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一部 2話 存在気づかす神隠し

【2話ー3】 不思議な鳩はつきまとう

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「どうぞ粗茶ですが...」

「あ、ありがとう」

私はなぜか自分の部屋で、見知らぬ他人に入れてもらった茶柱付きのお茶を入れてもらう。


おかしな話だ。


私は出されたお茶をズズッといただく

高級な味がする。

うちのストックされてるお茶ではない。

どこで買ったんだろう...
.........じゃなくて。

お茶のことを気にしてる場合ではない。
気になるのは目の前の少年についてだ。

「あの...それで...君は一体...」

「あぁ、申し遅れました。
僕の名前は光星と申します。 以後お見知り置きを。」

と、丁寧に自己紹介をしてくれた。

でも、名前はどうでもいい、聞きたいことはそこではない。

 「なんで...君は、私の部屋にいたの?どうやって入ったの?
壁をすり抜けたり浮いたりできるのは?私にしか見えないのは?なんで!?」

私は畳み掛けるかのように疑問を投げかけて詰め寄ると、男の子はうーんと少し考えた様子を見せて、静かに口を開いた。

「...いきなりこんなことを言っても、信じてもらえないかもしれないですけど...


 僕..................


神様なんです」




...
...... .........は?





私は頭の中で、その一言だけが浮かんだ。 

「見習いなんですけど」 

そう言葉を付け加えたが、
今そんなことはどうでもいい。 

「そんなわけ...神様なんかいるわけ.........」

「でも事実ですし...なんなら証拠見せましょうか?」

「証拠?」

少年は人差し指を突き立てて、天井にくるりと円を描くように動かす

すると、部屋の中がキラキラとした光が現れ、部屋を照らした。

「き...綺麗...」

 「他にもこんなこともできますよ」

今度は床に向かって指をパチンと鳴らした
するとその辺りが光り、猫が現れた 

「こんなことも簡単にできてしまうわけです」

そういって指をパチンと鳴らすと、猫は消えてしまった。 確かに...マジックというわけではなさそうだ。

すると今度は手をかざし、オレンジ色に光る玉を作り上げた。
心なしか暖かい気がする。

その光の玉を構えながら


 「納得いただけました?ルイさん。」


と笑顔で私の名前を呼んだ。

 「......なんで私の名前...」 

「事前の下調べはしてありますから、ご家族の経歴くらいはわかりますよ?」 

そういうと、オレンジ色の光の玉を消し、
代わりにどこからともなく男の子は大量の紙束を取り出し机の上にドンっと置き、それを読み始めた。

木下 涙きのした るい、年齢12才、なるほど、金欠で困ってらっしゃるの ですね...時に従姉妹のお手伝いで小遣い稼ぎ。家族構成は父母兄ご本人の4人、引っ越してきて9年目 誕生日10月22日身長155.4cm体重は」

「ちょっと、何調べてるの!?」

「えーっと、5歳離れたお兄様、勉学運 動共に優秀、たいそう人気があるそうですね、恋文もらったり」

恋文...あぁ、ラブレターのことかな。
携帯普及して、snsが発達したこの時代に手紙なんて今時古風...

じゃなくて!

「何その情報!え!?ラブレターもらってんの!?」

「嘘だと思うなら引き出し見てきたらどうです?まだあると思いますよ?
あとは... お父様海外へ単身赴任ですか...これは素晴らしいですね、事故のことがありながら第一線で活躍、あとお母様は...」

「わ、わかった...もういい...信じる、君が神様だってことは信じるから!」 

自分と家族のプロフィール改めて聞かされるの...ちょっと恥ずかしい...

「ご理解いただきまして感謝です。」

神様は満面の笑みを浮かべて微笑んでそう言った。

「で、でも...神様が私なんかに何の用なの?」

「あぁ、そうでした。本題に入りましょう。」

神様はそういうと、さっきまでのほんわかした雰囲気から一転、背筋を伸ばし姿勢を正すと、キリッとした真面目な雰囲気に切り替わった。

「木下涙さん。
あなたは神様の、『アマテラス』の生まれ変わりです。
黄泉の国の住人を倒すため、お力をお借りしたいんです。」

「.....................」

嘘か本当かはともかく、こうして神様が来てくださったわけだから、真面目に話を聞こうとは思った。
何を言われても驚かないつもりではいた。
しかし、神様の発言を理解することができなかった。 

わたしが...なんだって?

「あ...あま............甘?」

「天照大神、日本神話に出てくる神様です。ご存知ないですか?」

 「いや...日本神話には疎くて...ギリシャ神話ならまだ...
いや、それより...ウマレカワリって?
私が?神様の?でも、神様は君でしょ?いるじゃん!」

「そうですけど、神様は1人じゃありません、日本には八百万の神がいます。あなたは僕以外の他の神様の生まれ変わりです」

なんかよくわかんないなぁ。
 

あぁ、いや、そうか、わかった。

私まだ夢見てるんだ、こんなことありえないし間違いない
それにこの展開漫画とかアニメで見たことある
女の子の目の前に妖精が現れて...戦士だなんだって言われて 「悪いやつらと闘って」って言われて、可愛い姿に変身して戦うやつ

「魔法少女...憧れたなぁ...」 

「なんです?それ...」

私の独り言に反応した神様を無視して、私は頭の中で考えを巡らす

そうか、それに影響されて、こんな夢見てるんだ。

なら、目を覚まして現実戻らないと。

夢から覚める方法とかわかんないけど

でもちょっと待って...もしこの先の展開が本当に魔法少女だ
とするなら...ここで目 を覚ますのはあまりにももったいない...

このままこの茶番に付き合えば...私も魔法少女になれるかも!?

セーラー服に変身して、キュアキュアかぁ...。 一回くらいなら悪くないかも...。

「ねえ、それ協力したら、もちろん変身とかするんだよね?」


 「変身?」 

「だって、生身で戦うわけにいかないでしょ?他の人とか的にバレるのもまずいし...」

憧れすぎて、神様に魔法少女のゴリ押しをはじめる。
しかし神様には心当たりがないのか、はてなが飛びまくる。

しばらく時間が経つと、何かにピンときたようで言葉を発した。

「あぁ、戦闘服のことですか!
でも変身なんかしなくても戦闘中は神力で 自動的に防御力上がりますし...そもそも顔変わらないなら変身意味ないです、どうしてもと言うなら兜と鎧準備しましょうか?」

 「いらない。」

兜と鎧は魔法少女じゃない。キラキラしてない。
一部の歴史好きはいいかもしれないけど、私はそこまでじゃない。

どうやら、この夢に魔法少女の夢はないらしい。

なら、この夢にもう用はない

私はその場からすくっと立ち上がり、布団の中に潜り込んで神様に「おやすみなさい」と挨 拶を告げた、慌てた神様は「寝ないでください!」と私の体をひっぱたいて起こした。

「君が神様なのは100歩譲って理解した。
でも、私が神様の生まれ変わり!?夢じゃなきゃ絶対にありえない!」

「でも本当なんです!「審査」の結果では あなたがアマテラスであることに間違いはないんです!」

「審査って何!?審査された覚えなんかないんだけど」

「...本当に心当たりありません?変な夢とか見ませんでした? 突然襲われる夢とか...」


変な夢...

そう言われて、ふと先程までの事が頭をよぎった。
今朝学校に行くまでの事、神社のこと、学校でなんかと戦った出来事が

よくよく考えれば、神社の前でぶつかったのは彼ではなかっただろうか?

ということは...

「まさか...君の仕業なの!?
昨日の夕方からの記憶がないのも! 学校で居眠りしてたのも、全部!?」


 「はい...」 

私はその一言を聞くと、体をガバッと起こし、神様につかみみかかる。

「ちょっと!!私、そのおかげでかなり恥かいちゃったんだけど!!せっかくの入学式だったのに!!」

「それについてはすみません、でも、どうしても必要なことでして、とはいえ葦原の中つ国に来たのは初めてで... 人々の生活のことは詳しくは理解してなかったんです。」

私の怒りは収まってない、でも、わけのわからない単語が出てきたせいで、戸惑いの感情の方が強くなって、怒りが自然と静まってしまう。

「とりあえず、最後まで話だけさせていただけませんか?
信じられないのは仕方ないですが、任務上...僕は話を聞いてもらえるまで、ここにいないといけないので」

神様はおずおずとそう言った。
...確かに、鬱陶しがってるだけでは、彼は私の元から離れてくれそうにはない。

 「わかった...黙って聞くよ...」

「ありがとうございます。ではお話しさせていただきますね。
なぜ、黄泉の国を倒さないといけないのか。 」



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