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二部 1話 嵐を巻き起こす蝙蝠

二部 序章4 不思議な夜の遠吠え

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それで今退治を終えたわけだけど…
あれの犯人がさっきの獣の仕業じゃない気がしている、と言うのが洋太の言い分だった。

私との会話が聞こえていたのか、あゆみは私たちの方にやってきて参戦する。

「ひと段落した後に、そういう滅入ることをいうのはやめてくださいまし。」

「気になるんだからしょうがないだろ」

「あれをやったのがさっきの獣ではなかったとしても
悪霊を一匹倒したということで今日はよしといたしませんか?」

「あゆみの言う通りだよ、多少は終わった余韻に浸かってもいいんじゃない?
今日はもう何も起きないと思うし。」

「…まぁ…そうだな。」

洋太はジュルルとコーヒを一気に飲み干すと、ゴミ箱にパックを投げ捨てた。

ちょうどその頃、ことの方はジュースを配り終わり、帰り支度まで終わらせたようだ。

「みんなまだここにいる?
あたし、ちょっとこの後用事あるから先行くね。」

ことはどこからともなく大型ボストンバッグを取り出した。
一同はその姿を見てギョッと目を丸めて彼女の姿を認めた。

「何よその荷物!どこに隠してたのよ!」

「あぁ、これ?
ちょっとこの後友達の家に泊まることになってて」

「おう…事情はわかったけど…何もこんな時に」

「盗まれる可能性もあったのに…」

「でも盗まれなかったし!」

「ことさん、世の中に対して信頼しすぎです。」

まぁ、結果オーライである以上これ以上何かを言うこともできず、
荷物に関しての話題はとりあえず終わらせることにした。

「でも、お泊まりいいですわね。」

「いや、戦い終わったら遊びに行こうなんて、
期末テストの後のご褒美のように呑気に楽しもうとしてるんじゃないわよ」

「タイミング的なこともあるし、批判は何なりと受けるけど、
そう言う呑気なやつじゃないんだよね…それなりに深刻だし」

「今の戦いより?」

「そこまでとは言わないけど…」

ことは心なしか表情に影を落とす。
なんというか…少なくともこれから楽しいお泊まり会!みたいなワクワクした顔ではない。

「どうかしたの?」

「うーん…話せば長くなるからまたの機会に説明するよ」

「んじゃ、もうあたし行くわ。
ルイ、これ少年にも渡しといて、お疲れっした!」

ことは私にマンゴージュースを預けると、嵐のようにその場からさっていく。
私たちはことの背中を見送ると、そのジュースに視線を移した

少年…と言ってたから多分光星くん用だ。

それを見て洋太はつぶやいた

「そういえば…光星どこ行った?」

「もう終わったのに…まだ戻ってきてないわね。」

「…洋太とあゆみを呼びに行ってたでしょ?一緒じゃないの?」


「呼ばれた後すぐ飛んでいってしまいましたもの」

「ルイのとこ戻ったと思ってたし」


二人の話を聞いて私は口に手を添えながら考える

おかしいなぁ…
光星くん、呼びにいったらすぐに戻ってくる予定だったのに
どこにいったんだろう…

「まぁ…すぐ戻ってくると思うけど…。」

私は夜空に浮かぶ月を見ながらそう言った。
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