上 下
44 / 107
一部 4話 見聞するは知りたがり

4ー7 不思議な火災を追う二人

しおりを挟む
放課後
なるちゃんについて放課後にやってきたのは図書室だった。

「なんで図書館?」

確かに図書館は情報の宝庫だけど、
最新の情報があるとは思えないし...

「誰が最新の情報を探すって言ったのよ」

「え?」

「まあ付いてきなさいって」

なるちゃんの後をついて図書室に入ると、やってきたのは歴史やら逸話がまとめら れてるコーナーだった。

「ねぇ、もしかしてこの中から探すつもり?」

「そう、最新じゃなくて似たような現象について記載されてる本を探すのよ。
例えばこの辺りとか。」

そう言ってなるちゃんが本棚から取り出したのは妖怪図鑑
適当にペラペラと本をめくると、探していた項目が見つかったのか、

その手を止めて

「この前のあの小動物は...差し詰めこれじゃないかしら」 

と私に指をさしながら見せた。


 私は指された項目をみる

 「えーっと、鎌鼬...?」 

その項目にはこのように書かれていた

ー鎌鼬とは、イタチのようなその姿に鎌のような爪を持つ妖怪、つむじ風に乗って 刃物で切ったような鋭い切り傷を人につける。痛みは伴わず血も流れない、一体と して伝えられるものと三位一体として伝えられているものと様々あるー
と。 

言われてみればあてはまる部分は多い。

「つまり...黄泉は妖怪を送り込んでる?
だから火の妖怪を調べれば対処方法がわかるかもしれないってこと?」

だとすれば、今後はこの図鑑を制覇すればある程度の対策は取れるかもしれない。

でも妖怪を送り込んでるとは限らないんじゃないだろうか。
だって、黄泉の国って死者の国って言ってたし、妖怪に当てはまるのはこの件だけ...

この前の行方不明は悪霊だって光星くん言ってたし...最初に至っては...あぁでもあ れは夢だったし...どうなんだろう...

「まぁ、違うかもしれないけど、やることないし暇つぶしになるじゃない。
それに 解決策見つかればwinwinだし、調べる価値はあるんじゃないかしら」

「そうだけど、火を出す妖怪ってそこそこいるんじゃない?絞り込める?」 

いくつか妖怪はカテゴリに分かれていたけど、火の妖怪はいくつか目につく。
どうやってその中から絞り込むのか...まだ当てはまるのが多いのは素掘り込めばい いだけだけど、どれも当てはまらなかったら...

「どっちにしろ私たちじゃわかんないでしょ、その話光星君に先に話した方がいいんじゃない?」

「そうしたいけどまだ帰ってないんでしょ?
いつ会えるかわかんないし、それに見えたって言ってた人物探しも忙しいだろうし、こっちはこっちでできることしましょう」

そう言うと無言で新しい図鑑を私に渡す。

探せという無言の圧力なのだろう。

仕方ない...確か何もしないのも気持ち悪いし...手伝うか。
私はペラペラと本をめくる。

しかし何十分か調べても、「これだ!」という決定打は見つからない。

妖怪ってわけじゃないんだろうか、もっと広げてみる?

そんなことを考えてると、扉が開く音が聞こえた。
ここは図書室なので、人が来るのは当然で、特に気にも留めなかった。
でもそのあとの声で少しハッとする。

「あい、やっと見つけた!本当にいい加減にしなって。 まだ続けるつもり!?」

水長さんの声だった。


 私たちはその声に驚いて、足音のした方に視線を送る。

水長さんに声をかけられたのは土屋さんだった。

自分たちは本棚で死角になってたから気がつかなかったけど、土屋さんの周りには 何冊か本がおいてある、それから察するに私たちより前からここにいたようだ。


「あらやだ、なぁに?喧嘩?」

私達は本棚の隙間から二人の様子を覗き見る
土屋さんが机に地図を広げ、水長さんがなにか怒っていた

「最近あの2人よく一緒にいるよね」

「よくあんなこと一緒にいれるわよね...ちょっと尊敬するわ...」

とりあえずなんの話をしているのかが気になる私たちは、少し休憩も兼ねて人間観 察をしばらく行うことにした。
土屋さんは少しイライラしている様子だ。

「ことちんには関係ないでしょ」

「今までみたいに、学校内で起こったことなら私だってとやかく言わない! でも、あんた最近危険な事件まで首突っ込んで...警察の真似事でもしてるつもり!?」

私はチラッと隣にいる人物を見る。

つい最近似たようなことをしていたからだ。 まぁもっともこっちの場合は安全圏からの操作してる分、自分の足で行動してる彼 女よりは身の危険はないからそういう意味での不安はないけど、まぁ犯罪者になる 可能性はあるから別の意味で怖いけどね、身内の私にも被害及ぶだろうし。

「でもそんな情報でも欲しがる人いたじゃん。なんか間違ってる?」

土屋さんはしれっとそういうと、水長さんは焦っているのか少しきつめの声で訴える

「今回はたまたまそういうのに興味を持った人がいただけ、今後も欲しがる人がい るなんて限らないでしょ、今回みたいな偶然のために...」


 「どんな些細な情報も握ってれば利益につながるよ。 みんな物やお金みたいな、目に見える利益にしか注目しないけど、目に見えない情報はすごく価値があるし、危険であればあるほど価値は高い」

「危険と天秤にかけるほど価値!?バカじゃないの!?」

「言っとくけど情報提供はただの副産物、私はただ知りたいだけだよ、情報集めて見えてくる真実に興味があるの」

「その真実が知れたとして、あんたの人生には何にもかわんないでしょ!?」 

どんなに相手を心配する言葉を並べても、強い好奇心の前には太刀打ちできない、

土屋さんは調べ物が終わったのか、地図帳を閉じると出口へ向かう

「ちょ!あい!待ちなさいって!」

水長さんは必死に止めようとするけど

「うるさい!ことちんのお節介者!!」

というと扉をバンって閉めて出て行ってしまった。

落胆して肩を落としている水長 さんのその姿は少し痛々しかった。

「...」 

その様子を見て、自分たちが声をかけても何か言えることはないだろうと思い、どちらともなくバレないように忍足で元の場所に戻ろうとした。 

しかしここでベタな展開。


しゃがんで様子を見ていたなるちゃんは足が痺れてたらしくよろけて本棚にぶつかってしまった。

そんなに大きい音ではなかったけど、シーンと静まった室内ではそれなりに響いた。

音がすると人間気になってしまうものである。

水長さんもそうだったんだろう、音が聞こえたであろう場所、すなわちここに向かって歩いてきた。

「あれ?木下さんと杉野さん?何してるの?」

見つかるまで数秒しかかからなかった、いや別にバレて困るようなことは何もして ないんだけど。

「もしかして...立聞き?」

少し疑いの目を向けられる。
まぁ疑いも何も立ち聞きしちゃった事実に変わりはないんだけど 

「ご、ごめん!そういうつもりじゃ... たまたま調べ物があってきてたの。」

「あはは、気にしないでよ、大した話してないし。」 

大したはなしじゃない割りにはそれなりの大声だったけど、

「なんかあぶないことにてをだしてるみたいねぇ」

しれっとなるちゃんが同情したようなことを言うけど、警察を盗聴しているあなた がいうべきセリフではない。

「まぁね、そろそろ行きすぎな気がして注意してたの。」 

「大変ねぇ...昨日もこんなことしてたわよね?ほっときなさいよ」

「そうなんだけどさ、ほっとけないじゃん。そんでも友達だし」

 「...」

言っても聞いてくれない人は世の中にたくさんいる。

そういう人たちに出会った時、人は離れるか、いうこと聞いてるフリをするか、という選択をすることがある。


少なくとも私はそうだし、周りも私に対してそういう対応をしてるだろう。

そしてそう言う対応してる人は、注意することを諦めてる。


でも、この子はちゃんと友達に鬱陶しがられてもちゃんというんだなぁ...命に関わることだからかもしれないけど

「そのお友達あんた振り切ってどっか行っちゃったわよ?放っとくの危険じゃない?」

「そうなんだよね...どうしよっかな。
あそこまで言われたからやめようかなと思って追いかけなかったんだけど」

たしかに、あそこまで言われたらちょっと考えるよね。



「でも、やっぱ追いかけよっかな...行き先だいたいわかるし。 
ありがとね、じゃあまた。」

そう言って水長さんは図書室から出て行った、おそらくこのまま土屋さんのところ に行くのだろう。

「自分に危険が及ぶかもしれないのに、健気ねぇ」

水長さんに対して感心しているなるちゃんが、その後ろの机に土屋さんが片付けずに残して行った地図帳が後ろに広がっていることに気がつくのはもう少し後のこと。
しおりを挟む

あなたにおすすめの小説

僕の家族は母様と母様の子供の弟妹達と使い魔達だけだよ?

闇夜の現し人(ヤミヨノウツシビト)
ファンタジー
ー 母さんは、「絶世の美女」と呼ばれるほど美しく、国の中で最も権力の強い貴族と呼ばれる公爵様の寵姫だった。 しかし、それをよく思わない正妻やその親戚たちに毒を盛られてしまった。 幸い発熱だけですんだがお腹に子が出来てしまった以上ここにいては危険だと判断し、仲の良かった侍女数名に「ここを離れる」と言い残し公爵家を後にした。 お母さん大好きっ子な主人公は、毒を盛られるという失態をおかした父親や毒を盛った親戚たちを嫌悪するがお母さんが日々、「家族で暮らしたい」と話していたため、ある出来事をきっかけに一緒に暮らし始めた。 しかし、自分が家族だと認めた者がいれば初めて見た者は跪くと言われる程の華の顔(カンバセ)を綻ばせ笑うが、家族がいなければ心底どうでもいいというような表情をしていて、人形の方がまだ表情があると言われていた。 『無能で無価値の稚拙な愚父共が僕の家族を名乗る資格なんて無いんだよ?』 さぁ、ここに超絶チートを持つ自分が認めた家族以外の生き物全てを嫌う主人公の物語が始まる。 〈念の為〉 稚拙→ちせつ 愚父→ぐふ ⚠︎注意⚠︎ 不定期更新です。作者の妄想をつぎ込んだ作品です。

【完結】私だけが知らない

綾雅(りょうが)祝!コミカライズ
ファンタジー
目が覚めたら何も覚えていなかった。父と兄を名乗る二人は泣きながら謝る。痩せ細った体、痣が残る肌、誰もが過保護に私を気遣う。けれど、誰もが何が起きたのかを語らなかった。 優しい家族、ぬるま湯のような生活、穏やかに過ぎていく日常……その陰で、人々は己の犯した罪を隠しつつ微笑む。私を守るため、そう言いながら真実から遠ざけた。 やがて、すべてを知った私は――ひとつの決断をする。 記憶喪失から始まる物語。冤罪で殺されかけた私は蘇り、陥れようとした者は断罪される。優しい嘘に隠された真実が徐々に明らかになっていく。 【同時掲載】 小説家になろう、アルファポリス、カクヨム、エブリスタ 2023/12/20……小説家になろう 日間、ファンタジー 27位 2023/12/19……番外編完結 2023/12/11……本編完結(番外編、12/12) 2023/08/27……エブリスタ ファンタジートレンド 1位 2023/08/26……カテゴリー変更「恋愛」⇒「ファンタジー」 2023/08/25……アルファポリス HOT女性向け 13位 2023/08/22……小説家になろう 異世界恋愛、日間 22位 2023/08/21……カクヨム 恋愛週間 17位 2023/08/16……カクヨム 恋愛日間 12位 2023/08/14……連載開始

一宿一飯の恩義で竜伯爵様に抱かれたら、なぜか監禁されちゃいました!

当麻月菜
恋愛
宮坂 朱音(みやさか あかね)は、電車に跳ねられる寸前に異世界転移した。そして異世界人を保護する役目を担う竜伯爵の元でお世話になることになった。 しかしある日の晩、竜伯爵当主であり、朱音の保護者であり、ひそかに恋心を抱いているデュアロスが瀕死の状態で屋敷に戻ってきた。 彼は強い媚薬を盛られて苦しんでいたのだ。 このまま一晩ナニをしなければ、死んでしまうと知って、朱音は一宿一飯の恩義と、淡い恋心からデュアロスにその身を捧げた。 しかしそこから、なぜだかわからないけれど監禁生活が始まってしまい……。 好きだからこそ身を捧げた異世界女性と、強い覚悟を持って異世界女性を抱いた男が異世界婚をするまでの、しょーもないアレコレですれ違う二人の恋のおはなし。 ※いつもコメントありがとうございます!現在、返信が遅れて申し訳ありません(o*。_。)oペコッ 甘口も辛口もどれもありがたく読ませていただいてます(*´ω`*) ※他のサイトにも重複投稿しています。

父が死んだのでようやく邪魔な女とその息子を処分できる

兎屋亀吉
恋愛
伯爵家の当主だった父が亡くなりました。これでようやく、父の愛妾として我が物顔で屋敷内をうろつくばい菌のような女とその息子を処分することができます。父が死ねば息子が当主になれるとでも思ったのかもしれませんが、父がいなくなった今となっては思う通りになることなど何一つありませんよ。今まで父の威を借りてさんざんいびってくれた仕返しといきましょうか。根に持つタイプの陰険女主人公。

生贄にされた先は、エロエロ神世界

雑煮
恋愛
村の習慣で50年に一度の生贄にされた少女。だが、少女を待っていたのはしではなくどエロい使命だった。

【完結】彼女以外、みんな思い出す。

❄️冬は つとめて
ファンタジー
R15をつける事にしました。 幼い頃からの婚約者、この国の第二王子に婚約破棄を告げられ。あらぬ冤罪を突きつけられたリフィル。この場所に誰も助けてくれるものはいない。

蘇生魔法を授かった僕は戦闘不能の前衛(♀)を何度も復活させる

フルーツパフェ
大衆娯楽
 転移した異世界で唯一、蘇生魔法を授かった僕。  一緒にパーティーを組めば絶対に死ぬ(死んだままになる)ことがない。  そんな口コミがいつの間にか広まって、同じく異世界転移した同業者(多くは女子)から引っ張りだこに!  寛容な僕は彼女達の申し出に快諾するが条件が一つだけ。 ――実は僕、他の戦闘スキルは皆無なんです  そういうわけでパーティーメンバーが前衛に立って死ぬ気で僕を守ることになる。  大丈夫、一度死んでも蘇生魔法で復活させてあげるから。  相互利益はあるはずなのに、どこか鬼畜な匂いがするファンタジー、ここに開幕。      

【完結】『飯炊き女』と呼ばれている騎士団の寮母ですが、実は最高位の聖女です

葉桜鹿乃
恋愛
ルーシーが『飯炊き女』と、呼ばれてそろそろ3年が経とうとしている。 王宮内に兵舎がある王立騎士団【鷹の爪】の寮母を担っているルーシー。 孤児院の出で、働き口を探してここに配置された事になっているが、実はこの国の最も高貴な存在とされる『金剛の聖女』である。 王宮という国で一番安全な場所で、更には周囲に常に複数人の騎士が控えている場所に、本人と王族、宰相が話し合って所属することになったものの、存在を秘する為に扱いは『飯炊き女』である。 働くのは苦では無いし、顔を隠すための不細工な丸眼鏡にソバカスと眉を太くする化粧、粗末な服。これを襲いに来るような輩は男所帯の騎士団にも居ないし、聖女の力で存在感を常に薄めるようにしている。 何故このような擬態をしているかというと、隣国から聖女を狙って何者かが間者として侵入していると言われているためだ。 隣国は既に瘴気で汚れた土地が多くなり、作物もまともに育たないと聞いて、ルーシーはしばらく隣国に行ってもいいと思っているのだが、長く冷戦状態にある隣国に行かせるのは命が危ないのでは、と躊躇いを見せる国王たちをルーシーは説得する教養もなく……。 そんな折、ある日の月夜に、明日の雨を予見して変装をせずに水汲みをしている時に「見つけた」と言われて振り向いたそこにいたのは、騎士団の中でもルーシーに優しい一人の騎士だった。 ※感想の取り扱いは近況ボードを参照してください。 ※小説家になろう様でも掲載予定です。

処理中です...