上 下
8 / 107
一部 1話、白昼照らすは日の光

【1話ー6】現る不思議な道

しおりを挟む
「やったわぁー!私の勝ちね!」


あれから少し時間が経ち、場所は変わって中学の校庭。

その人だかりの中心で喜びの声を上げるなるちゃんの姿と、 まさかの敗北で頭を抱える男子二人の姿があった。

一体何があったのか、
少し時間を遡って説明しよう。

結局、私の不安をよそに、なんの問題もなく学校にたどり着いた。 
学校にはすでに大勢の生徒たちが校庭に集まっていて、一箇所に人だかりができていた 。

クラス分けが発表されていた。

その様子を見た心矢はぽつりと呟いた

「ねえ、やっぱ賭けやめない?」

私がなんの話かという視線を送ると「そういえばルイちゃん賭け混ざってなかった わね」
と言ってなるちゃんが説明してくれた

「クラス分けどうなるか賭けをしてるのよ、4人がどう分かれるかって。
負けたら勝った方の言う事を聞くの」

あぁ、そういえばなんかさっきもそんな話してたのちょこちょこ聞こえてたような。

心矢はイヤイヤと首を振ってかけの離脱を宣言するも、なるちゃんがそれを認めない。
心矢は巻き込まれたようだ。かわいそうに。

ちなみにこんな感じで賭けたらしい。

なるちゃん→4人一緒
心矢   →誰かしらは一緒
洋太   →全員別クラス

「けど、心矢がかけたの誰かとは同じクラスだろ?全員一緒と全員バラバラの間、 一番有利だと思うけどな」

 「あのね洋太くん、世の中確率じゃないのよ、奇跡は起きるのよ!
今年同じクラスなら、4人で10年連続よ!記録更新の奇跡に賭けたいじゃない!」

「4人なら9年だけどな。大体今までは2クラスだったろ、今度は6クラスだろ?無理だと思うけど?」

「だから、その話の決着は二人でつけなよ!僕を巻き込まないで!
ルイも黙ってないでさ、止めてよこの2人!こんな事で賭けなんて良くないと思わない!?」

「そう言われてもねぇ...」


確かにかけをするほどのことでもな気はするけど、おそらくかけを持ちかけたであろうなるちゃんがやる気満々だし... 多分私が何を言ったところでやめないだろう。
それどころか

「あ、そうだ、ルイちゃんも混ざらない?」

やっぱり火の粉が私にまで回ってきた。
こうなるともう止めるどころの話ではない。
結果的に、私も賭けに混ざることとなり、話がまとまった。

ちなみに私は、なるちゃんの奇跡推しに負け、なかなか厳しそうな「4人一緒」だ。

こうしてようやく各々がクラス分けの掲示物を見に行き、自分の名前を探すこととなった。 

「えーっと...き...き...ないなぁ...」

まぁすぐには見つからない。

ちなみに私のフルネームは「きのした るい」で、漢字は「木下 涙」と書く。 

余談だけど、漢字で名前を書くと「なみだちゃん」と呼ばれてしまうことが多いので、
テストを含めた正式な場以外ではカタカナで「ルイ」って書いてます。

まぁ名前を探す時は苗字基準なので関係ない話だけど。

とりあえず「き」から始まる苗字なので早めに名前を見つけることができた。
ようやく自分の名前を見つけた、4組だ。

ついでに洋太の名前も見つけた、自分の名前の1つ上に書かれてたからだ。
北義洋太きたぎようた」で同じ「き」だから大体いつも連番なのだ。

「ルイちゃんあった?」

フラフラと人をかき分けながら、なるちゃんが私の元にやってきた。

「あったよ、4組。なるちゃんは?」

「まだよ、えーっと杉野だから、「す」...」

「おーい、あったか?」

なるちゃんが自分の名前を探している最中、今度は洋太が合流した。

「あったよ、洋太も見つけた。4組だって」

「マジ?」

「はいっ!わたしも見つけたわ、4組!これで洋太くんは脱落ね」

それを見るなり、なるちゃんは嬉しそうに肩に手を置きながらそう言った。
その時の洋太はなんとも言えない複雑そうな顔を浮かべていた。

「そう言えば、心矢どこいったの?」 

なるちゃんはキョロキョロと辺りを見回した。 

「そう言えば...まだきてないね、どこ行ったんだろう」

心矢のフルネームは「有山 心矢」で「あ」だから、一番最初に見つけられそうなも んなんだけど...
すると「ちょっとどいて~」という声が少し遠くから聞こえてきた。 人混みをかき分けてようやく出てきたのは、ちょうど今探していた心矢だった。

「遅かったじゃない、何してたの?」
「あっちの方人多くて、こっちまで来るのに時間かかった。 それよりどう?みんなあった?」
「私と洋太は見つけたよ、二人とも4組」

 「あ、お前もあったぞ」
 洋太にそう言われてみてみると、 確かに4組の一番上に心矢の名前が書かれていた。 

そして賭の結果は

6クラスもある中、4人全員が同じクラスになるという奇跡を起こした。  

かくして、喜ぶなるちゃんと今後の身を案じる男子二人の構図がで出来上がった

というのがなるちゃんが賭けに勝って喜んでいた理由と経緯である。

「洋太がクラス替えのことで喧嘩するから...どうするのさ」

「仕方ないだろ、4人全員同じクラスの確率なんてかなり低いから、一番ないと 思ったし
お前こそ一番ありえそうなこと言っときながら外すなよ」

「それは僕の責任じゃないよ!喧嘩始めたそっちが悪い!」

なぜか責任の押し付け合いを始める二人...醜い争いだ。 
まぁそんなこと言ってられるのは、私が勝った側だからなんだけど。

「さて...約束だからいうこと聞いてもらわないとね~ 何してもらおうかしら~」

ほくほくと、満足げな笑みを浮かべるなるちゃんに危機感を覚えた二人は、

 「そういえば、ルイ保健室行ったほうがいいんじゃない?」
 
「そうだ、頭打ってんだろ?行ったほうがいいって!」

あからさまに話題の方向転換を行った。 

けが人を使って...しかもなるちゃんが無視できない話を使うのは少々卑怯な気はする。 

とはいえ、心配してくれてるのは事実だろうからありがたいし、私も返事をしないわけにはいかないか。

「うーん...でも私、特になんともないんだよね...痛みも治って吐き気もないし... 記憶が半日ないくらいだからなぁ...」

「だから、それがまずいっつってんの」

「確かにそうよねぇ...ルイちゃん、付き添ってあげるから保健室行きましょ」
「え、いいよ付き添いなんて...行くなら一人で行くし」

不安そうに私の顔を見つめるなるちゃん。 
普通にしてはいたけど、やっぱり怪我させてしまった責任を感じているらしい。 そもそも実感がないのでそこまで罪悪感を与えてしまうのは逆に申し訳ない 本当に大丈夫なんだけど...安心させるために保健室行ったほうがいいかな

「わかったよ、じゃあ保健室行ってくるから、みんなは先に教室行ってて」
 「わかった、無理しないでね」

そう呼びかけられて送り出された私は こうして私は一人で保健室にへ向かった




それから保健室について数分

出血コブなし、体調不良もないけど、念のため少し寝てなさいという指示が出た。

やっぱり頭をぶつけたのは、楽観視できるものではないらしい。
お言葉に甘えて今は保健室のベッドの上だ。

「大丈夫なんだけどなぁ」

私は誰にも聞こえない独り言を呟いた。

まだ1日始まったばっかりなのにどっと疲れた、
まぁ、体感時間はなんかもっと長かったような気がする。

昨日の夕方から記憶が繋がってるんだから当然か。


私は他にやることもないので、今朝の出来事を振り返る。

夕方から朝に急に時間は進んでるし、
なかったはずの道や神社はまるで生えたかのように増えてるし

不思議なことばっかだ。

でもきっと、私の記憶がおかしかっただけなんだよね... 
これ以上変なこと言って、みんな困らせても行けないし...忘れよ。 

そう思って寝返りを打つと、ポケットのあるあたりに何か硬いものが触れた。

私はポケットの中を弄る。 
そこにあったのは緑色の勾玉だ。
さっき神社で会った少年が去った後、私の手の中に残ったものだった。

「これ...どうしようかな」

正直こんなの持っててもどうしようもないし、返さなきゃいけないよね。

あそこの神社に行けば会えるかな... その時に返せばいいか。

「...」

あ、いけない...なんかだんだん眠たくなってきた。
そういえば、私自分の記憶では丸一日寝てないことになるんだよね。
実際は寝たんだろうけど、寝た記憶がないって意味で。
 ...先生も、式の時間には呼びに来てくれるって言ってたし、 寝てもいいって言ってたし...
少しだけ仮眠取ろうかな。 


私はふわぁ...とあくびをすると、1分も経たないうちにスヤスヤと眠りに落ちた。
しおりを挟む

あなたにおすすめの小説

僕の家族は母様と母様の子供の弟妹達と使い魔達だけだよ?

闇夜の現し人(ヤミヨノウツシビト)
ファンタジー
ー 母さんは、「絶世の美女」と呼ばれるほど美しく、国の中で最も権力の強い貴族と呼ばれる公爵様の寵姫だった。 しかし、それをよく思わない正妻やその親戚たちに毒を盛られてしまった。 幸い発熱だけですんだがお腹に子が出来てしまった以上ここにいては危険だと判断し、仲の良かった侍女数名に「ここを離れる」と言い残し公爵家を後にした。 お母さん大好きっ子な主人公は、毒を盛られるという失態をおかした父親や毒を盛った親戚たちを嫌悪するがお母さんが日々、「家族で暮らしたい」と話していたため、ある出来事をきっかけに一緒に暮らし始めた。 しかし、自分が家族だと認めた者がいれば初めて見た者は跪くと言われる程の華の顔(カンバセ)を綻ばせ笑うが、家族がいなければ心底どうでもいいというような表情をしていて、人形の方がまだ表情があると言われていた。 『無能で無価値の稚拙な愚父共が僕の家族を名乗る資格なんて無いんだよ?』 さぁ、ここに超絶チートを持つ自分が認めた家族以外の生き物全てを嫌う主人公の物語が始まる。 〈念の為〉 稚拙→ちせつ 愚父→ぐふ ⚠︎注意⚠︎ 不定期更新です。作者の妄想をつぎ込んだ作品です。

【完結】私だけが知らない

綾雅(りょうが)祝!コミカライズ
ファンタジー
目が覚めたら何も覚えていなかった。父と兄を名乗る二人は泣きながら謝る。痩せ細った体、痣が残る肌、誰もが過保護に私を気遣う。けれど、誰もが何が起きたのかを語らなかった。 優しい家族、ぬるま湯のような生活、穏やかに過ぎていく日常……その陰で、人々は己の犯した罪を隠しつつ微笑む。私を守るため、そう言いながら真実から遠ざけた。 やがて、すべてを知った私は――ひとつの決断をする。 記憶喪失から始まる物語。冤罪で殺されかけた私は蘇り、陥れようとした者は断罪される。優しい嘘に隠された真実が徐々に明らかになっていく。 【同時掲載】 小説家になろう、アルファポリス、カクヨム、エブリスタ 2023/12/20……小説家になろう 日間、ファンタジー 27位 2023/12/19……番外編完結 2023/12/11……本編完結(番外編、12/12) 2023/08/27……エブリスタ ファンタジートレンド 1位 2023/08/26……カテゴリー変更「恋愛」⇒「ファンタジー」 2023/08/25……アルファポリス HOT女性向け 13位 2023/08/22……小説家になろう 異世界恋愛、日間 22位 2023/08/21……カクヨム 恋愛週間 17位 2023/08/16……カクヨム 恋愛日間 12位 2023/08/14……連載開始

一宿一飯の恩義で竜伯爵様に抱かれたら、なぜか監禁されちゃいました!

当麻月菜
恋愛
宮坂 朱音(みやさか あかね)は、電車に跳ねられる寸前に異世界転移した。そして異世界人を保護する役目を担う竜伯爵の元でお世話になることになった。 しかしある日の晩、竜伯爵当主であり、朱音の保護者であり、ひそかに恋心を抱いているデュアロスが瀕死の状態で屋敷に戻ってきた。 彼は強い媚薬を盛られて苦しんでいたのだ。 このまま一晩ナニをしなければ、死んでしまうと知って、朱音は一宿一飯の恩義と、淡い恋心からデュアロスにその身を捧げた。 しかしそこから、なぜだかわからないけれど監禁生活が始まってしまい……。 好きだからこそ身を捧げた異世界女性と、強い覚悟を持って異世界女性を抱いた男が異世界婚をするまでの、しょーもないアレコレですれ違う二人の恋のおはなし。 ※いつもコメントありがとうございます!現在、返信が遅れて申し訳ありません(o*。_。)oペコッ 甘口も辛口もどれもありがたく読ませていただいてます(*´ω`*) ※他のサイトにも重複投稿しています。

父が死んだのでようやく邪魔な女とその息子を処分できる

兎屋亀吉
恋愛
伯爵家の当主だった父が亡くなりました。これでようやく、父の愛妾として我が物顔で屋敷内をうろつくばい菌のような女とその息子を処分することができます。父が死ねば息子が当主になれるとでも思ったのかもしれませんが、父がいなくなった今となっては思う通りになることなど何一つありませんよ。今まで父の威を借りてさんざんいびってくれた仕返しといきましょうか。根に持つタイプの陰険女主人公。

生贄にされた先は、エロエロ神世界

雑煮
恋愛
村の習慣で50年に一度の生贄にされた少女。だが、少女を待っていたのはしではなくどエロい使命だった。

【完結】彼女以外、みんな思い出す。

❄️冬は つとめて
ファンタジー
R15をつける事にしました。 幼い頃からの婚約者、この国の第二王子に婚約破棄を告げられ。あらぬ冤罪を突きつけられたリフィル。この場所に誰も助けてくれるものはいない。

蘇生魔法を授かった僕は戦闘不能の前衛(♀)を何度も復活させる

フルーツパフェ
大衆娯楽
 転移した異世界で唯一、蘇生魔法を授かった僕。  一緒にパーティーを組めば絶対に死ぬ(死んだままになる)ことがない。  そんな口コミがいつの間にか広まって、同じく異世界転移した同業者(多くは女子)から引っ張りだこに!  寛容な僕は彼女達の申し出に快諾するが条件が一つだけ。 ――実は僕、他の戦闘スキルは皆無なんです  そういうわけでパーティーメンバーが前衛に立って死ぬ気で僕を守ることになる。  大丈夫、一度死んでも蘇生魔法で復活させてあげるから。  相互利益はあるはずなのに、どこか鬼畜な匂いがするファンタジー、ここに開幕。      

【完結】『飯炊き女』と呼ばれている騎士団の寮母ですが、実は最高位の聖女です

葉桜鹿乃
恋愛
ルーシーが『飯炊き女』と、呼ばれてそろそろ3年が経とうとしている。 王宮内に兵舎がある王立騎士団【鷹の爪】の寮母を担っているルーシー。 孤児院の出で、働き口を探してここに配置された事になっているが、実はこの国の最も高貴な存在とされる『金剛の聖女』である。 王宮という国で一番安全な場所で、更には周囲に常に複数人の騎士が控えている場所に、本人と王族、宰相が話し合って所属することになったものの、存在を秘する為に扱いは『飯炊き女』である。 働くのは苦では無いし、顔を隠すための不細工な丸眼鏡にソバカスと眉を太くする化粧、粗末な服。これを襲いに来るような輩は男所帯の騎士団にも居ないし、聖女の力で存在感を常に薄めるようにしている。 何故このような擬態をしているかというと、隣国から聖女を狙って何者かが間者として侵入していると言われているためだ。 隣国は既に瘴気で汚れた土地が多くなり、作物もまともに育たないと聞いて、ルーシーはしばらく隣国に行ってもいいと思っているのだが、長く冷戦状態にある隣国に行かせるのは命が危ないのでは、と躊躇いを見せる国王たちをルーシーは説得する教養もなく……。 そんな折、ある日の月夜に、明日の雨を予見して変装をせずに水汲みをしている時に「見つけた」と言われて振り向いたそこにいたのは、騎士団の中でもルーシーに優しい一人の騎士だった。 ※感想の取り扱いは近況ボードを参照してください。 ※小説家になろう様でも掲載予定です。

処理中です...