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二部 1話 嵐を巻き起こす蝙蝠

二部 1−1 不思議な悪夢の漠となれ

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「やっぱ、また出たな」

翌日、学校の教室につくなり洋太に見せられた携帯画面。
私となるちゃんはその携帯画面を覗き込む。

また新たな場所が被害に遭っていた。

被害に遭ったのは工場。
ちゃんとシャッターが閉じていたはずなのだけど、
そのシャッターに大きな穴が空き、
工場の中の機械は結構壊されていたらしい。


「誰だよ、今日はもう出ないから余韻に浸かろうって言ったの」

「ごめん。ちゃんと助言聞くべきだった。」


私は素直に洋太に頭を下げた。
昨日はいくらお腹が空いて早く帰りたかったからとはいえ、
一日に一体出たからもう出ないなんて、楽観的な考えをしてはいけなかったと反省をする。

しかしなるちゃんは、頭を下げている私の肩に肘を乗せると洋太に反論意見を述べる

「聞いたところで、昨日できることは何もなかったわよ。
情報も何もなかったんだから。」

口を尖らせていうなるちゃんに、洋太も反論を返す。

「光星か幽霊探知機をなるがちゃんと見てたら対処できてたかもしんないだろう」

「あーやだやだ責任転換するわけ?そういうの嫌われるわよ
人のせいにして文句言うなら、他の意見に丸め込まれてないで説得すればよかったじゃない」

「悪かったな」

今度は洋太が不服そうな顔をしてぶっきらぼうに返事を返した。
とはいえ、問題が片付いていないのは変わらない。

「でもどうしよう、また手がかり0だよ」

「私も誰かさんがい言うように、ずっとHPS見てるわけにもいかないしね。」

「量産するかアラームつけるのは?
みちびきこちゃんはアラームついてたでしょ」

「だからなんでその機械のこと知ってるのよ…」

あぁそうか、あれ私の白昼夢の出来事なんだった。

「アラームのシステムをプログラムするのは簡単じゃないし、
量産はお金も労力もかかるのよ?ルイちゃんお金払ってくれる?」

「無理ですごめんなさい。」

「いつも通り地道にやるしかなさそうだな。」

「敵がいそうな怪しい噂調べるの?後手後手すぎない?」

「じゃあ他に案あるの?情報収集する方法。」

私は黙ってとある人物を指差す。

土屋さんだ。

彼女の情報収集力なら、もしかしたらこれまでの何か共通点が見つかるかもしれない。

でもなるちゃんは心底嫌そうだった。

「いやよ。もう渡せる情報もものはないわ
大体今回の情報だってそうじゃない、痛手覚悟で出費したらガセだったじゃない。
何が情報屋よ、コスパ悪い。」

それはなるちゃんが勝手に呼んでいるだけである
まぁ、実際情報売買やってるけど。

「どうしても情報やから話を聞くなら、対価は他の誰かが払って!」

そうは言うけど、少なくとも私と洋太には有益な情報がないためその方法は諦めることにした。

「地道な作業を続けるしかないわ、被害者は幸い出てないし…。
こっちは相手が出るまで動けないんだもの。」

「でも、やるなら俺たちだけになりそうだな」

「なんでよ」

「あっちはそれどころじゃなさそうだろ…」

そう言うと洋太はことの方に視線をやる
ことは自分の席で頭を抱えており、あゆみがそのことの方を心配そうにポンポンと叩いていた。


「友達と楽しいお泊まりしてきたんじゃなかったか?」

「まぁ、確かに『楽しい』ってわけじゃないみたいなことは言ってたけど…」

「あれは疲労ね。」

原因はわからないけど、一晩で何か疲れるような事があったのは間違いない。
どうせこのまま今の話を続けていても結論は同じなので、話題はことの話に変わった


「ちょっと行ってこようかしら。」

何か事情がありそうなのに気がついたのか、なるちゃんはことの方へ行こうとした。
私はそれを止める。

「待って、今は余裕ないんじゃない?
ほら、こと眠っちゃったし、あゆみも席離れたし。」

「お昼の時間にでも声かけようよ。」

机に突っ伏していることを見ながらなるちゃんは私に同意した。
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