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一部 4話 見聞するは知りたがり

4ー9 不思議な火災を追う二人

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「絶対にわざとよ、どさくさに紛れて片付けを放棄したに決まってるわ」

図書室が閉まり借りる本だけ借りて、家に向かって住宅街を歩く。
私が歩きながら 鞄を整理している横で、ぶつぶつと文句を言っているなるちゃん。

原因は図書室を出る直前の一幕。


 もうすぐ図書室が閉まると先生に声をかけられ本を借りて出ようとした時、土屋さんの残した地図帳が私たちが広げたものだと勘違いされ、片付けるよう注意されたのだ?

だからまったく関係ないのに片付けさせられて帰宅時間が遅くなったことに腹を立 てたなるちゃんはプンプンと怒っていたというわけです。

「まあまあ落ち着いて、多分本人に悪気はないよ、ね?」 

「だとしたら尚たちが悪いわよ!
もー図書室なんか行かなきゃよかったわ、
いや!そもそも光星くんがちゃんと敵の居場所感知できれば...!!」 

もはや自分で行くって言い出したことに対してまで怒りはじめてしまった。

「でも、多少情報得られたじゃん、ほら目的は達成したんだからそんなに怒らなくても」

「...」

「光星くん帰ってきてたら私がちゃんと説明しておくし、あとは新情報待とうよ、ね?」

「...」

私の言葉に返事もしてくれない。
納得できないということだろうか...まぁ納得させるだけの材料なんか持ってないか ら当然なんだけど...

でも返事してくれないと、会話が続かない... 


「なるちゃん...?」

何かしら返事をもらおうと声をかけると

「あれ...」 

なるちゃんはゆっくり自分の前にある家の柵を指差す。 

そこには白い鳩がいた。 

「あ、お勤めご苦労様です。」


光星くん、帰還。


「何んでいるのよ」

「...きちゃダメでしたか?」

待ちわびていた帰還も、タイミングが悪いと歓迎されない。

「ところで、ルイさんが持ってるそのたくさんの書物はなんですか?」

光星くんは、なんとなく空気が悪いのを察知して話題を変え私の持ってる本に注目した。

「あ、これね。
この前話した火事と関係あるのがいるんじゃないかってなるちゃんが...」

光星くんに一冊見せてみると、タイトルだけでなんとなく言いたいことが伝わった らしい。

「なるほど、妖怪ですか。
たしかにあり得るかもしれませんね。」

「やっぱりヨミって妖怪送ってきてるってこと?」

「無いこともないかと、妖怪は実際いますし、
ただ黄泉と関係するかは分かりませんが、参考になります。後ほどまた見せてください」

光星くんがそういうのでとりあえず私は見せた本を自分の鞄の中に戻して家に帰ろうとして足を進めたけど、光星くんは岩のように動こうとしない。

その様子を見てなるちゃんはふと疑問に思ったのだろう 

「そういえば、こんなところで何してるの?」 

と光星くんに聞いた。

「実は...あの方」


 光星くんは自分の翼を片方突き出して私たちの視線を促す、その先には見覚えのある人物がいた。

「土屋さんだ」

「なんでまたこんなところにいるのよ」 

「情報収集かな...で、彼女がどうしたの?」 

私が光星くんに話を聞くと、光星くんはこちらに顔を向け、翼を土屋さんに向ける

「実は、あの人なんです、あの日の夜に見たうちの1人」 

私達はその告白に驚いた。

「それ!ほんとなの!?」

「あのシルエットは間違い無いです」

「え!?じゃあ本当に土屋さんなの?」 

それが本当なら、なるちゃんの予想は当たったことになる。
しかもわかったなら、問題は解決だ。

でも、光星くんは渋い顔をする。


「実はそれが分からなくて」

「なんでよ」 

「もう1人いるんですよ、あの時間帯にいたその服を着た人が」 

その発言を聞いて一度思考が止まる。
そしてその発言の意味が分かった時、初めて自分の認識が間違っていた事に気がついた。

「ちょ、ちょっとまって光星くんがみたの2人なの?」 

「そうですよ、だから悩んでるんじゃないですか」 

「いつも言葉が足りないのよ!もう一度ちゃんと説明してもらえる?」 

なるちゃんがそういう時、光星くんが詳しくその日のことを話した。

ぶつかったところまでは同じ、
 
ぶつかったその時は顔を見ていなかった。
そして姿を見られたことに気がついた時、同じ服を着た2人を見つけた。

その2人は知り合いらしかった

どちらかとぶつかったのはわかった。
でも、どっちだったか、それは分からなかった。

それが光星くんの、あの日にあったことだ。


「そういう事ならもう1人は水長さんかな」 

「そうでしょうね...可能性として一番高いわ。
でも、どっちかなんて私達じゃ...」

確かに、判断は無理だ。
でも、それでもその日いたうちの1人は分かったんだ。

なら

「...ねえ、もう直接聞いてみない?
火事の日に男の子見たかって」


 せっかく光星君をみたかもしれない人の候補が目の前にいるわけだし、ここで様子をうかがってるよりはそのほうが早い気はする。
でもなるちゃんは当然のことながら乗り気ではないようだ。 

「えー、いやよ、また学校の時と同じことになるもの
また何か要求されるわ」

ただ聞きたい事があっただけなのに、逆にこっちのことを聞かれたのが相当嫌だったらしい。
気持ちはわかる、おそらくここで何をしてるのか聞くだけでも、彼女は私たちには 何も教えてくれないだろう、私たちが提供しない限り。

でも... 

「土屋さんが仲間なら、どのみち避けては通れないよ。まぁ土屋さんをこのまま仲間にしないで放置するなら話しかけなくてもいいとは思うけど」

「でもあの子の要求に答える義理がないわ。
なんで私があの子に手の内見せなきゃいけいのよ。
言いふらされる可能性があるのに」

結局問題はそこ。

なるちゃん自身そう簡単に情報は渡したくないのだ、
どちらかが折れない限りは平行線...でも土屋さんが折れる理由はない...なんとか聞き出す以外で知る方法があれば

...ちょっと待って、情報を聞こうとするから、対価を、払うことになる。

でも、知られないように情報を収集すれば、痛手はない。
確実に判断つく方法は


「...そうか.........ただ、普通に声をかければいいんだよ」

「どうやって...」

「簡単なことだよ、神様状態の光星くんを土屋さんの前につれてけば 見えてるかどうか判断ができる」

そこそこ目立つ格好の光星くん、流石に目の前に連れて行ってなんの反応もないと は思えない。

それで反応があればもう確定だ。


 でも、それでも浮かない顔をするなるちゃん、この考えに少し懸念があるらしい。

「あの守銭奴のことよ、光星くん見えても表情に出さないかもしれない、そうなったら判断できないしわ。
それになんて聞くの?
私達が光る星くん連れてって、見える?って聞く?
普通ならそれでいいけど、それも情報料いるわよ」

「確実に判断するなら私達がついていかないで、光星くんが一人で直接話しかければいいんだよ、それで返事するかどうか確認すれば、なるちゃんの手の内見せなくて済む」

それも、明確にわかるように声をかければそれだけで判断ができる。

まだ少し不服そうだったけど、なるちゃんはしぶしぶOKを出し、その様子を見た光星くんは鳩から神様の状態の姿に戻る。

準備が整うと
私はは光星くんの背中をポンと叩くと意図を汲み取った光星くんが頷いで息を吸った。
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