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一部 4話 見聞するは知りたがり

4ー11 不思議な火災を追う二人

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その周りには、火事が気になってやってきた野次馬のみなさんが群れを作っていた。

その野次馬の群れから少し離れた場所から私たちは様子を見ていた。

 「どうするのよこれ...こんな状況じゃ、私たち中に入れないわよ?」

「光星くん...念のために聞くけど、武装状態の時火に強くなったりする?ほら、基本的な身体能力や、防御力は上がるって言ってたよね?」

念押しのために光星くんに聞くと、光星くんは黙って首を横に振った。流石にそういうことに耐性ができたり、平気になったりするほど便利な能力ではないらしい。

「ねえ、ヨミの気配はするの?」

「............ありますね...あの炎の中からわずかに感じます...」

「炎の中って...そんな無茶な...」

「この状況じゃ、消防車が来て、あれを消すまで何もできないわよ」

「...今この中には水の能力を持つ人がいないですから...消火できないですし...」

急いでここまで来たのに、防ぐこともできず、対処することもできない...とてもはがゆい。

 せめて被害者が誰もいなければいいけど... 私は工場のをまじまじと見る。 すると、そこに人影があるのが見えた 

「ねえ、あれ、水長さんじゃない?」 

「え?あ、ほんとだわ!やっぱり彼女こっちにいると思って...」

巻き込まれてないことを祈っていたけど... 仕方ない、こうなってしまった以上今できることをしないと。
熱いとか言ってる場合じゃない、このままあそこに放っておいたら水長さん煙吸っ て大変なことになる。
私は水長さんを助けるために、武装してから走り始めた。 

「ルイちゃん待って!そのままじゃ無謀よ...!「月時鏡光」!」

私が飛び出して言ってしまった様子にあわてたなるちゃんも急いで武装して、力を 使って一部の炎の時間を止めてくれた。
熱さはあまり変わらないけど、それでも時間が止まってくれたおかげで炎はだいぶ 避けやすくなった。

「水長さん!」

なんとか水長さんに近づいた私。
ほおをペチペチを叩いてみると「うー...」と唸りはするけれど、目は冷まさない。 気を失ってるようだ。その側には水色に輝く勾玉が落ちていた。
私...これ...見たことあるような............... 


「ルイちゃん!あそこ!いたわ!」

そのことを思い出すよりも先に、後から追いついてきたなるちゃんに大声でそう言 われ他ので、追求をやめ周りを見渡した。
すると、煙の向こう側に鶏がいるのが見えた。 逃げようとするどころか、炎の海の中を平然とテクテクと歩く鶏が。


 間違いない!あれがそうだ!

 「彼女は僕がみてます、2人はあれを!」

光星くんが彼女の介抱をかって出てくれたので、私はそのまま鶏を追いかけに言っ た。

水の力は持ってないけど、この前の要領で時間を止めれば 後は槍の攻撃でも多分倒せる なるちゃんもそのつもりだったのか、さっきの要領ですぐに時間を止めてくれた

でも、人生そんなに甘くない。

「あっつ」

時間が止まったのは鶏だけ。 周りの炎は鶏の時間が止まった瞬間にまた動き出してしまった。

これでは鶏に攻撃どころか近づくこともできない。
意図的にやってるわけじゃない、なるちゃんも思うようにうまく止められず困惑し ている様子、

そうしているうちに、鶏にかけた時間停止の技が解けてしまい、私たちの存在に気 がつかれてしまった
鶏は怒って私の方を向く、くちばしの中に炎を溜めてこちらにゴオッっと吐き出してきた

「ルイちゃんだめ!逃げて!」

なんとか避けたけど、今のは運が良かっただけ...このままだと戦う土俵に立つ以前の問題だ。
なるちゃんの方を見て、もう一度時間停止をしてもらおうと振り返ると、ハアハア と荒い呼吸をしながら申し訳なさそうに首を振る

「なんとかしたいけれど、今の私じゃ炎か鶏どっちかしか時間を止められないわ...」


 力を使ったせいか、炎のせいで酸素が足りなくなってるせいか...あるいはどっちも なのかわからないけど、なるちゃんに頼むにはあまりにも負担が大きそうだ。
光星くんは水長さんに手一杯...助けは求められない。
仕方ない、今できる方法で精一杯やるしかない。

「一箇所だけ広範囲で時間止めることはできる?」

「炎だけならなんとか...でも今鶏がいる場所の半径1メートル分の炎がせいぜい、 鶏は止めれないし、炎の中に逃げられたら...」

でも...水を操る力は今戦える人の中には誰もいない、攻撃をできる状態なのは私だけ、
今ちゃんと攻撃できなきゃ炎の中でみんな倒れで終わっちゃう。 

「このままじゃ近づけないよ、一か八か...お願い。」

 「わかったわ、やってみる。」 

なるちゃんはもう一度時間を止めた
炎の動きは止まった、
私はその止まった炎を避けながら鶏に近づく。
でも、炎を避けながら急いで移動すると普通の道よりも静かに近づくのが難しく、
敵に気配が感じられやすいらしい、だどり着く頃には素早く走って逃げてしまう。

それも時間が止まってない炎の方へ

当然攻撃は当たらない。

近距離戦は諦めるしか、


私は槍での攻撃を諦め、悪霊の時に使ったあの力で攻撃してみることにした

あたりが白く光る。

攻撃自体は鶏にうまく当たったのが見えた、攻撃も効いてる

ただ、致命傷には至らない。

 少なくとも小走りで逃げる程度の元気は鶏に残っている
攻撃できるのはさっきも言った通り私だけ、挟み撃ちは望めない。

このままだと鶏を見逃す、それだけは絶対に避けなきゃ。

今、私がやらないと

せっかくなるちゃんが時間止めてくれたけど、それだけじゃ間に合わないし、これ 以上力を使わせるわけにはいかない。

熱いのくらい我慢して、後を追うしかもう方法がない。 私は息を吸って、時間が止まってない炎の海の中に足を踏み入れた。

その甲斐あってなんとか攻撃は喰らわせられた

でも


「コォオオオー!!!」


鶏がまたくちばしから炎を出した。 よく見えてなかった私は、足にもろに攻撃を受けてしまった。

「きゃっ!」 

私が倒れる直前、なるちゃんが私の周りの炎の時間を止めてくれた。 おかげで二次災害は防げたけど、体の傷は結構なものだった。 


「ルイちゃん無茶しないで!足火傷して...」



確かに結構ひどい火傷になってる。 中学生女子としてはなかなかショックだけど、そんなこと言ってる場合じゃない。 

「後手で当てでもなんでもするよ、それより...」 

傷ついた鶏は怒りをあらわにし始める 見境なしに炎をあちこちに

「コォオーーー!」

と言いながら吹き出した まずい、ここは工事現場。


 いろんな車や機会が置いてある。 万一車などに引火したら... その不安は、すぐに現実となってしまった。 それが近くのクレーンに引火した 「不味いわ、逃げましょう!」 このままクレーン車の中のガソリンに火がついたら... 一気に爆発

そうなったらもう逃げられない。
それに気がついて逃げようとしたその時、
パッと周りが白く明るく光った。

爆発する

私は目をぎゅっと閉じた。


でも


なにも起こらない。


それどころか、今まで感じていた熱さまでなにも感じなくなっていった
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