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一部 7話 身近な炎の慎重さ

7ー6 神様の不思議な嘘

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「はぁ.........」

バレた。

いや、バレてた。


私は学校の屋上で空を仰ぐ。


隠してるわけではなかったけど...........
別に...本人にバレてしまったわけじゃないからいいんだけど...

「別に悪いことしたわけじゃないんだけど.........。」


まぁ、ことが恋愛への憧れ敗れた後っぽいからなぁ......ああ言う反応になるのは仕方ないのかもしれないけど...

うん、仕方ない。
ただ、とても教室に戻りにくい。 

どうしよう、クラス中で話題になってたら...。

頭を抱えていると後ろからガチャリと言う音が聞こえた。

「あ、偶然だね。何してるの?」

「ひゃっ!」

驚いて声を上げて振り返る

心矢だった。


「な、なんだ、心矢か!何か用?」

 「僕はテスト直しという現実から逃げてきただけだよ。」 


「テスト直し...?帰ってからやればいいじゃん。まだ期限あるでしょ」


「ふふ...順位がブービーの僕のテスト直しにかかる時間をなめないでくれ」

ならば早く戻れ。

と心の中で思ったのは内緒である。


 それに、順位は本当でも、多分ここにきた理由は...唯一この件についての事実を知ってる人物として、私を気遣ってくれたんだろうし。

「教室で...もしかして話題になってる?」

 「いんや?僕はたまたま聞いてたけど、周りは気にしてすらなかったよ。怒った時以外、声そんな大きくなかったし。」 


「そう...よかった」 

流石にクラス中に自分の気持ちがバレてしまうのは恥ずかしい。 その様子を見かねた心矢は 

「もう言ったら?」

「誰に?洋太に?私前も言ったけど...」

「じゃなくて二人に。友達なら話して恋バナでもしなよ」


と簡単に言ってくる。

もし言えるのであればとっくの昔にいってるし、
心矢にバレたのも不覚だったんだから、余計なアドバイスはしないでいただきたい。

心矢はそんな私の心をよそにやれやれというように肩をすくめた。

「そういえば...いつからだったっけ?小4くらい?」

「心矢に話したのは小4...かな?気になったきっかけは小3だよ。 」


 「 あれ?そうだった?もう覚えいてないや...きっかけってなんだったのさ」

あぁ...そういえば...話したことなかったっけ...
「そんなに気なる?人の話...みんな聞きたがりなんだから。」
「だって、ある時点まではお互いに声かけたりしてなかったじゃん、いつからだっ たかな~と思ってさ。」

「...」

昔のこと掘りかえさなくてもいいでしょ...と少し思わないでもなかったけど、なんかこういうことがあると、ちょっと話したくなる気分にはなる。

というか、誰かに聞いて欲しい感もなくはない。

心矢はだいぶ前から私の気持ち知ってたので、その分話しやすいし...まぁいいか... とあの日の話することにした。


「小学校三年生の冬...雪がちょっと降ってたかな 」




#############


あの日...ちょっとしたいざこざに首を突っ込んだ。

普段ならそんなことをしなかったし、流せる言葉だったけど、あの日のあのタイミ ングでのその言葉は許せなかった。

でも...子供のいざこざというのは、こういう時首をつっこむと...当然のことながら 目をつけられる。

しかも私は、よりにもよって悪ガキ相手に噛みついたのだ。

私としては絡まれてたので助けただけだったのだけれど、先生にこっぴどく怒られた悪ガキの怒りの矛先は、当然こちらに向いた。 

『テメ、よくもちくってくれたな! 』

降ってる雪が結構積もった寒い日の授業終了後、掃除の時間が終わったくらいだろうか...

私は悪ガキ3人に引っ張られて体育館裏に引きずられるように連れて行かれ、地面に転がされる。


この時頭が働けばよかったけど、当時の私はいろいろあって冷静じゃなかったし、 自分のしたことを否定したくなかった。

だから

『私は悪いことなんかしてない...。
くだらないことしてるあんたらが悪いんでしょ!ちくられて困るようなことする方が悪い!』

このあと痛い目にあうことが予想できてても、反論することをやめなかった。
そんなことをすれば、悪ガキの頭に血が上って切れるのは当然だった。

『お前ちょっと調子乗り過ぎなんだよ 』

そういうと、その言葉がまるで合図かのように、取り巻きが私の腕を掴む。

『ちょ...なにすんの!放してっ...!!いたい! 』

流石に男と女、しかも3対1逃げるなんて無理な話だった。 この先の展開はもう見えていて、いろいろ諦めようとしてた。

拳がこっちに向かって飛んでくるのがスローモーションで見えた。 

これ...当たったら痛いだろうな... 私は目をぎゅっと閉じて痛みに耐える準備をした。 

でも...しばらくして、音はしたけど、体はどこも痛くならなかった。

なのに、ドサっという音は聞こえる。
意味がわからなくて目を開く

すると目の前にいたのは悪ガキじゃなくて...


『よ...洋太......くん...? 』

私に背を向けて、

私は洋太と地面に転がってる悪ガキを交互に見比べる。
洋太が悪ガキの動きを封じたと気がつくのに少し時間がいた。

当時はそこまで洋太とは仲良くなくて、まだ私は君ずけで呼んでいた頃だったから、まさか庇ってくれたことに驚いた。


 取り巻きもまさか悪ガキに逆らって、私をかばう人がいるとは思わなかったから、 目を丸くしてポカーンと口を開けていたが、途中でハッと気がついて


『んだよ。お前は関係ねーだろ!? 横から入ってくんなよ!』

 『そーだそーだ!引っ込んでろ!』

そういうと私の横にいた2人は洋太の方に向かって歩きながらそう暴言を吐いたでも、洋太も物怖じしなかった

『たしかに関係ねーよ。でも単純に3対1は卑怯だろ?」』

と2人に言った。 正論に勝てなかった2人は力で物を言わせようとしたけど...気がつけば、洋太以外は誰も立っていない状況になった。

なんでそうなったのか、現場に居合わせた私も目が追いつかなくて、いまだにこの間何があったのか思い出せない。

 『大体昨日注意受けたばっかりだろ?少しくらい反省したらどうなんだよ。』

洋太は手をパンパンと叩きながら、のびてる3人をみてそう言い捨てると、私の所にやってきた。

そして転んだ時に私についた雪を払いながら

『怪我してないか?』

と心配してくれる。

『え?...あ...うん。』

あまりにも突然のことだったので、私はおどろいていなかなかに間抜けな声を出していたと思う。

その様子を見て大丈夫だと思ったのだろう

『そっか、ならいいか。後が面倒だし、さっさと帰ろ』


 そういうと私の手を引いてそのまま学校を出た。

しばらくはそのままお互い無言で歩いた。

当時はまだ少し洋太に苦手意識があったので、どう会話を切り出していいのかわか らなかったけど、
でも、流石に助けてもらったお礼は言うべきだと思っら私は 

『助けてくれて、ありがとう』

と伝えた。

『別に...。』

洋太はぶっきらぼうにそう答える。 つかみどころのないその言葉に少しどう返答していいのか困った。

 だから、その答えに対する返事ではなく、別の質問を投げかけた。

『ねぇ...どうして...分かったの...?
私が...あそこにいるって。 』

『... 』

少しの沈黙 少しなんと答えていいか困っていたようだ。  

そして

『今日掃除当番なのに、いなかっただろ、心矢に聞いたら、あいつらと一緒にどっか行ったって言ってたからもしかしてって...外出たときに、体育館裏から声聞こえたし...』

と答えた。

わざわざそこに気がついてきてくれたんだ...と思うとちょっと嬉しかった。

でも、そのことに気がついたとしても、別にくる必要はなかったはず。

だって、彼らに目をつけられた私の所にきたら、今度は自分が目をつけられる可能性があるからだ。


 そんな危険を洋太が負う必要は、どこにもなかった。

 だから

『...なんで...来てくれたの...? 』

と、私は聞いた。

『......放っとけないだろ? あんな自暴自棄になってるところ見たらさ...。』

と洋太は答えた。
たったそれだけの返答。

もうちょっと、いいセリフはあったと思う。

でも、そんなことより...その一言の中に見える優しさが...すごく嬉しくなって...

『ありがとう』

とお礼を込めて握られてる手を少しだけ強く握った。
そのことに対して、言葉で返事はなかったけど...少しだけ強めに握り返してくれた。

なんかそれがすごく嬉しかった。



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「それからかな...気になり始めたの。」

 私は一通り話し終えると、心矢は「ほー」と呟く。

「全然知らなかった...なるほど、なんとなくわかった。」

「この話、そこそこ恥ずかしいから、ここだけの話にしてね。」

「わかってるって...でも洋太そう言う行動するんだ...以外」 

「まぁ、洋太からしてみれば本当にたまたまだったと思うよ ?多分あそこにいたのが私じゃなくても同じことしてたよ 」 

「どうだろうね...本人に聞いてみないとわかんないけど...」


 まぁ、別に真相が知りたいわけじゃないから、いいんだけど...多分本人覚えてないし。

そんな話をしていると、昼休みが終わる予鈴がなった。

 そろそろ教室に戻らないといけない。 


でも...どんな顔をして戻ればいいんだろう...私。


 少し教室に戻りづらかった。
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