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一部 5話 恵みの水を得るために

5ー10 覚悟の決め手、選択の余地

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鶏を仕留めることができたその頃、
ちょうど水長さんが使った技が切れたのか、
雨が止み、小さな虹が出ている。

 ようやく終わったその戦いに疲れ果てた私と水長さんは隣に並んで地面に座り込んだ。

「よかった...、なんとか鶏に当たった...」 

「お疲れ様、ありがとう。でも...焼け跡は残るんだね。」

「火事が起きたのは事実なので。なかったことにはできません」

そう言いながら光星くんは雨でびしょ濡れになった私と水長さんの体を暖かい光で 乾かしてくれた。
ちなみに壁に隠れて安全圏から後方支援をしていたなるちゃんは、雨の範囲外だっ たらしく、全く濡れてない様子だった。
その状況がなんとなくおかしくなって、私たちはふふっと笑い合った。 そして、それが落ち着くと、私はもう一度水長さんに聞く。 

「...水長さん...本当に...よかったの? 無理してない?」

「......言ったでしょ?もう覚悟決めたって。 非常事態ですぐ動かなきゃいけないこの状況で...わがまま聞いてくれただけであり がたいよ」

「水長さん」 

私がそう言うと、プッと吹き出して大声で笑いだす水長さん。

「やだなぁ、あたし仲間に入れてもらえたんでしょ? 名前でいいよ。苗字で呼ばれるの慣れてないし」

「え...じゃぁ... 下の名前...こと...だったっけ?」

「そうだよ、木下さんは...確かルイだったっけ?」

「うん...なんか改めて呼ばれると照れるね」

「そう?あたし今のが楽だけどね」

そう話し合うと、またあははと2人で笑いあっていると

「ちょっと!誰か手伝ってもらえる?土屋さん、 保健室に連れて行きたいんだけど、私一人じゃ重くって...」

遠くからなるちゃんの苦情が聞こえた。
土屋さん、もうちょっと遠いところで解放されてると思ってたら、案外ずっと近場 にいて、なるちゃんがずっと面倒見てたらしい。

「あ、ごめん。手伝うよ。」

私たちは慌ててなるちゃんと土屋さんのところへ駆け寄り、保健室まで連れて行っ たのだった。

その後、消防車が到着したことには全てが終わっていて、色々現場が困惑したらし いことは私たちの関わるとことではなかった。

そうそう、疑問といえばもう一つ。

「ねぇ、そういえば飼育小屋の鶏はどうなったの?」

「あぁ、さっき逃げてくところ見たわよ。だいぶ前だけど」

「よかった、チキンになってなくって」

「でも、どこ行っちゃったのかしらね...」 

「うーん...学校内にまだいればいいけど...」 

「戻ってくるかな...」

「見つかるといいね。」 

その後、飼育小屋の中に鶏が戻ってきたのか、

それも私たちの関わるところではなかった。



でも、ちょっと怖いので
しばらく飼育小屋にはいかないだろう。
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