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二部 1話 嵐を巻き起こす蝙蝠

二部 序章3 不思議な夜の遠吠え(回想)

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ニュースで取り上げられたのは、学校近くの駐輪場

いつもは綺麗に並べられている自転車が、その日はものの見事に散乱していた。

無差別に停める無料駐輪場だったら風でドミノ倒しのように倒れているくらいなのだとしたら、
ニュースで見る取り上げられることはなかっただろう。

でも、そこの駐輪場は一台一台停めるための機械がある有料の駐輪場で、
散乱するはずないのに、全ての自転車が散乱していたから、問題になったのだ。

その場所はよく知ったところだったので、その日登校前にその現場に寄ってみることにした。

マスコミと警察と消防とすぐ近くが学校だからなのか、うちの中学の野次馬精神あふれる生徒たちですごい人だかりになっていた

そんな人だかりの中には見知った人間も混ざっていた。

「なるちゃん、洋太!」

2人は私の声に気がついて振り向くと手を振ったので、私も挨拶をそこそそこに2人の元まで駆け寄った

「ルイもニュース見てきたのか?」

「びっくりよね、朝ネットニュース見てたらすごいことになってるんだもの」 

「そうだね、でもここまでとは思わなかたかも。実際の現場すごいね。」

自転車は全てが全て別の向き…明後日の方向に向いて、あちらこちらに散らばっていた。

しかも中には壊れているものもある、まるで台風や竜巻が起こった後のようだ。

「いたずら...かな」

自然の力でないならもはや人力以外考えられなかった。
でも、洋太は首を傾けながら私に言う

「悪戯にしては、大掛かりなんだよな…」

どう言う意味かと洋太の方に顔を向けると、自転車を止める機械を指差す
ネジは巻かれたままだけど、その機械は根本からパキッと割れていたのだ。

一台だけじゃないほとんどがそう。

自転車が止まっていたのもいなかったのも関係なくだ。

自転車の車輪に引っ付いているのもある。

この数だぞ、一晩で1人...複数人でも気付かれずにこれをやるのは無理。
どこかで絶対にバレるはず。


「…だと考えるのが妥当かもしれないわね」


どうやら私が来る前に、なるちゃんと洋太はそう言う結論に至ったらしい。
その結論には同意だけど、わざわざこんなことをする目的がわからない。

被害者がいたわけではないし、困るとしても、それはここの管理人と壊れた自転車の持ち主くらい

報道カメラマンがいる方を見る

ここの管理人さんが取材を受けていたけど、
確かにここの管理人さんはマスコミの取材に対して大泣きしていた。
損失がかなり大きいのだろう

でも、

「なんか…今までの様子と違うような…」

「違うって思うわけ?」

私が口にした疑問になるちゃんはそう返す。
もちろんそれを疑うつもりはない、けど…

「うーん…物を壊して困らせるだけで満足するかなって…」

「でも人でも彼らでもないとなると、後は自然災害くらいしかないわよ?
昨日台風や竜巻が起こった?」

「…確かにそうか、台風でもこうはならないしね…、じゃあ確定?HPSはなんの反応もなかったの?」

「なにもずっと見てるわけじゃないしねぇ…アラーム機能とかないし。
そもそも彼らの情報ないこの状況では注意して見ないわよ」

なるちゃんは、自分で作ったHPSこと幽霊探知機を取り出す。

「光星の方はなんも言ってないのか?」

洋太が私にそう聞く。
確かに、彼らが何かをしたなら光星くんが何かを察知していてもおかしなことではない。
しかし、

「大変そうですねぇ、だって。」

残念なことに、反応もなければこのニュース自体に興味を持っていなかった。
だからこそ私も本当に彼らなのかと言う疑問を持ったわけなんだけど。

「他人事だな。」

「神様がその反応なのね…じゃ違うのかしら…」

「とはいえ光星くんも、いつも察知できるわけじゃないみたいだしね。
結構近距離じゃないと敵反応察知しないし。」


3人でこの現象について再び考え込んでしまう。
だけど、これ以上ゆっくりこの場所で悩む時間はなかった。

「すいませーん!ちょっとどいてください!」

警察やらマスコミやらが野次馬たちの間を割って移動を始めた。
そしてあまりにもそれが邪魔だったのだろう

「ほら野次馬は帰った帰った、君たちもうすぐ授業始まるでしょ」

現場にいた警察に私たち野獣魔学生たちは皆怒られ、
中学生たちは皆渋々と文句を言いながらその場を去る。

結局この日行動を起こすことはなかった。

しかしこの後、もこのような事件は場所を変えて連発した。

そんな時、遠吠えだのなんだのと言う情報が入ったので、
一応彼らを想定して、作戦を練って応戦の準備をした…と言うわけなのです。
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