぷりしてるから、
結構重量感があって私の頭は少しその重さに耐えかねて僅かに沈む。
まぁ、神様だしご利益があるかもしれないので文句を言うのはやめておいた。
「まさかこんなことになるとは思いませんでしたね。」
私がそんなことを心の中で思っているとは夢にも思わない光星くんは、
この後の予定についての率直な感想を述べる。
「まぁ事情が事情だからね、お言葉に甘えようよ。」
そう言って靴紐を結ぶ私の頭に思い浮かんだのは保健室での出来事。
話すと長くなるのでいろいろ割愛して話すと
ナイトメアだとわかったまではいいけれど、じゃあどうやって倒すのか…という話になった。
確か聖水を使って倒すという朧げな私の記憶から、代用としてことの水の力を借りることにした。
神様の力で出す水なら限りなく聖水と同じ力があるだろうと言う予想からだった。
あとは私が柚子さんから取り憑いたナイトメアを私が引き出し、その補助として時間を司るなるちゃんの力が必要になる…と言う話になったんだけど。
今回の話で一番ネックになったのは場所。
今までだったら敵の出現場所を把握して私たちが現場に行くことが多かったし、
そもそも外の場合が多かったから、どんなに人数が多くても困ることはなかった。
でも、今回は眠っている人間が対象。
外でやるわけにもいかないし、柚子さんの家に行ってドタバタやるわけにはいかない。
学校でやるにしても被害は大きくなるのは容易に想像できた。
そこで提案されたのが、あゆみの家での作戦決行だった。
確かにあゆみの家はお屋敷みたいに大きいし、家元の家ということで普段からお弟子さんや生徒さんが出入りするから部屋の数も多いし少しくらいうるさくしても問題ないということだった。
だから、柚子さん本人とその後に迎えにきた親御さんの了承を得られたらあゆみの家でお泊まり会をしよう。
という話になり今に至ったというわけです。
「理由はなんであれ、なんだかんだ友達の家にお泊まりってちょっとワクワクするね。」
「一応作戦ですからね、気を抜かないでくださいよ」
「わかってるって」
私は立ち上がると、足のつま先をトントンと鳴らす。
「お兄さんの方はいいんですか?」
「それが申し訳ないけどね…仕方ないよ。
メモは書いてあるし」
そう言って扉を開こうとノブを触ろうとした瞬間、ガチャリと扉が開いた。
誰かが外から扉を開けたらしい。
「ただいまー」
そこには笑顔の兄と
「お邪魔しま~す、って…あれ、ルイちゃん」
制服を着た女子がいた。
見知った顔だ。
「お兄ちゃん…と…初音先輩も。」
ちなみにこの女性は洋太のお姉さんである。
お互いがお互いにそこにいるとは思わず驚いた表情でお互いを見合った。
そりゃそうだろう。
お兄ちゃんは、大荷物を持って頭に鳩を乗せている妹を見て驚かないはずがないし、
私は私でお兄ちゃんがこんなに早い時間にお客さんを連れてくるとは思わなかったから。
っていうか、気心知れた相手とはいえ出かける前に突然の来客!どうしよう!
私はダラダラと冷や汗をかく。
そんな私を見て黙って立ちすくむ私とお兄ちゃんの代わりに先輩が当然の疑問を口を開いた。
「大荷物だね、どうしたの?お泊まり?」
「あ、はい。ちょっと友達とお泊まりで。」
私はその質問にハッとしてそう返事をする。
しかしお兄ちゃんは怪訝そうな顔をして顔を傾ける
「そんな話あったっけ?」
「ごめんさっき急に決まって…やることはやっておいたから。
そんなことより、二人こそどうしたの?」
私はこれ以上こちらの話に踏み込まれたくなくて話をお兄ちゃんたちの方に戻す。
すると先輩がこうなった経緯を教えてくれた。
「もうすぐ中間で先輩塾休みだって言うから、勉強見てくれるって約束してたから、ねー木下先輩」
先輩はニコニコとお兄ちゃんに笑顔を向けるもお兄ちゃんは冷め切った顔で「勝手についてきたんだろ」冷たくいう。
二人のやり取りを見ているのは楽しいのだけれど、こちらも急ぎだし玄関先にいつまでも立ち話というのは良くない。
私は二人をとりあえず中に入れようと、大きく扉を開き手招きをする
「それなら、うちの中どうぞ、お茶くらい準備…」
私はもう一度リビングへ入ろうと体の向きを変えると先輩に止められる
「いいよいいよ、ルイちゃんこれからお出かけでしょ?」
「でも…」
お兄ちゃんに準備させるわけにもいかないし、見知った顔とはいえお茶菓子くらい出した方がいいのでは…
とお兄ちゃんに顔を向ける
「いいよいいよ、水出しとけば十分だと思うし」
まぁ仮にもお客様に対して笑顔で雑なことを言う。
先輩の方も「多少は気を遣ってくださいよ」と言うだけで気にはしてなさそうだけど。
でも私としても時間がないのも確かなので、お言葉に甘えて家を出ることにした。
「じゃあ、私行くね」
「あーちょっとだけ待って」
「はい?」
さっきはわざわざ家に戻らなくていいと引き留めた先輩が、家を出ようとした私をまた引き止める
私は今度はなんだろうと振り返る
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