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一部 1話、白昼照らすは日の光

【1話−1】現る不思議な道

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体感5分前のこと。

空は赤く染まり、カラスがカアカアと鳴いていた。

「はぁ...はぁ....」

まだ寒さの残る春だというのに、私は汗だくになっていた
両手に重い荷物を抱えて長距離を歩いたからだと思う。


「ルイちゃん遅い!そんなに遅いと置いてっちゃうわよ?」

私に荷物持ちをさせた彼女は、いたわるどころか文句を言った。



私と一緒に手伝っていたもう1人の荷物持ちの彼はそれを聞くと

「元はと言えば、これ全部なるの荷物でしょ!!
文句言うなら、自分で持ったらどうなのさ!自分は手ぶらってさ!!」

とブチ切れた。

中学の入学式前日、夕飯前に突然呼ばれて、こんな重い荷物を持たされているのだから当然だと思う。

でも目の前の彼女はため息を吐く。

「何よ心矢、文句あるの? 1000円いらないなら帰ってもいいのよ?」

「うぐっ」

そう言われると、私たちには返す言葉がない。
お金に釣られた以上、雇用関係が成り立っているので文句を言う資格はない。

目の前にいる雇用主の彼女はくるりと翻し、何も持ってない手ぶらで身軽な状態でルンルンとスキップをしながら歩く。
私たち二人はその姿を見ながら声を掛け合った。

「心矢諦めよう。私たちに選択肢はないよ。」

「ルイは腹座ってるね。」

「何年一緒にいると思ってるの?心矢だって慣れたでしょ」

私たちは顔を見合わせてため息をつくと、止めていた足を進めながら言葉を交わす

「...金に目がくらんだ僕らの負けか。洋太みたいに断らなきゃダメだね」

「確かに、洋太の行動が正解だね。」

洋太というのは、なるちゃんが荷物持ちの手伝いを要請したもう1人の人物の名前。
彼は1000円に釣られなかったのでここにいない。
お金に余裕のある人を羨みながら、私はまた歩き始める。

にしても、体力的には............もう限界。

なるちゃんと心矢がこっちを見ていないかを確認し、こっそり荷物を地面に置いて伸びをする。 

関節がポキポキっと音を立てる、結構体に無理をさせていたみたいだ。
首を回してストレッチをしていると
私はふと電柱に貼られたチラシが目に入った。

それは人物の写真と、名前や特徴などが記載されていた、行方不明者を探すチラシだった。

日付を見ると最近のもの。

気になって地面に置いた荷物を放置してそれに近づいてまじまじと見つめていると、

「ちょっと、荷物放棄してまで壁に近づくなんて、よっぽど面白いものでもあるのかしら?」

いつまで経ってもなかなか歩いてこない私を気にして、なるちゃんが声をかけてきた。 




もう遠くにいると思っていたので、真横に彼女が経っていることに驚き私は肩をビクッと震わせる

「人の荷物床に置かないで欲しいわね。」

「ご、ごめん…気になっちゃって…」

荷物が重いし…ということは心にしまって、私は話をはぐらかせて、
チラシを指を差し、その指を差した方になるちゃんは顔を向ける

案外簡単になるちゃんの意識はそっちにそれた。

「...あら、行方不明の...増えたの?物騒ねぇ...」

なるちゃんはそう呟くと、私と一緒になってチラシを食い入るように見つめた。

そう、またなのだ。

実は今月入ってから、連日誰かしらが行方不明になっているのだ。


「スポーツのインストラクターだって」

「へー」

そう言うと、私と一緒になってチラシを食い入るように見つめた。
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