上 下
32 / 107
一部 3話 暦を刻むはよりそう月

3ー6 不思議な傷は痛みなく

しおりを挟む
翌日、私は悶々としながら学校の廊下を歩いていた。

『とりあえず、もう1人見つかるまで待機しててください
余計なことはしませんように』

と、今日家を出る時にそう言われたけど...

やっぱ、ちょっとは自分も動いておきたいな...
せめてなんか情報収集できないかな

でも学校でどうやって情報集めればいいんだろう...誰かに話聞くにしたって...誰に聞けばいいの?

手当たり次第に聞いたって知らない人の方が...

焦ることはないって言ってたし、無理に探すことはないんだろうけど... 

「仲間...ねぇ...」 

私は足を止めて窓越しに空を眺めた。

本当に任せっきりもなんだかなぁ、
実は、思うところはいろいろある。

確かに人数が増えれば、できることが増えればそれだけ危険は減るだろうけど...それは同時に... 


そこまで頭の中でぐるぐると考えていると、いつのまにか歩くのを止めていたらしい、

おかげでトンっと背中が誰かがぶつかったらしい。

私は後ろを振り返る。

そこにいたのは昨日傷だらけで登校してきたうちのクラスの女の子だった。

「あ、ごめんなさい木下さん。避けきれなくて」

私は名前を呼ばれて驚く

まだ学校始まってそんなに経ってないのに、もうクラスの人の名前覚えたんだ...

私 なんてまだ覚えてないや...ちょっと尊敬。

「私の方こそ、廊下で立ち止まってて...邪魔だったよね」

「いえ、わたくしが前をちゃんと向いていれば済んだ話ですもの」

そういって笑顔を作った彼女だけれど、
何か所も絆創膏やガーゼが貼られているその姿はなかなかに痛々しい。

...そうだ、そもそもこの子の傷見て湧いた疑問だし...場所だけなら本人に聞けばわかるじゃない?

流石に怪我した場所の心当たりくらいわかるかもしれない。
怪我した本人にこんなこと聞くのは不謹慎かもしれないけど、今は聞いてみるしか ない。

「昨日の怪我...大丈夫?すごく痛そうだったけど」

 「心配してくださるんですか?ありがとうございます。でも、見た目に反して全く痛くないんですよ」

私はマジマジと彼女を見る

昨日も思ったけど...本当に痛くないんだ...こんなに痛々しく見えるのに

こう言ってるってことは本当なんだと思うけど

「でも、どこで怪我したの...?こんなに...」

「さあ...わたくしも心あたりが...普通に通学して気がついたらこのようになっておりましたもので」

「そう...、家はどの辺なの?」 

「桜町です」

桜町...あんまり行った事ないけど...

あっちの方って住宅地多かったよね...そんな怪我するような場所...
まぁでもこれ以上聞くのはプライバシー的に良くないか... 

「そっか...また怪我しないように気をつけてね」

「ありがとうございます」

彼女はそういうと手を振ってその場を離れていった

桜町から学校までのどこか、か...

まだ範囲広いな...もうちょい絞れないかな。

私は足を進め教室の扉を開いた

ふとなるちゃんを見た、机の上で何かを作ってるようだ。 基本秘密主義だけど、たまーに学校に持って作業してる事あるんだよね。

本当に機械作るのすきだなぁ...その途中段階の酷さは増してるけど。 

そうだ、この件のことは知らなくても、
もしかして幽霊探知機くらい作ってたりして...流石に無理か。 でもそんなのがあれば、こんなに調べたりしなくてもいいし楽だよね...
まぁ、でも...聞いてみる価値はあるか。 

「なるちゃん、突然なんだけど幽霊探知機とか作ったことない?」

挨拶もそうそうになるちゃんに問いただす。
そんな夢のような機械、ないとわかりつつも、1%でも可能性があると少し希望を 持ってしまう。

「は?なんで?」 

なるちゃんはキョトンとした顔で私にそう質問してきた。
なるちゃんにしてみたら当然の質問ではある、

そうだよね、そんなの実在するわけないよね、

しかも衝動的に質問してしまった私には、そこそこ予想できそうな返しに対する返事を用意できていなかった。
何て説明しよう。 

あ、そうだ。 

「お兄ちゃんが新聞部で今度怪奇現象の記事書くんだって そのネタに使えないかなって」

嘘も方便。 本当の話をしても理解してもらえないのであれば作り話をするが吉だ。

 けど

「え、こうちゃん新聞部だった?」

「...」

なるちゃん相手に作り話でお兄ちゃん持ってくるのは失敗だった。

改めて言うけど、私たちは従姉妹同士同士で、家も隣り。
つまり、他の誰よりも家庭状況は筒抜けなのである。

こんな小手先の嘘は、なるちゃんには通じない。
でも、何かを察したのか、追求はしなかった。

「まぁ、よくわからないけれど...情報が欲しいなら、私の機械に頼るより、情報通の人に頼った方が、新聞記事盛り上がるんじゃないかしら?ちょうどいい子いるわよ」

そう言うとなるちゃんはある女の子を指差して言葉を続ける。

「あそこで話してる...ポニテじゃなくてツインテールのあの子。
席近いから会話がちらっと聞こえるけど、どうも情報通らしいわよ? 
いつも誰かが情報聞きに来てるし、幅広いし、怪談話の一つや二つ知ってるんじゃないかしら?」

なるちゃんにそう提案される。
私はなるちゃんにお礼を言うと、友達と話し中のツインテールの女の子のところまで近づいた。

「あんたね...週刊誌じゃないんだからさ...人のプライベート覗く趣味やめたら?」

「人聞き悪いなぁ...ただの観察だよ」

近づいてくると会話がクリアに聞こえてくる。

ツインテールの女の子は袋を破って棒付きの小さなキャンディーを口にくわえペロ ペロと舐めながら返事をしていた。

なんか取り込み中らしい。
会話が終わるのを待とうかな
と思ったけど、会話が終わりそうにはない

「あの...」

私は二人の会話を遮った。
しおりを挟む

あなたにおすすめの小説

校長室のソファの染みを知っていますか?

フルーツパフェ
大衆娯楽
校長室ならば必ず置かれている黒いソファ。 しかしそれが何のために置かれているのか、考えたことはあるだろうか。 座面にこびりついた幾つもの染みが、その真実を物語る

【完結】私だけが知らない

綾雅(りょうが)祝!コミカライズ
ファンタジー
目が覚めたら何も覚えていなかった。父と兄を名乗る二人は泣きながら謝る。痩せ細った体、痣が残る肌、誰もが過保護に私を気遣う。けれど、誰もが何が起きたのかを語らなかった。 優しい家族、ぬるま湯のような生活、穏やかに過ぎていく日常……その陰で、人々は己の犯した罪を隠しつつ微笑む。私を守るため、そう言いながら真実から遠ざけた。 やがて、すべてを知った私は――ひとつの決断をする。 記憶喪失から始まる物語。冤罪で殺されかけた私は蘇り、陥れようとした者は断罪される。優しい嘘に隠された真実が徐々に明らかになっていく。 【同時掲載】 小説家になろう、アルファポリス、カクヨム、エブリスタ 2023/12/20……小説家になろう 日間、ファンタジー 27位 2023/12/19……番外編完結 2023/12/11……本編完結(番外編、12/12) 2023/08/27……エブリスタ ファンタジートレンド 1位 2023/08/26……カテゴリー変更「恋愛」⇒「ファンタジー」 2023/08/25……アルファポリス HOT女性向け 13位 2023/08/22……小説家になろう 異世界恋愛、日間 22位 2023/08/21……カクヨム 恋愛週間 17位 2023/08/16……カクヨム 恋愛日間 12位 2023/08/14……連載開始

【完結】悪役令嬢に転生したけど、王太子妃にならない方が幸せじゃない?

みちこ
ファンタジー
12歳の時に前世の記憶を思い出し、自分が悪役令嬢なのに気が付いた主人公。 ずっと王太子に片思いしていて、将来は王太子妃になることしか頭になかった主人公だけど、前世の記憶を思い出したことで、王太子の何が良かったのか疑問に思うようになる 色々としがらみがある王太子妃になるより、このまま公爵家の娘として暮らす方が幸せだと気が付く

蘇生魔法を授かった僕は戦闘不能の前衛(♀)を何度も復活させる

フルーツパフェ
大衆娯楽
 転移した異世界で唯一、蘇生魔法を授かった僕。  一緒にパーティーを組めば絶対に死ぬ(死んだままになる)ことがない。  そんな口コミがいつの間にか広まって、同じく異世界転移した同業者(多くは女子)から引っ張りだこに!  寛容な僕は彼女達の申し出に快諾するが条件が一つだけ。 ――実は僕、他の戦闘スキルは皆無なんです  そういうわけでパーティーメンバーが前衛に立って死ぬ気で僕を守ることになる。  大丈夫、一度死んでも蘇生魔法で復活させてあげるから。  相互利益はあるはずなのに、どこか鬼畜な匂いがするファンタジー、ここに開幕。      

辺境伯家ののんびり発明家 ~異世界でマイペースに魔道具開発を楽しむ日々~

Lunaire
ファンタジー
壮年まで生きた前世の記憶を持ちながら、気がつくと辺境伯家の三男坊として5歳の姿で異世界に転生していたエルヴィン。彼はもともと物作りが大好きな性格で、前世の知識とこの世界の魔道具技術を組み合わせて、次々とユニークな発明を生み出していく。 辺境の地で、家族や使用人たちに役立つ便利な道具や、妹のための可愛いおもちゃ、さらには人々の生活を豊かにする新しい魔道具を作り上げていくエルヴィン。やがてその才能は周囲の人々にも認められ、彼は王都や商会での取引を通じて新しい人々と出会い、仲間とともに成長していく。 しかし、彼の心にはただの「発明家」以上の夢があった。この世界で、誰も見たことがないような道具を作り、貴族としての責任を果たしながら、人々に笑顔と便利さを届けたい——そんな野望が、彼を新たな冒険へと誘う。 他作品の詳細はこちら: 『転生特典:錬金術師スキルを習得しました!』 【https://www.alphapolis.co.jp/novel/297545791/906915890】 『テイマーのんびり生活!スライムと始めるVRMMOスローライフ』 【https://www.alphapolis.co.jp/novel/297545791/515916186】 『ゆるり冒険VR日和 ~のんびり異世界と現実のあいだで~』 【https://www.alphapolis.co.jp/novel/297545791/166917524】

魔境に捨てられたけどめげずに生きていきます

ツバキ
ファンタジー
貴族の子供として産まれた主人公、五歳の時の魔力属性検査で魔力属性が無属性だと判明したそれを知った父親は主人公を魔境へ捨ててしまう どんどん更新していきます。 ちょっと、恨み描写などがあるので、R15にしました。

転生したら赤ん坊だった 奴隷だったお母さんと何とか幸せになっていきます

カムイイムカ(神威異夢華)
ファンタジー
転生したら奴隷の赤ん坊だった お母さんと離れ離れになりそうだったけど、何とか強くなって帰ってくることができました。 全力でお母さんと幸せを手に入れます ーーー カムイイムカです 今製作中の話ではないのですが前に作った話を投稿いたします 少しいいことがありましたので投稿したくなってしまいました^^ 最後まで行かないシリーズですのでご了承ください 23話でおしまいになります

貴族に生まれたのに誘拐され1歳で死にかけた

佐藤醤油
ファンタジー
 貴族に生まれ、のんびりと赤ちゃん生活を満喫していたのに、気がついたら世界が変わっていた。  僕は、盗賊に誘拐され魔力を吸われながら生きる日々を過ごす。  魔力枯渇に陥ると死ぬ確率が高いにも関わらず年に1回は魔力枯渇になり死にかけている。  言葉が通じる様になって気がついたが、僕は他の人が持っていないステータスを見る力を持ち、さらに異世界と思われる世界の知識を覗ける力を持っている。  この力を使って、いつか脱出し母親の元へと戻ることを夢見て過ごす。  小さい体でチートな力は使えない中、どうにか生きる知恵を出し生活する。 ------------------------------------------------------------------  お知らせ   「転生者はめぐりあう」 始めました。 ------------------------------------------------------------------ 注意  作者の暇つぶし、気分転換中の自己満足で公開する作品です。  感想は受け付けていません。  誤字脱字、文面等気になる方はお気に入りを削除で対応してください。

処理中です...