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二部 1話 嵐を巻き起こす蝙蝠

二部 序章2 不思議な夜の遠吠え

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あゆみは両手に持った鉄扇を仰ぐとまた風が起こる。

そう、それはただの強風

でもそれは、とても有効だった。

あまりにも強い向かい風は、足を前に進めることはできない。
獣もその場で踏ん張るのがせいぜいらしい。

足止めには成功した。

ただ、このままでは致命傷を負わせられないし、この風では私たちも加勢できない。
こともまだここには来られないだろう

でも、後援は一人ではない

「霜月!そのままそいつこっち飛ばせるか!?」

いる場所は遠いが、ちょうど獣の背後の方向に洋太が立っていた。

その場にいけなら、いっそ風でこっちに吹き飛ばしてもらおうと言う考えらしい。

「簡単に言ってくれますわね」

あゆみは洋太の要求に苛つきながらも、あゆみは鉄扇を思いっきりスパンっと振ると強い風を生み出す

獣はその強い風には耐えきれず、地面から足が離れ、そのまま飛ばされた。

獣は地面にドォオオンッと大きな音を立てて倒れた。

飛ばされたのは洋太の目の前

「火 壁」

そう唱えると獣の目の前に火の壁が現れた

獣はそれに驚き怯えたのか、キュウンと呻めきそこを走り抜けるのに一瞬躊躇する。

それだけ時間が稼げれば十分だった。

洋太は距離を詰めると剣を獣の体にグサッと突き立てる
するとグオォォオ!と鳴きながらシュウウと体は消えていった。


一通り作戦が終了したことを確認すると、洋太は炎を消した。

その場にいたメンバーも獣が消えたか確認しようと
ようやく現場に到着したことも含めて、洋太の元に自然と全員が集合した。


「あらあら、美味しいとこを洋太くんが持ってかれたわねぇ、ずるいわぁ。」

「なんだよ、まずは感謝しろよな。仕留めたんだから。」

なるちゃんが右頬に手を添えながら言われたその言葉が癇に障ったのか
洋太は少し不貞腐れたように返事をする。

その言葉を聞いてみんな適当に「ありがと」とお礼を言う。
洋太はもう諦めたのか話題を逸らした

「ってか大丈夫か?攻撃喰らってたろ。」

洋太は私がさっき攻撃を受けてたのを思い出したのかそう声をかける。

「ちょっと体当たりされただけだから平気」

「無理されてません?何か冷やすもの…」

あゆみもかなり心配したような様子で私を見て、
冷やせそうな何かを探そうとキョロキョロと見回した。

でも、流石にそこまで痛くもない

「あゆみもありがとう、もう大丈夫だから。」

そう言ってもなお心配する歩みの隣で、ビニール袋をガサゴソと漁っていることの姿があった。

「あんたは何やってるのよ」

音が気になってなるちゃんがことに突っ込むと、

「冷やすもの、って言ってたからこれなんかどうかなって。差し入れ。」

と言って人数分のジュースを取り出した

「なんでそんなもん持ってるのよ」

「目の前のコンビニで買ってきた」

「この状況で行く?普通そんな時間あったら加勢するでしょう?」

「どうせ勝つでしょ」

信頼なのか自信なのか、自由なのかよくわからない理由でそう返した。
でも、普通にこれはありがたい。

私たちは一本ずつことからジュースを受け取った。
ちなみに、しっかり100円回収されました。

それと同時になるちゃんは配られた身に無線を回収した。

私は無線を返し、まだ言い合いをしている こと からリンゴジュースを受け取ると、
先にカフェオレを受け取ってた洋太が、それを飲みながら何か考え事をしていた

「どうしたの?」

「いや…なんか釈然としないんだよな…」

「なんで?」

「本当にをさっきのやつだったのか?」

「そうじゃないの?謎の遠吠え情報とか、謎の足跡とかは全部一致したよ?」

「でもなぁ…」

洋太はそれでも納得できない様子で顔を顰める

...というのはここ数日起きているある騒ぎのこと
今日、このように大掛かりな作戦を立て、戦った原因の事件だ。。


少し回想しよう。

それは数日前の朝、とあるニュースが流れたことが始まりだ。
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