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一部 6話 予てより知る風は桜舞う

6ー8 不思議なクシャミは嵐の前触れ

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翌日。 帰りのHR後

「はぁーーーーーーーーーーーーーーー。」

問題が色々入り組む中...、なるちゃんが特大のため息を吐きながら、死にそうな顔 をして机の上に突っ伏していた。

話を聞くと、昨日は徹夜でバグの解明に努めたらしい。


 「どう?」

おずおずとどうなったのか聞いてみた。 でも、もう顔から漂う想像と結果は違わなかった。 

なるちゃんは頭を抱える

 「全然!むしろ意味がわからなくなった!!」

もはや泣きそうだ。 
「な、なる...落ち着いてよ、問題点は?見つかったの?」

 ことは優しくなるちゃんに聞く。 

でもなるちゃんは頭を抱えたまま首を思いっきり横に振る。


「プログラムも組み立ても完璧なのよ!ミスも何も見つからない!今できることは 全部やったわ!なのに相変わらず、出現反応は持って数分しか表示されないの よ!!」


ある意味、ここまで完璧だと言われると自慢に思えてしまうが、実はそう言うことではない。
間違いさえわかればそれを正すため努力をすればいい、改善の余地はある。
でも、完璧で問題を見つけられないのであれば、これ以上改善することができないのだ。

「なんで...何が悪いのよぉ...」

 寝不足のストレスも相まって、なるちゃんは泣き言...いやもう泣きながらぶつぶつと呟いている。

「ねえ、出現反応から消えるまで...、毎回どのくらいの時間なの?」

ことは、なるちゃんにそう聞くと

「それは日によって違うわ...1分以内のこともあるし...5分以上かかることも。で も、現場につく前にいつも消えるのよ。」

と答える。


 そうなると考えられる可能性は... 

「現場に近づくと、反応きえる...とか言うバグじゃなくて?」

私はそう聞いてみる。でも違うらしい。

「最近なんか噂とかある?回帰現象的な。それに関係もしかしたらしてないかな?」

「じゃあ...最終手段で少年に聞く?」 

「機械のプログラミングのことなんて光星君に聞いたって、理解できないわよ日本語英語も通じないのよ!」

「誰も「ぷろぐらむ」のこと言ってないよ、あんたが見る限り、もうそれは完璧なんでしょ?じゃあ、本当に出現してる可能性もあるじゃんだったらもうそっちは問 題ないんじゃないの?」

「だから...たどり着く前に消え...」

「だから、その消えるのはバグとかじゃなくて、単純にたどり着く前にすぐ消えて るんだよ!単純になんか消えるような事があったでしょ?で、もしそうならその原 因に少年は心当たりがあるんじゃないの?」

ことの言葉になるちゃんはハッとした。

確かにあまりにも早く消えるからバグなんだ、こっちの問題なんだって思い込んでいた、すぐに消えるなんてことはないって先入観があった。

現地に行っても何もないから実際は何もないんだって思ってた。 でも、考えてみればすぐに反応が消える可能性なんていくらでもある。 そういう性質だとか、もしくは...他の誰かとか。

「もしかして...!」

「ちょ...なるちゃん!」 

先に何か心当たりがあったのか、なるちゃんは外に飛び出して行ってしまった。


 「ど...どうする...?」


 「多分少年のところだと思うし、あたしたちもきになるからおいかけよ。」

「そうだね。行こう。」

そう行って私たちは教室を出ようとした。
その時

「わっ!」

「きゃっ!」

扉を開いた瞬間誰かとぶつかってしまった。

「ごめん大丈夫?」

「あ、いえ...こちらこそ、前を見ていなかったので...ごめんなさい。」

そういうと霜月さんは私たちと入れ替わりで教室の中に入っていた

そしてふと、昨日のことを思い出した。

「ねえ、ことってさ...霜月さんとも仲いい...?」

「うん、仲良いよ~」

「あのさ、ちょっと聞きたいんだけど、霜月さんって...どんな子?」

「え?あゆみ?見たまんま、あんな感じの物静かでおとなしい子だよ?」

「嫌味とか悪口っていう?」

「え~?あの子に限ってはないよ」

「だよね...」

やっぱりそうだよね...今話した感じも、大人しくて礼儀正しい感じだったし...嫌味 言ったりさ、悪口言ったり、きついこと言ったりするイメージないよね...

うーん...別に洋太が嘘ついてるとも思わないし...なんであんなこと... 

「どうしたの?なんかあった?」

「...なんでもない。」


「そう?なら早くなる探しにいこ。」

「うん...」

まぁ.........今考えることではないか。
私は霜月さんのことはとりあえず置いておいて、とりあえずなるちゃんを追いかけ ることに集中した。

「ちょっともう、信じらんない!なんでその話先にしないのよ!」

校庭に出るなり、鳩姿の鼻水垂れてる光星に掴みかかるなるちゃんを発見。

「ちょっとなるちゃん、どうしたの?教室突然飛び出して!」

私は光星君の命の危機を感じ、とりあえずなるちゃんから光星君を引き剥がした。

そんな私を見ながら、なるちゃんは涙ぐんで

「だって聞いてよ!HPSのプログラムも組み立ても何も問題ないからおかしいなと 思ってたら...光星くん隠し事してたのよ!」

と叫んだ。

「隠し事って?」

「ほら、今の話。二人にも自分の口から説明なさい!」

と憤慨する。

どういうことかと光星君をみると、鼻水をすすってから話し始めた。

「じづは...神様の生まれ変わるとき、僕の能力と、この勾玉が必要なんでず。」

「勾玉?」

そういえば入学式の日...なんかそれっぽいもの見たような...あれってそういうこと だったんだ...

「その勾玉がないと、生まれ変わりを探すことすらできないのですが...実は...それが、一つ見当たらないんですよ。」


その発言に、私たちは度肝を抜かれる。
そんな...大事なものがなくなるなんてことあるのだろうか
いや、ないというのだからないのだろうけど.........。

「え、なくしたってこと!?」

「ねえ、それいつからないの?」

私たちはその事実に慌てないではいられない。
でも.........

「わかりません。ちゃんと中身数えたの最近でして...」

案外管理はずさんなのかもしれない。

「ってことは.........どういうこと?誰かがそれを持ってるかもってこと?」

「それって...どういうことになるの?」

「生まれ変わり以外はなんの効果も発揮しません。でも生まれ変わりの人が所持し ていた場合は...」

「もしかして...力使えちゃうの?」

 「...」

そうか...これで話がつながった。もしもうすでにその人が力を使える状態なら、な るちゃんの幽霊探知機の反応の謎が解ける。

誰かが、もう神様の力を使えてて、私達より先に見つけて戦ってる。

だから反応がすぐに消える...何もおかしなことではない。
バグじゃなくて、本当に消えてたんだ!その人のおかげで

「でも、それなら、誰かが正確に本人に渡さないと無理よ?落し物を本人が拾う可能性なんてかなりわずかだもの。」

「...でもそれなら、光星君がなくしたんじゃないかも.........最初からなかったとか」


 「そんなことありえる?」

「私たちが推理したってこればっかはどうしようもないよ...光星君、誰か聞ける人いる?」

「...わかりました。ちょっとお時間ください、確認してみます。」

 光星君は状況確認のために飛んで行ってしまった。
それから待つこと数分。

「ただいま戻りました!」

あっという間に帰ってきた。

「光星くん!もう戻ったの?」

「えぇ、そんなに時間かかりませんでしたので。」

「で、結果は?」

「ルイさんのご指摘通り、一つは元からなかったようです。」

「やっぱそうだったんだ。でも何で?」

「無くなった勾玉はシナツヒコと言う神様のもので...先代が、回収できなかったそ うです。」

「回収?どういうこと?」

「...」 

深く理由を聞こうとすると、光星君は口をつぐんだ。 少し言いづらそう...という表現が正しいだろうか。 

「少年?」

ことは光星君に話の続きを促した。 ようやく決意をしたのか、光星君は口を開く。 

「少し、重たい話になります。それでもいいですか?」


 一瞬そう言われて私たちはお互いの顔を見あった。

でも、これから生まれ変わりを 探しに行こうとしていて、それがこのHPSに関係しているのだとしたら、聞かないわ けにはいかなかった。

言葉に誰もしなかったけど、光星君はその様子を読み取って、話を始めた。

「...みなさんには...それぞれにお話ししたと思いますが、神の力というのは無限のものではなく、消費されるものです。何代にも渡る戦いで、生まれ変わりの皆さんの神力は多かれ少なかれ衰えています。 
そのせいか今代は特殊なこととが起きています。
僕が現世にいるのも、その一つです」 

「なんで少年がいることが今までと違うことになるの?」

「神が現世に降りることは本来ありません、それでも僕が現世にきたのは、今代のツクヨミが本来の任務を果たせなくなったため、任務の代行...というのが一つ です。」

「任務?何それ?私何も知らないわよ?」

光星君の説明に心当たりのないなるちゃんは首を傾ける。

「それこそが任務遂行不可能の理由です。
なるさんは力の衰えにより、歴代できていた前世の記憶の継承ができなかったんです。
これはなるさんのせいではなく、自然なこと、仕方のないことなのです。」

「その任務って...?」

「歴代のツクヨミは、記憶を全て所持していましたので、
時期が来たら、高天原から勾玉を受け取り生まれ変わりを探すこと。
全て終了後、ツクヨミが 残っていれば生存者と救済処置対応外の方の勾玉回収して高天原に返還するのが任務の内容でした。
そして...先代ツクヨミは最後まで残りましたので、救済処 置に対応されなかった方々の勾玉の回収を行っていたそうです。」

「ねぇ...それって...まさか...」 

救済処置が適応されなかった...つまりそれは............戦いの中で無くなった、ということを指す。 

わかってたことだけど、ここにきて現実味を帯びてきた。救済処置はある。

でも死なないなんて誰にも保証できないってことを...。 

 「気にしても仕方ないわ。
でもそのことが回収とどう関わるのよ。
それまでのツクヨミにはできてたのに。
先代ができなかったのはなぜ?」

なるちゃんは気持ちを切り替えて話の先を促す。

 「...それは、当時の時代背景に原因があります。先代の戦いは戦時中。
しかも爆撃があった地域...そんな状況下では遺品とかがなかなか集められなくて...回収までに時間がかかってしまったんです。
そうこうしているうちに、シナツヒコの生まれ変わりの勾玉だけ、見つからなかったそうです。 

ようやく見つけた時には、葬儀も終わっていて、家族・親類の方々が、それはそれ は、それを形見として大事に扱っていたそうです。さすがにそれを返せと言えず、先代のツクヨミは、回収は行わなわず、そのままにしたそうです。」

その話を聞いて私は光星君や先代のツクヨミ、そして神様たちを責められなくなっ てしまった。

大事な人の形見として大事に飾られてるものを、取り上げられるわけがない。
 ...物理的...というよりは人情的にできなかったわけね... 形見として大事にされてるもの...返せとは言いづらいよね...

「今の状況を考えると、その勾玉を持ってる人が、今戦ってる可能性があるのよね。
ってことは先代の血筋の人が生まれ変わりだったってこと...?神様の生ま れ変わりって血の繋がりが関係あるの?」

「基本は変則的ですが、シナツヒコの生まれ変わりだけは、何代か前から同じ家系に生まれるようになりましたね。
だから先代ツクヨミも、次もそうだとみてあえて 勾玉を残していったそうですが。」

「ってことは...その家がどこなのか分かれば、解決じゃない。どこのお家なの?」

解決の糸口がこれでようやく見えてきた。
しかし...

「それが...もうこの辺りが昔と風景が変わりすぎて、どこがその家なのかもうわか らないようで...家は大きかったそうなのですが...」


 そこまではわからないらしい。
これでは探そうにも探せない。

「男か女かもわかんないの?」
その問いにも光星君は首を振る 

「基本的に先代までのツクヨミ以外は毎回性別違いますので、決まってないかと」

 「じゃあもう手がかりないね......。このままにしておくわけにはないし...」


「でも、話聞いてるとさ...なんか歴史あるいい家のお坊っちゃまお嬢様を連想できなくもないよね。
由緒正しき後継者~みたいな話で血縁どうこうとかあるじゃん。」

多分そういうことではないんだろうけど もうそういう視点でもないと探すモチベーションも上がらない。 まあそう都合よく...

「あるかも」

あるらしい。
少なくとも、ことにはその心当たりがあるようだ。

「だ、だれ?」

私はことに戸惑いながら聞いてみる。 するとことは顎に手を添えながら話し始める 

「うん...ほら、この前の実力テスト1位とった霜月あゆみって子わかる?」 

「あぁ、霜月さん?」

知ってるも何も、私個人的には今ホットな話題だ。

「あの子、家茶道の家元の子で、次女なんだけど次期後継者なの。
結構歴史ある家で家も結構大きいし...ご両親も立派なところ勤めてるんだって。 
年齢が近い、この近辺って条件を加えるなら、あの子くらいしか...」
 

まるで絵に描いたようなお嬢様だ。 
でも言われてみれば、口調も丁寧だったような...納得ではある。
なるほど、確かに一番可能性があるのはその子かもしれない。

「逆にいえば、その子じゃなければ勾玉残ってる可能性はないわね、普通の家なら 遺品整理の際にどっか行っちゃってもおかしくないし、引っ越してる可能性すらあ るもの。」

それなら詳しい話を後は本人に聞くしかない。 

「確か、さっき教室にいたよね」

 「ちょっと交渉してみよっか。」
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