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一部 3話 暦を刻むはよりそう月

3ー10 不思議な傷は痛みなく

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痛く...ない..!

ゆっくりと目を開く


目の前には恐ろしい形相をした小動物
わたしはそれに驚いて体をびくっとさせた。


でも、動く気配はない、

止まってる。


空中で。 



まるで時が止まったかのように。



「ほら、様子見に来てよかったでしょ?」


今度は声が聞こえる
聞き覚えのある声だ。

私は顔を声のする方に向ける。

「どうせこんなことになってるに決まってるんだから。」

そこにいたのはなるちゃんだった。

「な、なんで?」

なんで当たり前のように、この状況に疑問も持たず声をかけてくるのか、訳が分からなくなっていると


「説明はあと!とりあえず避けて!
ずっと止めてられないから早く!」 

「え?わっ」


今度は誰かに腕をひっぱられて私は右に倒れる。
小動物が動きを再開させたのはその直後だった。

危機一髪とはまさにこのこと。

「ルイさん、なんで勝手に行動するんですか!?」

今度は光星くんの声が聞こえる。
私の腕を引っ張ったのは彼だったらしい。


「待ってくださいって僕言いましたよね!?」 


「ご、ごめん、偵察のつもりで。」


 「言い訳はいいですから、
早くあいつなんとかしましょう、武器出して」

わたしは光星くんにそう言われるけど、

「でも、武器消えちゃったよ!力もこの前より弱かったし!」

と訴える。
光星くんは思いっきり振り返ると

「武器壊れたわけじゃないなら、呪文唱えれば出てきます!
早く呪文唱えてください!」

と、全力で怒られた。
なので私は急いで武器を出した。


一方小動物は
今の一撃で怒りをかったのか、さっきよりも威嚇してきた。

正直、さっき全然歯が立たなかったから、うまく戦える自信はない


実際、向かってきた小動物の動きは見えないし、攻撃呪文は聞かない

「月時遅進」

遠くから呪文が聞こえた後、小動物の周りが光る。

直後、体の動きが鈍くなった。


そのおかげでようやく小動物の動きを目で追えるようになり、私はひょいっと攻撃を避けた。

すると光星くんが言う

「ルイさんいいですか?今彼女があの獣の移動速度を落として下さってます。
今草むらに隠れて姿が見えませんが、次飛び跳ねできたら、獣めがけて攻撃をしてください」

「でも、呪文効かなかったよ!」 

「この前とは属性が違うので、ルイさんの呪文は効きません、でもあの獣は早いだけ、強くはありません、
物理攻撃が当たれば倒せます!」

私は半信半疑だったけど、でも、さっきのスピードなら確かに呪文使わなくても、斬る事はできそうだ。

槍を構えると、ガサっと音が聞こえた

「来ます!向こうです!」


光星くんの声に反応して、私は振り返る

小動物の姿を捉えた。


いける!


そう思った私は
小動物目掛けて槍を振り下ろした。

すると今日初めて攻撃を当てることができた。

あんなに素早かった小動物はわたしの攻撃を避けることができない様子だった。


小動物は素早い動きのおかげでやりにくかっただけで、体力があったわけじゃないみたい。


何度か攻撃を喰らうと、地面に打ち当たり、ジュワッという音と黒いモヤを出して 消えた。

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